12 町を出よう
さて出発の時だ。ナレリーナ町から出ていく。
っとその前に寄るところがある。(史上三回目)
冒険者ギルドだ。
別に寄らなくてもいいんだけど、商人よりも詳しいことがある。
商業組合は、俺を入会させなかった天敵なので、利用は避けたい。
ここ一か月、領主の館に籠っていたので、最新情報は欲しい。
テリアを連れて、冒険者ギルドに行く。
ここは結構大きい。
低級ポーションが安く大量に手に入るナレリーナは、安心して冒険者をしやすい、とてもいい環境だ。
そのため、まだ昼前だというのに、冒険者ギルドには人気がそこそこあった。
その代わり、よくあるとされる町のクエストでの薬草採取とかは、ない。
他の地方や王都のほうへは行ったことがないので、直接は知らないんだけども、商人経由の情報には、薬草採取クエストなんてものはない。薬草は王都でも畑栽培がほとんどすべてだろう。
美少女の巨乳受付嬢の短い列に並び、順番を待つ。
俺は童貞だけど、こういうときは、やっぱり美少女に限る。
経験上、いまいちな子より美少女のほうが、対応が柔らかい。基本的に性格がスレてない。
それをじとっとした目線で非難してくるテリアはガン無視しよう。
「はーい、次のかたどうぞぉ」
「はいはい。はい、ギルドカード」
「Bランク冒険者、確認しましたぁ。ご用件はなんですか?」
俺は一応、Bランク冒険者だった。ソロで達成している。めっちゃ強い魔物とかを倒したわけではなく、長年掛けてちまちま町に通った成果だ。
「王都方面の街道沿い、ここ一か月以内の情報が欲しいんだけど、何かありますか?」
「はい。王都方面ですね。最近、ベア、ウルフなどの中型の肉食魔獣の活動がやや活発なようです。あとは普通ですね。盗賊情報はありません。お天気は今のシーズンは晴れが多いです」
「なるほど。ありがとう」
「はいー。どういたしまして」
ほら、やっぱりにこにこ笑顔で受け答えしてくれて、サービスがいい。
受付嬢によっては、情報はお金を取る。俺も村ではそうだ。
でも、これぐらいなら取らない人もいる。彼女はそうだった。
「はい、情報ありがとう。飴ちゃんあげる」
「わああ。ありがとうございます~♪」
いつものストックから蜂蜜飴を出す。
めっちゃいい笑顔で美少女受付嬢が受け取り、口に放り込んで、幸せそうな顔をする。
蜂蜜飴は、大きくないから一つぐらいなら大した値段ではないが、農民や貧民からしたら、贅沢品だ。
いわゆる嗜好品というもので、めったに口にしない。売っていないわけではないんだけど、わざわざ買ったりしないと思う。
プチ贅沢ってやつだね。
「では次のかた~」
受付を後にしてギルド内を見渡す。
さてクエストボードも見ていくけど、特に王都方面で手頃なクエストとかは、なさそうだ。
護衛依頼はあるけど、うーん護衛は行動を束縛されるのであまり好みではない。
ちょろっと採取とか、ちょろっと討伐とかが好ましい。
採取クエストも見てみるか。
うんうん、ああ、あれがあるな。
ぺりっとクエスト依頼書を剥がして再び、列に並ぶ。
もちろん巨乳美少女の列だ。
「はい、次のかた~。ふふふ、飴おいしいです」
「それはよかった。このクエストよろしく。はい商品」
俺は偽装バッグから、メークス芋を取り出して渡す。
メークス芋は、栽培が難しい森に生えている天然芋で、食べるとおいしい。
特殊な効果はないが、たまにこうやって物好きとか、貴族が買い求める。
「はーい。たしかに受け取りました。記録付けておきます。私も一度、食べてみたいですねぇ。おいしいんでしょうねぇ~」
美少女はメークス芋を食べたところを想像して、ほっぺに手をやっている。可愛い。
こうやって町に来るたびに、ついでにクエストを消化している。
「さて、ようやく、行きますかね」
「そうですね。町から出るの、久しぶり。楽しみぃ」
すでにテリアはるんるん気分になっている。
石造りの内壁を通過、門はあるけど警備などはない。
そのまま外の門まで行く。
俺は偽の身分証のほうを提示して、15歳としてナレリーナ町を出発する。
テリアは身分証でも耳を見ても、エルフなので、特に問題もなく通過した。
門を出て、外の世界だ。
街道が伸びていて、近くは草原、すぐに両側は林になってずっと続いている。
「はあ、外の世界だあ。私は自由の身だあああ」
テリアが両手を上斜めに上げて、よろこびを全身で表していた。
「テリア、今更だけど、馬車とか馬のほうがよかった?」
「うーん、どれでもいいよ。アラン、ご主人様の仰せのままに」
「なんだその、ご主人様って」
「私は今からアラリンの性奴隷ねっ」
「んなっ」
「あんなことや、こんなこと、なんでもしますよ。ご奉仕しますっ」
「やめーや」
「あははは、いいじゃん性奴隷。エルフの性奴隷ってめっちゃ高いんだよ。超高級品だよ」
「あーそうだな」
ちなみに荷物は偽装バッグ一つだ。
テリアも時間停止のマジックバッグを持っているので、バッグ一つだった。
身軽なのは楽でいい。
ただし、騒がしい旅になりそうだ。
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