20 祠にお参りしよう

 関所を通過した途端、なんとなく道がぼこぼこしている。

 というのも、ナレリーナではその安定した税制で、街道整備にかなりの金額を出していた。

 かつてデコボコだった田舎道は、専門の職員たちによって、土ではあるものの整えられている。

 だから馬車で通れば、その違いはよりはっきりするんだろう。

 俺たちは歩きだから、デコボコでもそれほど苦ではない。


 よかった、よかった。


 こちら側はドルブラ領という。

 アルバート・ドルブラ男爵の治める領土だ。

 彼の家は騎士の家系で、武を尊ぶけれど、政治とか町の整備とかはいまいちみたいだった。


 ナレリーナ側には関所があるのに、ドルブラ側は素通りなのも、田舎のナレリーナに興味がないということの表れの一つだ。

 別に同じ国内で領土を侵攻してくるとかも、現代ではほぼ皆無なので、そういう心配もしていない。


 ふと右側を見れば、小さな祠が見えた。


「テリア、祠がある。ナレリーナでは見ない様式だけど」

「あ、うん。これは水の精霊フェミリア様の祠なんだよ。ドルブラのフェミリシア湖に住んでるとされるんだよ」

「へえ。一応、挨拶していくか?」

「うん」


 50センチぐらいの四角い石の柱が左右と奥に三角形を作って立っている。

 中央には、小さな祭壇があった。


 祭壇の前には、いくつもの花の花瓶が置かれている。


「お花が好きなのかな」

「そうかもね」


 俺たちはそこにリンゴを2つ、オレンジを1つ置いて、頭を下げる。


「エルフ族のテリアです。ドルブラではよろしくお願いします」

「ヒューマンのアランです。よろしくお願いします」


 まあ、これでいいだろう。

 お花のほうがいいのかもしれないけど、テリア曰く果物でも大丈夫。


 また光の粒が、キラキラ舞っているのが見える。精霊または妖精たちだ。

 俺たちの情報は、妖精ネットワークで、フェミリア様に伝えられるのかもしれない。


 少し歩くと、後ろから荷馬車が追い抜いていく。

 ちょっとガタガタしていて、道が悪いのがわかる。


「商人たちも大変だな」

「まあ、そうだね」


 今日は関所も通ったし、そろそろ野営だった。


「よし、ここで野営しよう」

「わかったわ」


 ちょうど綺麗な湧き水の流れる小川があり、その横が休憩所みたいにひらけている。


 今日の晩御飯は、あれにしよう。

 お肉と野菜の炒め物には飽きてきたし。


 とっておきの乾燥ホタテの貝柱、乾燥キノコを取り出す。

 それをフェミリア様の加護がありそうな綺麗な水で煮ていく。


「お、なんだかいい匂い」

「おう今日は旨味たっぷりのホタテとキノコのシチューだぞ」

「やったあ。ホタテとか超珍しいね」

「まあな」


 海から遠いからホタテの流通も少ない。

 キノコのほうは村のそばの森で俺が取ってきたのを自分で乾燥させたものだ。

 塩、ホタテとキノコに加えて、野菜類、そしてお肉を入れる。


 小麦粉でとろみをつければシチューの出来上がりだ。


「おいしそう」

「だろ」


 テリアはあつあつのシチューを木のお椀に入れて、スプーンで口に入れる。


「あっつ、でも、おーいしー」

「ああ、うまい」


 ホタテとキノコのダシが出てる。野菜と豚肉からも旨味は出てるがホタテの風味が抜群にうまい。


 お代わりを2杯はした。


 今日もよく眠れそうだ。


 地面に革を敷いて、その上に横になり、布団を被る。

 専用の寝袋みたいなものを使う人もいるが、俺は上下分かれている布団派だった。


 テリアも似たようなもので、横のスペースで転がっている。


 火は消えて、警戒の魔道具と妖精たちが夜の見張りをしてくれる。


 上を見ると快晴だった。


 夜空が広がっている。この星もどこかの銀河に所属しているらしく、天の川のような星の集まりが広大な帯になって、薄く光っている。


「夜空もきれいだ」

「うん、星って真ん中に川みたいになってて他はちょっと少ないけど、ところどころに明るい星があったり、不思議」

「これはみんな太陽の親戚で、遠いから小さく見えてるんだぞ」

「うっそだあ」

「本当、本当」

「ふーん。そういえば異世界出身なんだっけ、異世界の知識なの?」

「ああ」

「なるほどね」


 そう科学的に説明すると、わくわくもするけど、ある意味では幻想的なイメージがちょっと減る。

 なんとも悩ましい問題だ。


 布団は快適だった。ぐっすり眠れた。


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