放課後
それから、難なく1日が終わった
「(はぁ、やっと終わった)」
帰りの
そこだけ切り離されたかのような空気があった
「(……さっさと帰ろ)」
そう思い、菫子は鞄を肩にかけ教室を出た
一方その頃、啓人はクラスだけでなく学年中の陽キャから遊びの誘いがあった
そんな無数とも言えるような誘いを断り、慌てて教室を飛び出た
目的は一つ、今日一日隣であったにも関わらず一言も話してこなかった女子
そんな彼女に話しかけたいと思い休み時間、話しかけようとしても、いつも邪魔が入る
急いで校門に行くと、まだ彼女の姿があった
啓人はバレずまいと後ろをつけた
校門を出て数分、菫子は圧倒的な違和感に気がついた
誰かがさっきから後をつけてきてる
それも、ただ後ろをつけてるだけではない
珍しい
「(さっさと撒いて帰ろ)」
数分後
「(やーっと撒けた……)」
「(しつこかったな)」
あれから数分間
背後を追ってきた人物を撒くことが出来た菫子
家に帰るべく、菫子は目の前の角を曲がった
そしたら、いた。
自分を追っていた人物と思われる気配がした
しかし何かが不自然だ
まるで目の前にあの気味の悪い色が写って見えた
「(まさか……ね?)」
そして、したくも無い想像が実現した
正面からあの色と共に一人の人物が歩いてきた
「(アレって……今日の転校生!?)」
ニコニコとした表情でこちらに向かってくる啓人に不快感を感じながら真横を素通りしようと道の端に寄る
「(いや、無視!無視すれば!)」
すると菫子の前に大きな壁が現れた
神崎啓人と言う壁が、菫子ただ一人を通すまいと立っている
その壁は菫子が横から抜けようとするとそれを阻止するように同じ方向に寄る
なんとも面倒くさい
「あ、あの!どいてください!」
いよいよ邪魔なので痺れをきらし声をかけた
………………
数秒の沈黙
その沈黙を破ったのは彼の方だった
「それじゃーさ」
「一緒にお話しよ?」
そう言いながら彼はカフェを指さした
「えぇ……」
菫子は心の中ですごく嫌な顔をした
はずだった
「そんな嫌な顔する!?」
どうやら顔に出ていたようだ
「(まぁいいや、それで退いてくれるんなら)」
カフェ店内
店に入ると、中にはモダンな空気が体内に流れ込んできた
「(う、正直慣れてないんだよなこういう
菫子がそう思うと彼は早速と店の奥に行き、席を見つけた
時間的にも他の高校の生徒が過ごしていた
彼は菫子の方を向き、手招きをした
「(こっちに来いと?正気か?)」
駆け足するように啓人のいる席に行った
「あ、あの……話って……」
「マルチの勧誘とかなら断りますけど」
菫子は戸惑いながら聞いた
「大丈夫、そんな怪しい話じゃないから!」
「それより何飲む?コーヒーいける人?」
「(す、すごい。これが陽のオーラか)」
そう菫子が啓人のオーラに押し潰されながらも答えた
「こ、ココアで」
「了解!ココアね!」
啓人はキラキラと目を輝かせ菫子を見た
「(大型犬みたいな人だな)」
「すいませーん!」
大きく明るく放った彼の声は、どうやら厨房まで届いたらしい
数秒後一人の女性店員が出てきて
「はぁーい♡」
と言って注文をとり始めた
「(こうやって見ると顔は良いんだよな)」
注文が終わると店員は厨房に戻る
よくみると啓人には満面の笑顔
菫子にはどこか妬み恨みがこもった顔で対応していた
「(顔では隠せても色は誤魔化せねーよ)」
そう心の中で思った
啓人はなにやらスマホをいじっており、画面に指を滑らせる
数分の沈黙が過ぎ去り
「そういえばお話するんだったね」
「あ、はい……」
触っていた画面を閉じ、改めたように姿勢をただし言った
「君、お化け見えるよね?」
「ふぇ?」
唐突だったあまり、菫子は変な声が出てきた
「な、なな、なんの事でしょうでしょうか?」
「同様がすごいな」
「まぁまぁ、落ち着いて?別に咎めようとしてる訳じゃないから」
たとえ咎められようが咎められまいが、菫子には関係なかった
バレたのがこれで初めてでは無いが機会が多い訳では無い
それ故に動揺せざるおえなかったのだ
その時
「ご注文のカフェモカと♡」
「ココアになります」
注文がきた
店員は二重人格かのように態度を変えて接客をした
先程よりも強く睨まれたような気がする
「(この赤紫色……嫉妬か?何に?)」
「(ああ、このイケメンと私みたいなのがいるのが気に入らないのか)」
「(こっちの気も知らずに)」
なんてことを心の中で留めていると、店員はいつの間にか厨房に戻っており啓人はカフェモカを一口すすり
「それでね、本題なんだけど」
どうせなにか嫌味を言われるだけだろうなんて思いう
「(何が飛んでくるんだろうな)」
そう覚悟を決めてカップの中に入るココアを口に含む
「探偵をやって欲しいんだ」
「ゴフッ!」
「どうした!?」
突然だ
あまりに突然過ぎて気管支にココアが侵入してきた
「ケフッ!ケフッ!な、なんて……」
「いや…だから探偵を…それより大丈夫?」
むせる直前になんとかハンカチで抑えきれたため被害は最小限に抑えられた
しかし、菫子の焦りは最大限をゆうに越えていた
2分後
「……ふぅ」
一通りむせ終えたところで改めて話を聞いた
「もう大丈夫?」
「は、はい……」
啓人が心配そうな顔をして言った
「正確にはね?探偵のフリをして欲しいんだよ」
「はぁ……」
ここで菫子には一つ、疑問が湧いた
「何故私なのですか?」
「え?」
何故自分なのか
何故今日会ったばかりの人間にそのようなことを頼むのか
菫子には疑問であった
「なんで……かー」
啓人は何故か困ったような顔をして少し悩んだ
「んー、なんというか……直感?」
「え?」
拍子抜けだ
まさかの特に理由がない
「じゃ、じゃあなんで私が幽霊見える事を!」
「あぁ、あれね
教室で君が何かいつもの見慣れた景色を見たような感じで黒板を見てたから」
「ど、どういうことですか?」
菫子が尋ねて見ると
「えーっと幽霊見える人って別に見えても驚かないってどこかで聞いたことあるから」
「どうしてそこまで……」
どうして自分のことをそこまで知っているのか
今の菫子にはそれしか頭になかった
「俺はね、人を観察するのが得意なんだよ」
「その人の歩き方、仕草のクセ、その人の些細な服の揺れから伝わる呼吸の感覚」
「その全てを記憶する事ができるんだ」
啓人は今まで出会った人、起こった出来事全てを記憶している
「……ハイパーサイメシア……ですか」
「そう!一般的にはそう言われているね」
この時、菫子は一つの結論に至った
「(こいつはやばい)」
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