後来:支援の形

 複製したのか復活させたのか、或いは時間軸的に過去なのか、理屈は不明ながらボックス様の世界、コトニワの世界に行く事が出来るようになった。だが、行けるようになった異世界はもちろんそれ1つじゃないし、召喚者プレイヤー全体のメインになっているのは、異界の大神の世界だ。

 特に最後の時に、修神おさめがみや神の分霊を連れて帰ってきていた召喚者プレイヤーは行動できる時間が長いって事で、「モンスターの『王』」と化していた神の分霊をクランでコンプリートした『アウセラー・クローネ』メンバーもこっちでの探索を進めている。

 こちら側の地域を探索し、土地の力を回復させて、こっちの大神の神殿を建てれば、そこから戻る事も出来るようになるからな。時間切れでも死に戻るだけとはいえ、しばらくの間「異界の鍵」が使えなくなるからな。


「炊き出し用の食材が消える?」


 でまぁ、探索を進めると、割と現地住民と遭遇する。遭遇って言ったらあれだな。けど発見でも無いし、最初の警戒度が高いし、時々食い詰めてヤケになって向こうから襲い掛かってくるらしいから、一番適してるのが遭遇になっちゃうんだよな。

 ともあれ、現地住民の回復も、大神の回復、ひいては世界の回復にとって重要だ。だから土地の力を回復させながら、その初手としてこちらから持ち込んだ食材で、炊き出しを行っているんだが。


「誰かが食べたとかではなく?」

「……一部、全員に振舞われるものだという説明を信じず、手を出してしまう人もいるようですが。今回問題なのは、そちらではありませんね」


 まぁ、説明を信じない人は、うん。いるよね。仕方ない。ここまでが酷かったんだし。

 カバーさんに詳しい話を聞いたところ、どうやら本当に忽然と、少なくとも人間に出来る事ではない感じで消えているらしい。転移とかに近いが、何らかの力が行使された痕跡も残っていないとの事。

 どうやら近くに修神おさめがみがいた事もあったらしいのだが、その修神おさめがみも食材の消滅を感知できなかったとの事。感知力はそれぞれの修神おさめがみで違うが、少なくとも低い訳では無いようだ。


「まぁ修神おさめがみで気付けないという事は、少なくとも人の仕業ではないんでしょうけど。……若干レーンズの時の事を思い出しますが、それとも違うんですよね?」

「周囲に異常は見られませんね。その土地の力が枯渇しかけでほとんど食べられるものがない、というのが元々の状態でしたし」


 過酷だなぁ。


「とはいえ、その現象が確認されて調査が始まったのが一昨日の昼だそうなので、そろそろ現地では結果が出ている事だと思いますが」

「ならいいんですが。……もしかして、比較的後続の人が発見した土地での話ですか?」

「いえ、何も無いとはいえ平地でしたし、地面も固く締まっていて、本来の植生も草原だった可能性が高いと、主に移動用の動物を飼育している方々が土地の権利を巡って、競うように炊き出しをしていた中でのトラブルだったらしく」

「土地の利権でもめてるのを収める方が先では?」


 とは思うが、まぁだからこの、うちの竜族部隊の人達どころか移住組全員で祭りをしても食べきれないぞって量の食糧支援申請になる訳だな? ついこの間「第五候補」に頼まれて支援を出したから、二重申請になってるんじゃないかと思ったよ。

 ……なおよくよく話を聞いてみたところ、そういう状態だから公平を期する為に、まず大神の神殿が建てられ、そこに食材を保管する事にしていたらしい。


「……。一応、あちらの大神にお伺いを立てるか、「これは保管されているだけです」と張り紙をするようにしてみればいい気がしますね」

「……。なるほど。特にこちらの世界で召喚者が用意した食材が大神の神殿に運び込まれる際は、大神への捧げものでしたね」


 ちなみにその対処で、食材の不思議な消失は収まったらしい。

 ちゃんと料理したものが祈りと共に捧げられるのを待てなかったようだ。いやまぁ食材と言っても、果物とかも入ってたから十分食べられるし美味しかっただろうけどさ。

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