第5話
図書委員の仕事は簡単だ。本の貸し出しを行うだけだからだ。そもそも最近の世の中は図書室を理由する人自体減っており、それは学校の図書室でも同じである。
昼休みに図書室にやってくるのは、言い方は悪いかもしれないが陰キャの方々だろう。
まあ俺も陰キャなわけだが、図書室の端っこでただ一人ちまちまと弁当を食べながら読書をするような感じではない。
一応言っておくが、決して彼らのことを馬鹿にしているわけではない。
俺が図書委員の仕事を選んだ理由は先ほども言ったように仕事が簡単だということとに加えて暇な時間に読書の集中できるという点がある。
見たところ利用者はほとんどいないようだし、読書に集中できそうだ。唯一懸念点をあげるとするならば隣に霧花さんがいることだが…気にするだけ無駄だな。
俺は俺の世界に入り込んでおくとするか。
数十分経って俺たちのもとに一人の女性がやってきた。
「お疲れ様、今日はあまりいないようね」
図書室の先生である丸先生である。各学校に必ず一人はいる図書室専門の先生。それはもう先生なのかと疑問に思ってしまう立場の先生だ。
「こんにちは先生」
俺に続けて霧花も先生に挨拶する。そういえば俺が本読んでた時霧花さんは何をしてたんだろう。特に何事もなかったみたいだから彼女も読書をしていたのか?
存外、霧花さんが読書好きだったりしてな。
「カウンターあまり忙しくなさそうだから二人に他の仕事をお願いしてもよいかしら?あまり大変なお仕事じゃないし…」
「ええ、構いませんよ」
「私も大丈夫です」
先生が俺たちに頼んだ仕事は本の陳列だ。先生曰く、最近新しい本がたくさん入ったらしい。
最近生徒の出入りが悪いからアンケートをとったらライトノベルを置いてほしいという声が続出したために人気作のラノベをたくさん買ってみたと。
うむ…俺も明日から通っちゃおうかな。
ラノベを置いてくれるならここに来る理由としては充分だとは思う。
考えておこう。
「じゃあ俺がライトノベル並べるから、霧花さんは残りを頼む」
ラノベは俺が並べたいし、明らかにラノベの方が冊数が多い。大変な方を選ぶのは男として当たり前だろう。もちろん、それを理由に偉そうな態度を取るわけではない。
さりげなくやることに意味があるのさ。
段ボールを持ち上げてふとカウンターの方に目を向ける。すると俺の瞳に映ったのは…先生はいびきをあげて爆睡しているところだった。
先生としてあっていい行動なのだろうか。
まあいいか。暇なんだろうな。俺たちのこと手伝ってくれてもいいのに…もしかして寝るためにここに来たわけじゃあるまいな。
「了解」
ラノベエリアにたどり着いた俺はさっそく段ボールの中身を確認してみた。確かに先生が言っていた通り少しかじってる人間ならば誰もが知っているだろうアニメの原作が集っている。
やっぱ学校の資金力はすげえな、俺も一度にこんなにたくさん買ってみたいもんだぜ。
さあ、さっそく並べるとするか。
しばらくして全部を並べ終えた俺は霧花さんの姿を探した。どうやら霧花さんはまだ作業が終わっていないようだった。
「大丈夫か?」
「順調だよ。涌井くんはまだ終わっていないだろうにに一体どうしたの?」
「いや、終わったから手伝えることあるかなって思って来たんだが」
「え、もう終わったの?流石に早すぎない⁈」
「まあ本並べるのは慣れてるし」
「ふーん、大丈夫よ。私ももう少しで終わるから」
「そうか」
そう言って俺は霧花さん担当の本が入っている段ボールの覗き見る。中に入ってたのは受験勉強用の参考書のようなものだった。
確かこれって結構高い棚のエリアだよな。霧花さんは…届くのか?
俺がやった方が安全に済ませれるよな。俺がやった方がいいか。
「残ってる本、高い場所におくやつみたいだから俺がやろうか?」
一応聞いておく。余計なお世話だと思われるのはごめんだ。
「いや、私がやるから大丈夫。その気持ちはありがたいけど、私がやるわ」
「お、おう…」
結構強い言い方だな、霧花さんは案外頑固な性格なのかもしれないな。
「ここだな、それを並べるとこ」
「そうね、ちょっと届かないかもしれないから脚立を取ってもらってもいい?」
「ああ、構わん」
俺はすぐそばにある脚立を彼女に渡す。
「感謝するわ」
本を持って彼女は脚立を上っていく。怖いな、もし彼女が脚立から落ちてしまったら。下で脚立をおさえたけど、その形だとスカートの中が見えてしまう。
難しい問題だ…。
仕方ない。スカートの中がギリギリ見えないところに立っておいて、もし彼女が倒れてきたら受け止める準備を…と考えていた瞬間だった。
「きゃっ!」
突然上方から人の身体が倒れてくる。
「危ないっ!」
とっさに手を差し出したところに霧花さんの身体が落ちてきて…同時に本棚が脚立に押されたのかものすごい大きな音を立てて倒れてしまった。 もしここが一階じゃなかったら床崩壊していたんじゃないか?
良かった、生徒がいなくて。
「あ、ありがとう涌井くん…」
「ん、ああ…っ、え!?」
「ちょっと恥ずかしいから下ろしてほしいかな」
「ごめん、仕方なかったんだ」
俺は霧花さんのことをお姫様だっこしていた。
「うん、わかってる。私が悪いから…この本だなどうしよう」
いったん落ち着こう。すごい音が鳴ったことで目が覚めたのか慌てた様子で先生がやってきた。
「なんだこれは。なにがあったんだ?」
先生は状況が飲み込めないようで頭に?マークを浮かべている。
「先生すみま…」
「先生すみません。俺が脚立から落ちた衝撃で本棚が倒れてしまいました」
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