同じ色、違う色
「姉さん、もう疲れました・・・」
今日の業務を終えて、妹のリリーが私にぐったりと抱き付いてきます。
「本当にお疲れ様。大変だったわね。」
出張という形で、普段働いている『商業都市』の依頼所から、リリーがいる『城塞都市』へやって来ている私は、妹の自室近くに誰もいないことを確認してから、優しく頭を撫でました。
「ううう・・・本当に何なんですか・・・・・・サクラさんに久し振りに会えたのは嬉しかったですけど、いつの間にか都市で一番偉い人達の護衛をしてるとか・・・
しかもお城が危ないからって、この依頼所の部屋に泊まるとか・・・・・・」
「ええ、私も未だに信じられないのは確かだわ。サクラさんとミナモさんが『商業都市』を出発する時、こっちの政情不安に気を付けるよう言ったのに、いつの間にかその真っ只中に乗り込んで、原因ごと引っくり返してしまったんだもの。
・・・でも、それがあの人達らしいとも思ってしまうのよね。」
「ふえええ・・・・・・姉さんの強心臓がうらやましいです。わたしはおなかいたい・・・」
「あら、私も少し胃薬が欲しいわよ。でも、その偉い方々は、貴人にするような礼なんて望んでいなかったように見えるけれど。それこそ、サクラさん達と同列の仲間みたいにね。」
「それもなんとなく分かるんですけど・・・じゃあその偉い人が目の前にいて、冷静でいられるかというと、また別の話で。」
「ふふ、そんなリリーも可愛いと思うわ。」
「姉さあああん・・・真面目に聞いてます?」
「あら、私は本心から言ってるわよ。」
「むう・・・・・・」
あら、つい本音が漏れたら、子供の頃に戻ってしまったようです。でも、リリーが可愛いのはどこまで行っても本当なので、ぎゅっと強く抱き締めてから、もっと頭を撫でてあげましょう。
「ねえ、リリー。これから『城塞都市』はもっと慌ただしくなると思うわ。本当に辛いなら、依頼所の職員なんて辞めて、戻ってきても良いのよ?」
「・・・ううん、辞めないよ。私は姉さんみたいに頭良くないし、何でも上手にはできないけど、自分なりに頑張りたいから。」
「そう・・・・・・」
その答えが返ってくることは、予想してはいました。私情を一切挟まなければ、この仕事に向いているのは私のほうでしょう。
だけど、小さい頃からいつも私の後を付いてこようとしては、それを楽しんだり頑張ったりできる妹は、こんなことで諦めたりはしないのです。
それに・・・妹が気付いているかは分かりませんが、失敗もするし弱音も吐いたりするけれど、その頑張りは皆にも伝わって、悪く言う人のことなんてほとんど聞いたことはありません。これは私には、きっとできないことでしょう。
「分かったわ。でも無理はしないようにね。辛いことや嫌なことがあれば、すぐに教えなさい。」
「うん・・・」
だからいつも頑張ってしまう妹に、私なりの言葉を送ります。万一にも障害になるような出来事があれば、全力で排除に動きましょう。
一度決めたことをやり遂げようとするところは私に似ていて、でも違うところも多くある、可愛い妹をもう一度強く抱きしめました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます