第5話 来るか⁉ ハーレム展開!

 俺たちは条件付きとはいえ、無事に解放され、街を練り歩くことにした。チャンクを探すという名目だが、本当は異世界での初めての街を散策したかったのだ。

 景色は最近よく見る異世界転生物の中世の西洋風建築、そして和風建築の建物が並んでいた。割合としては西洋風建築の方が多めだろうか。


「例えるなら、海外の日本をモチーフにした映画……、って感じだな!」


 どや顔の佐伯。でも、確かに言いえて妙だ。

 和洋折衷というには、和の形が少々いびつだ。きっと俺たちが歴史方面を完全に放棄してしまったがために生まれてしまった産物なのだろう。

 俺たちは日本人で、海外に対する知見もそこまであるわけじゃない。義務教育をおざなりにしてきたせいだろう。

 だが、俺はこうも思う。歴史はやっぱり作られるものじゃなくて紡がれるものだ。当事者でい俺たちがどうこうするっていうのは違うだろう。という言い訳を添えておく。


「すごい。団子屋さんがあるぞ!」


 佐伯が団子屋を見るや否や無我夢中で飛び込む。この場にかろうじてなじめているその店からは、みたらし団子のいい匂いが漂っていた。

 佐伯は大の団子好きだ。特にみたらし団子は大好きだ。

 しかし、言語が通じないことでうまく注文ができずにいた。


「やっぱりあのバグ倒そうぜ」


 結局団子を買うことができず、めちゃくちゃ機嫌が悪くなった佐伯。そんな佐伯の前にローブを着た人がぶつかる。佐伯はその衝撃でハッとして、しかめていた顔を柔和なものに変えた。

 器用な奴だ……。


「。、:;l;、」


 何を言っているのかは相変わらずわからないが、どこか悲し気な声に聞き取れた。声からして女の子だ。

 女の子の背後から誰かが怒声をあげて近づいてくる。

 佐伯はただならぬ何かを察知し、女の子を背に隠し、地面に手をつき微弱な雷の魔術を発動させる。

 すると雷が地面を伝い、女の子の追手を感電させる。追手は一瞬にして気を失い、 周囲の人たちはあたふたと混乱している様子。

 にしても、やっぱり佐伯すごいな。的確に追手だけを感電させた。

 以前の世界ではあまり何かに優れているというわけでもなかったが……。もしかしたら、佐伯には本当に魔術の才覚があったのかもしれない。以前の世界では魔術がなかっただけで……。


「こっちに。樋口も行くぞ!」

「え、でも捜索が……」

「そんなのは後だ! ハーレム展開が始まるぞ!」


 下心丸出しかよ……。ほんと、かっこいい所見せた途端これなんだから、もったいない。言語が通じなくてよかったな。

 そして俺たちはローブの少女を狭い路地に連れ込み、事情を伺うことにした。とはいっても、言葉が分からないんじゃどうしようもないが……。


「……何があったんだ?」

「…………」


 少女も俺たちの言葉を理解できず、困惑している様子だった。佐伯はそんな少女のローブに手を伸ばしフードをあげた。すると綺麗な紫髪と、釣り目気味の綺麗な顔が見えた。


「くそ可愛い」と、佐伯が息を漏らすように言った。


 確かに綺麗だ。しかし何故追われていたのだろうか?

 俺は佐伯に耳打ちで相談する。


「何で追われていたと思う?」

「ナンパから逃げてきたんだろ」


 だとしたらおかしいだろ。何で運よくローブを持っていた? 歩いていた感じそういう文化でもなさそうだし、もしそういう文化の国からやってきた人間だとしたら、何故フードを元に戻さない?

 怪訝な目で見ていると、女の子の首筋からタランチュラのような毛の深い蜘蛛が姿を現した。


「っひ!」


 思わず裏返った情けのない声が出てしまった。そんな俺を見て、女の子がクスっと笑う。佐伯は何ともないようで、その蜘蛛を手に乗せ、女の子に笑顔を向けた。

 女の子もニンマリと笑みを浮かべ、言葉は無くてもなんとなく通じ合えた感じだった。

 だが、どうしたものか。追われていた原因は分からないし、最悪あのチャンクとの戦いにこの子を巻き込むことに……。あ……。


「なぁ、佐伯。壁に絵を描いてくれないか? チャンクの顔を」

「ん? あぁ」


 佐伯は俺の言ったとおりに壁にチャンクの顔の絵を描いた。

 俺は女の子に似顔絵を必死に指さした。すると、意図を汲み取ったのか、女の子はその似顔絵を凝視した。

 しばらく考えた後、女の子は何か思いついたようなはっとした表情になって、こっちに来てと手招いて、路地を出た。

 路地を出ると、女の子は遠く塔の方を指さした。


 その塔の屋根の上に、誰かが寝そべっているのが見えた。


「……間抜けが過ぎるだろ」

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デバッカー転生 〜突如神様から新しい世界を作れと言われた俺たちは、世界を作ったが、バグまみれで修復するハメに⁉︎〜 @tottttti111

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