後来:嵐の聖地13

 だってあいつの素材、毒腺と毒は論外、血も劇物、耐久度がほぼ残って無い鱗ですら迂闊に触れず、肉も血の影響を受けてて内臓も以下同文、って、性能がバカなのはともかくことごとく劇物過ぎてとりあえず使えそうなのが骨しか無かったんだよ!

 と言い訳したもののエルルにアイアンクローを貰ってしまったので、当面あれは使えないな。あれは冷凍庫でないと保管できないから、出来れば早めに処理したいんだけど。だって食べ物と同じところに劇物が保管されてるのって嫌じゃない?

 だからと言って、あれ専用の冷凍庫を新設するのもどうかだしさ。そもそもそんなに数を相手できる奴じゃないというか、そもそも相手する時点で間違ってるって言うか。


「……エルル?」

「なんだ」

「なんでちょっと目を逸らしてるんです?」

「……何でもないが?」

「何でもないのに目を逸らすんですか?」


 なおエルルが頑として口を割らなかったが、冷凍庫の中でルミ達によって解体された百頭竜の素材は「5体分」になっていた。さては知らん間に箱庭を作ってボックス様の神殿で捧げて挑戦してたな!? こら! 素材を消費出来ない相手を狩って来るんじゃありません!

 どうすんだあれ……と頭を抱えざるを得ない素材が増えてしまった。これはもう植物用の栄養剤にでも加工して、コトニワ世界にぶちまけるぐらいしかした方がいいんじゃないだろうか。きっとすごい事になるだろうな。色々な意味で。

 みたいな事もあったにはあったが、まぁ、一応準備としては順調に進んでいった。


『なぁ「第三候補」、この原液性能おかしくないか?』

『だから希釈の依頼を出している訳でして』

『けどこの性能はおかしい上にこの量って事は既に別の方法で希釈してるよなこれ? 今度は何をどう使ってどんなものを作ったんだ?』

『……効果はすさまじいんですが、確定ポーション中毒になる薬です』

『それは薬じゃなくて毒って言わない???』


 みたいなウィスパーが「第四候補」から飛んできたりもしたが、私が「希釈液」を集めてくれって事前に言っていた時点で原液となるポーションの性能がアレなのは覚悟していたらしく、希釈からの希釈からのもう一段希釈してから瓶詰という加工作業は進んでいるようだ。

 お札の方も「拡縮石」を私用に作ってもらえたので、かなり良いペースで進んでいる。効果を高めるのは少なくとも私にとって難しい事ではないんだよ。それを良い感じにする方が大変だ。主にステータスの関係で。

 とはいえ、まぁ、主に消耗品の準備はとても順調だ。では他の、広報と管理の方はと言うと。


「話は順調に広がっているようですね。クラン『ノーストゥング』が代表として問い合わせを受けてくれていますが、こちらへの問い合わせ件数も増えています」

「対処は間に合っていますか?」

「とりあえず今のところは大丈夫なようです。もっとも、現時点で既に「伸び拡がる模造の空間」への挑戦者は増えているようですが」


 フライング組は……カウントはされないが、重ねられるアクセサリを集めたり、最短討伐手順を詰めたりするのは有効だからな。それに必要なのは攻略回数だ。始まる前から少しでも回数を増やしてくれるならありがたい。

 というか本当に、最終的にどれだけの回数クリアしないといけないのかさっぱり分からないからな。今全力で消耗品を生産してるのも、始まったら治安維持しつつ私も参加する為だし。

 なお、実際参加できるかどうかは別。ベテランというか、フリアド歴が長い程お札じゃなくて魔力回復ポーションが人気になるだろうけど、参加する人数考えるとな。それにそもそも、アイドルグループ『Fancy Jewelryファンシー・ジュエリー』のファン層は比較的ライトでエンジョイな人達だし。


「末姫様! お手紙です!」

「はい?」


 と思っていたら、ニーアさん経由でお手紙が。……ニーアさん経由って時点で相手は限られるというか、まず間違いなく竜皇家の誰かからなんだが。このタイミングで何だ?

 ……あっ。あれか。何かティフォン様かエキドナ様から啓示があったのか。たぶんだが。

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