幕間:時々シャレにならない
「ヌシー! なんか面白いの拾っタ!」
「おや、お土産ですかルウ」
今日の予定を確認してから生産作業をして、一段落したので休憩していると、今日も元気にルウがやってきた。普段は島の周りの海で【人化】を解いて過ごしているルウだが、たまに何かを見つけてはそれを持って帰ってきてくれる。真珠貝はお手柄だったな。
海の中の調査は進んでいない。そこまで手を回している余裕がないし、緊急性も無いからな。もちろん、矢に塗って効果が出るレベルの毒を持った生き物とかが見つかれば話は別だが、とりあえず今の所そういう発見はない。
だからルウの「お土産」には地味に助けられている。だから今回もその類だろう、と、テーブルの場所を開けてその「面白いの」を出してもらった。
「こレ! ……あレ?」
「不思議物体ですね……。どうしました、ルウ」
「色が違うヨー。もっと青かっタ」
「インベントリに入れてるのに変化がある類ですか」
出されたそれは、何と言うか……こう、透明なにごこりと言うべきか。つつくとぷるぷるとゼリーのように揺れる不思議物体だった。海の中にあった割には濡れていない、というのはインベントリの仕様として、色が変わるって言うのはどういう事だ。
まぁ、インベントリの中では何も変化しない、って訳じゃないからな。いくつか例外はある。一応ほとんどのものは変化しないが、あまり長期に渡って料理を入れていたりすると冷めてしまった、という話は聞いているし。
しかし何だこれ? と、しばらくつついてぷにぷに触感を楽しんでゲフン確認してから【鑑定☆☆】。
[アイテム:蓋然性のぷにぷに
説明:様々な可能性を内包した不定存在
環境や状態によって様々な形に変わる可能性がある
一定時間が経過すると、可能性は集約される
可能性の集約までの残り時間 2時間35分]
…………何だこれ?
「ちょっと手に負えない気配がする上に時間がありませんね。カバーさん」
「はい。他メンバーに連絡しています」
私と同じか、私より早く【鑑定】系スキルを使っただろうカバーさんに確認を取ると、いつもの微笑で頷きが返って来た。よし。これで後はお任せすれば大丈夫だな。
しかしこれ、可能性があるって書いてあるけど名前は何て読むんだ? あぁ後、一応確認しとこう。
「ルウ」
「なーにオサ?」
「これ、どのあたりにありました?」
「えっとネー、あっちの方にいっぱい穴が開いてるおっきい岩があっテー。その穴の中に転がってたヨー」
あっち、とルウが指を指したのは南東の方向だ。いっぱい穴が開いてるおっきい岩。……確かに海の中の調査は進んでないが、そんな特徴的すぎる地形あったか?
「おっきい岩。…………つかぬ事を聞きますが、ルウ。その岩の周りに、魚はいましたか?」
「……そう言えばあんまりいなかったかモ? 穴がたくさん開いてたから、寝床に良いかモー、と思って中に入ったらそれがあったんだヨー」
「そうですかー。……ルウ。たぶんそれ何かデカい生き物ですから、あんまり近寄らない方がいいですよ」
「うん、知ってルー。心臓の音が聞こえてたかラ」
「知ってましたか。なら大丈夫ですね」
にこー。と笑えば、にぱー、と返してくれるルウ。可愛いなー。
……まぁ、大丈夫どころか大問題なんだけどな。だってそんな巨大な生物(もしくはモンスター)、この近海では見たことないから。
しかもそこで見つかったのがこの……何て読むのか分からない冠の付いた不定物質、いや説明に存在って書いてるから生き物になる可能性もあるのか、ともかく、このぷにぷにしたものという事で、ぶっちゃけ厄ネタの予感しかしない。
「またですか。たぶんまたな気がしますね。カバーさん全体連絡をお願いします。推定不死族案件、研究成果ないし放置物暴走の可能性ありと」
「連絡と並行して対処の準備を始めます」
たまに流れ着くんだよな、この島。置き土産というか、忘れ物というか、他の島から流れてくるなり脱走してきたなりで、不死族のうっかり結果が……。
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