第4話
斎藤さんと屋上で話してから数日が経った。あれから俺は斎藤さんのことを少し気にかけていたのだが、存外何事もなく数日が過ぎ去ってしまった。
どうやら俺の考え過ぎだったようである。
今日も俺は教室の端っこで読書の真っ最中だ。最近読んでいるのはライトノベルの中でも人気なジャンルであるラブコメディーである。
最近よく動画視聴アプリの広告で流れてきたもので、その広告の内容はアニメ化が決定したというものでそれを見て興味を持った俺はすぐさまポチってしまったのだ。
「結構面白い。アニメ化するのも納得だな」
何を偉そうにと思いながら俺はすらすらと読み進めていく。夢中になって読み進めていくうちにチャイムが鳴った。どうやら四時間目が終わったようである。
やっぱ自習って最高の読書空間だよな。休み時間みたいに陽キャたちがガヤガヤとしているわけではなく、一人一人が自分の席で作業を行っている。
おかげさまで教室は静寂に包まれているわけで…陰キャにとって至福の時間ってわけだ!
「涌井君、ちょっといいかな?」
「…」
「涌井君?」
「…」
「涌井君!?」
「えっ、俺⁈」
「涌井君は君しかいないよね?!」
なんか女子から俺と同じ苗字が呼ばれてるな、と思っていたのだがどうやら彼女は俺に話しかけていたらしい。
「そうだったのか…」
「そうだったのか、って。クラスメイトの名前覚えてないの?」
「まあ、あんまり覚えてないな」
えぇ~、と彼女は若干引いたような笑いを浮かべた。
彼女の名前は霧花透歌さんだ。クラスメイトの名前をほとんど覚えていない俺が名前を知っているということはそういうことだ。
彼女も美少女陽キャ軍団の一員だ。
霧花さんは俺の偏見だが、軍団の中でも真ん中くらいに位置している美少女だと思う。身長はあまり高くない方で、どちらかというと低いという言葉の方が似合う。
ラブコメに出てくるヒロインの属性で彼女を例えると『ロリ』だな。間違いなく、寸分の違いもなく『ロリ』で間違いない。
ロリコンな男であれば彼女のことを狙うのであろうが、生憎俺はロリコンではない…はずだ。
今まで恋という恋をしたことがないものだから、俺の許容範囲が自分でもわかっていない。もしかしたら余裕でロリコンかもしれないしな。
何を考えているのだろうか俺は。
「それで俺に何の用だ?」
「今日から図書当番っていう話だよ。先々週の委員会決めで、私と涌井君が図書委員になったでしょ。今日は私たちが昼休みの当番だって」
そういえばそうだったな。読書が好きだからっていう適当な理由で図書委員に立候補したんだった。女子の当番は霧花さんだったんだな。
ってことは今から霧花さんと二人っきりで図書室当番なのか?陰キャの俺に女子と二人きりはきついな。
霧花さんは可愛いし、変に嫉妬の的とかになっても面倒くさい。
でもだからといって委員会の仕事だし、断ることはできないし…仕方ない、責任もって遂行しよう。
俺はそう決断すると霧花さんと一緒に図書室に向かうのだった。
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