後来:嵐の聖地6
私はログインしてから割とすぐ動くことになったので特に問題はなかったが、どうやら「第四候補」は何か作業をしていた途中で席を外す事になったらしく、そこからばたばたしていたらしい。……宿光石のサーチライトの大量注文のせいじゃないかって? 気のせい気のせい。
カバーさんと一緒に、サブイベントならベテラン勢は来るだろうけど人数が必要だろうし、啓示があったとしても興味のない勢はいるだろうし、そういう人達を釣るゲフン参加してもらうにはどうすればいいかと相談しながら、とりあえず消耗品を作ってたんだが。
「お嬢、ヴィントシューネが戻って来たぞ」
「思ったより早かったですね」
「どんな用事を想定してたんだ。……まぁともかく、何か話があるそうだが?」
「聞きましょう」
戻って来てから、それでも1時間ぐらいか。休みだったのに強制招集した人は、どうせまた後で休みが貰えるんならって今日は仕事してくれている。主に新生クランハウスにおける私のエリアの見回りだけど。抑止力はいくらあってもいいから。
ついでなのでカバーさんも一緒に移動して、戻ったのは執務室だった。書類仕事をする以外では寄り付かない部屋だな。もっとも
で。まぁこれまでになく真面目な顔をしてるヴィントさんはいい。その隣に、ヴィントさんより頭1つ背の低い男性がいた。もちろん見覚えは無い、が。
「すまねぇ殿下。少なくとも兄弟ぐらいは全員揃うべきなんだが、あと2人がどこにいるか分からなかった」
「こ、皇女殿下への拝謁を許可して頂き、ありがたく……あぁちが、えっとイデッ」
「楽にしてください。末の皇女で召喚者ですので、そういう礼節はそもそも私自身がかなり簡略化していますし」
「お嬢」
挨拶を間違えてヴィントさんにごちっとやられていたその男性は、何というか、まとう雰囲気はかなり違うのに、ヴィントさんにかなり似ていた。兄弟ぐらいは、という事から、恐らく弟さんなのだろう。
なのでまず楽にしてもらい、私自身も後半でエルルに怒られる事でお相子とする。その上で2人の正面に座り、改めて着席を許可して、話を聞く状態になった。これで限界まで簡略化してるんだよな。皇女って大変だ。
まず名前を聞いたところ、フリューリフト・ブリーゼと名乗られた。ヴィントさんの弟で合っていたらしく、最初の大陸の竜都が解放されてからしばらくして、世界を放浪し始めたらしい。
で、その理由というのが、まぁ大体分かっていた通り、今回の「海の温度を下げる為に嵐を起こす」事への対策だ。フリューさん自身は普通の風属性ドラゴンらしくあまり助けにはなれないが、それでも嵐を起こしたり、制御したり、そういう装備や魔法の道具の1つでも見つかれば助けになる筈だ、と。
それはあと2人いる兄弟、どちらもヴィントさんからすれば弟らしいのだが、そちらも変わらないらしい。だが今回急いで探して回った範囲だと見つからなかった、という事は、たぶん召喚者と行動しているんじゃないか、との事。
たぶんその「同行している
まぁそれは想定通りだった訳だが、そもそもヴィントさんの一族は風属性の変異種が続く家系であり、あの島で生まれる積乱雲とそれが起こす嵐を、こう、良い感じに誘導したり散らしたりする一族だったとのこと。
それもそんな気がしたので良しとして、問題は、あの島が周辺海域ごと「大きな傷」として空間的に隔離されたことだ。積乱雲を生む島が消えてしまって、影響を受けない訳がない。それはそうだな。
「実際封印されたのはお袋の代だが……封印に、暮らしてた島まで含まれてたんだよなぁ。たまたま偶然、買い出しに出てきてたお袋と親父と、あと何人かだけが封印に巻き込まれなかったっつー」
「……俺達は変異の無い風属性として生まれましたけど、この姉以外の兄姉は全員、進化出来ず大人になれなかったそうです。母と父を含む数人も、俺達が生まれるまでの間ずっと嵐を起こしていた為に、もうかなり弱ってしまっていて」
ちなみに、この「進化出来ず大人になれなかった」っていうの。竜族的には、割とある事らしい。もちろん、エルルとサーニャもこっちに含まれてた。まぁ、レア種族だからな……突然変異系の……。
だから竜族の平均兄弟数は、6から9人。その内2人か3人は進化出来なくて大人になれず、1人か2人は誘拐されてその先で命を落とし、もちろん病気も子供の内は致命的で……半分ぐらいは子供のうちに死んでしまうんだそうだ。
なおかついくら竜族がステータスの暴力と言っても、まぁやっぱり不慮の事故とかはある訳で。軍人になれば戦うのだから、そちらでの訃報もあり……ヘルトさんのように、お年寄りになるまで生きられる
「ただあの空間、「大神の悪夢」って試練の中に、その島があった。直接見た事はねーけど間違いねぇ。人数も聞いてたより少なかったが、あんだけ揃いも揃って嵐属性の同族が集まってる場所が他にある訳ねぇし」
これも正直言えば想定通りだったというか、正直それが狙いだったと言っていいのだが、そこは黙って真剣な顔を維持だ。
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