後来:嵐の聖地12

 私もだいぶ頭が痛いというか、もしかしてこれが胃が痛いという感覚? になっていた話し合いだが、それでも一応はまとまったし方針は決まった。一応。……大丈夫。話し合いの結果、私とモルたんは接触の機会がないように振り分けられたから。

 なおこれは後ほど「第五候補」から聞いた話なのだが、どうやらモルたんが私へ向けるマイナスの感情は「厳しく食事制限しないとすぐ太る人」が「何をいくら食べてもベスト体型が崩れない人」に向けるものとほぼ同じらしい。

 そして解説されてしまえば、あ、はい……と納得するしかない理由だった。少なくとも私は。うん。まぁ。その。私もリアルだと割とちょいちょい気になる方の体質だからさ……食事制限とまではいかないけど、運動とストレッチはちゃんときっちりしないと、うん……。


「そして抑えるのもちょっと無理ですね。遠くにいて存在を知っているだけならともかく、目の前にいると……」

「それでも~、抑えるべきなのだけどね~。そこはまだ子供って事かしら~」


 そりゃまぁ何を言っても「私から」だと何だって癇に障るだろうし、目の前にいたらそりゃ噛みつきたくもなるわな。……とはいえ、これは後で聞いた話なので、話し合いの最中は分からなかったんだが。

 まぁともあれ、話し合い自体は比較的スムーズにいったので2時間ぐらいで済んだ。話し合いとしてはかなりトントン進んだ方なんだよな。やっぱり大人数が関わる事だと決める事も多いから。

 あと、関わる人数が増えるとよろしくない奴も紛れ込んでくる訳で。それへの対処を話し合うのに一番時間がかかった。いやまぁそこは時間をしっかりかけて、可能な限り話し合っておかなきゃ後が大変な事になるんだけど。


「……それにしても、「第一候補」の言っていた啓示とは一体」


 そういう話し合いの結果、モルたんが主に広報と宣伝を担当し、ジークムントさんが大勢来る召喚者プレイヤーを組分けしたり挑戦回数をカウントしたりの成果を含む各種確認を担当。私は消耗品を作って配りつつ、もめごとが起こったら鎮圧する担当となった。

 だからまずは大量の消耗品、罠系魔法のお札と宿光石を使った照明系魔法のお札、そして魔力回復ポーションだな。これを作りまくる。お札も「希釈液」みたいなもので、超高品質の物を元にほどほど効果の物を大量に作れればいいんだけどなー。

 なお、それを、こんな感じのものないですかー。と研究施設の魔族の人達に相談した結果。


[アイテム:拡縮石

説明:素材か使い捨てアイテムの数と効果量を変化させる

   数と効果量は反比例する

   ただし、効果を高める場合はロスが大きい]


 我々、こういうもの使ってますけど。そんな感じでお出しされたのがこれだ。なお材料は「小さな模造の魔臼」と「希釈液」だとの事。これを、数を入れて効果を高める場合のロスを減らす方向で研究しているらしい。

 ……とても良い物じゃないか、と思ったんだが、材料がな。「小さな模造の魔臼」か……流石にそろそろ通常手段でも作れるようになってきたらしいが、主に領域スキルを対象にするとヤバいあれか……。


「部外秘で」

「分かりました」


 材料がヤバ過ぎるので、表には出さない事にした。というか、出せないなこれは。「小さな模造の魔臼」は厳戒警戒対象だ。何しろ悪用の方法がシャレにならないから。平和的活用法だが、うん。その。秘密で。


「ところでお嬢」

「何でしょう」

「今出したそれは何だ」

「…………魔力を回復するスープ系ポーションです」

「何だ今の間は」


 ほんとだよ。分類としては薬膳スープだよ。薬膳スープと言えばあの鍍金の竜の肉を使ったやつが出て来るけど、あれじゃないよ。


「……お嬢」

「スープ系とはいえポーションですから「希釈液」が使えますし」

「お嬢」

「「第四候補」に「希釈液」の確保は頼みましたしそこからの希釈と瓶詰めも依頼済みです。その前に「拡縮石」である程度効果を落としますし」

「ヤバい自覚があるんなら何で作った」


 いやほら。

 希釈するにしても在庫ってものがあるからさ。

 大量に使うのが分かってて準備もできる機会ってなかなかないからさ。


[アイテム:超濃魔力スープ

消耗品:ポーション(MP回復+*1000・MP継続回復+*300・空腹回復+・渇水回復+・継続効果終了後ポーション中毒確定発症)

耐久度:100%

説明:魔力を溜め込む薬草によって作られたスープに

   百頭竜と呼ばれる竜の骨を漬け込んだもの

   しっかり時間をかけて漬け込まれた為、その薬効が存分に溶け込んでいる

   ただし薬効が強すぎるせいで、ある種の毒でもある

   継続効果:24時間]


 興味に負けました。ごめんなさい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る