黄金色の思い出

この村にたくさん植えられた麦の穂が伸びて、きらきらと輝いています。もう少ししたら、大人達がみんなで刈り取りをする頃でしょう。


小さい子供はまだやらなくていいからと、そんな中を走り回って遊んでいましたが、私達もそろそろ、初めてのお手伝いをすることになるかもしれません。


「ティア姉ちゃん、今頃どうしてるかな・・・」

「うん・・・」

そんな時に思い出すのは、本当はお手伝いをするような年なのに、私達が淋しそうにしていると、農具を投げ捨てて一緒遊んでくれた、村の子達みんなのお姉ちゃん。

本当は良くないことだというのは分かりますが、そんなことは全然気にしないで、村長さんに怒られながら駆け回っていた、ティア姉ちゃんのことがみんな大好きです。


一人でいる時によくかちゃかちゃしていた、『おやじのまどうぐ』というのは、よく分からないままでしたが・・・・・・



それが、ティア姉ちゃんにとってはとても大切なもので、もういないお父さんから教えられたものだというのは、なんとなく分かりますが、

どうやって動くのかとか、姉ちゃんがそれで的を狙っても、なかなか当たらない理由なんかは、私達にはさっぱりです。


でも、恐い人達が村にやって来た時、とっても強い旅人のお姉ちゃん達と一緒に、それを使って助けてくれたことは、絶対に忘れられません。

あの『まどうぐ』から、まぶしい光が飛んできて、私達を捕まえようとしていた悪い人をやっつけてしまったのを思い出すたび、お父さんやお母さんが話してくれた物語の英雄って、こんな風じゃないかって。


・・・その次の日、悪い人達の親玉をやっつけるといって、旅人さん達と一緒にティア姉ちゃんは村を出ていきました。

姉ちゃんなら本当にやってくれるんだと思いますが、やっぱり心配です。



そんな私達の気持ちを知ってか、とっても大きな『商業都市』に行ってきた村長さんは、ティア姉ちゃんと一緒に旅立った二人が、そこでも有名なくらいすごいお姉ちゃん達なんだと、教えてくれました。


なんでも、大人よりもずっとずっと大きくて恐ろしい動物を、二人だけでやっつけたとか・・・

そんなに強い人達なら安心かもしれませんが、ティア姉ちゃんのことをあんまり信じてなさそうなのは、ちょっぴり不満です。


『まどうぐ』や遊ぶことが好きで、村のお手伝いが少し適当なのは知っていますが、やっぱり私達にとっての英雄は、ティア姉ちゃんなのです。

いつも一緒に遊んでもらったり、あの日に助けてくれたことは、私達にとって畑に見えるたくさんの麦の穂みたいに、きらきらした思い出です。

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