7 家庭教師をしよう2
俺は基本領主館にやっかいになっている。
家庭教師はまだ続いていた。
寝泊まり、美味しい食事が報酬だった。
美味しければよく、決して高級品を食べ放題という意味ではない。
単価が安くても、うまいものはうまい。うまければいい。
「というわけで、ここ領都ナレリーナでは長者番付が公開されているんだ」
「へえ」
長者番付の仕組みを説明する。
こんなものは要らん、と今後言われると困る。ちゃんと理由を説明しておく。
長者番付は商人たちの宣伝効果での積極的な納税以外にも意味がある。
それは、相互監視だった。
明らかに儲かっている商店があるのに、長者番付に載っていなければ、即、噂が流れて調査されるのだ。
これは現代も真っ青の、地域社会の情報網だった。
おばさんたちの井戸端会議のネットワークも伊達ではない。
そんなことになれば信用が失墜して、もう商売は続けられない。実質、廃業しかなかった。
「生活魔法もメイドさんにお任せじゃなくて、覚えるといいよ」
「はーい」
「はいでしゅ」
「私は、もう使えますわ」
「フェリちゃんはえらいんだね」
「ちょっと、その、魔法に興味あって」
なるほど。色々なものに興味を持つのはいいことだ。
攻撃魔法とかの属性魔法とは別に、いわゆる生活魔法もある。
なんでも清潔にしてくれるクリーンの魔法。お水をくむウォーターの魔法。
明かりのライト。それから種火のファイア。
代表的なのはこれくらいか。
実は属性魔法の初級魔法でもあるので、生活魔法が使えれば、多少は属性魔法の適性がある。
ファイアをものすごく大きくしたものがファイアボールだというのが、定説だった。
他にもムーブパワーというものを押したり動かす魔法とか、ロック・アンロックの鍵開錠、サイレントという盗聴防止結界とかもあるが、ちょっと難しい。
それから奴隷商が使う契約魔法もある。これは奴隷契約を強制する魔法だ。怖ろしい。
子供たちにはまだ早いかなとも思うが、次の機会があるかは不明なので、この際教えておく。
「コントラクトという奴隷を強制する魔法があるんだ」
「えっ、そんなものが」
「怖いです、お兄様」
「君たちは大丈夫だと思うけど、領主が悪いことばっかりしていると、家を潰されて、子供たちは奴隷に落とされてしまうんだ。そうするとキツい奴隷化を強制される。嫌なことをたくさんされるよ」
「うっ……」
「そんな、ひどい」
「うにゃあ」
まあ奴隷制度に関してどうのこうのというつもりはない。それはこの世界が決めるものであって、転生者が現代基準であれこれ言っても始まらない。
「メイドさん、サフィアを呼んでくれ」
「かしこまりました」
授業には例のメイド服のメイドさんがついていてくれる。
そしてサフィアを呼びに行った。
「サフィアです。なんでございますか?」
サフィアは12歳。美少女メイドさんの一人で最年少だ。
彼女はちょっと他の自主的なメイドさんとは違う。奴隷なのだ。
それも実は性奴隷なんだけど、まあそこは省略しよう。
俺がロリコンだとか言ったので、領主が気を利かせてサフィアに俺の周りのお世話全般を命令している。
ちなみに、夜のお相手はしていない。全知全能の転生神に誓ってしていない。俺はまだ童貞だ。
余談だがニートの神の加護は、童貞を失っても失効しそうで怖い。
「サフィアの首を見てくれ。黒い首輪をしているだろ。これが隷属の首輪で奴隷を縛る
「そう、だったんだ」
なるほど知らなかったと見える。まあ、普通なら子供に教えるようなことではない。
でも、領主一家ともなるものが、奴隷を知らないで育つのは、逆に教育によくない。
「知らなかったろ? 奴隷は身近にもいる。無知は罪だ」
「はい、先生」
「私、知らなかったですわ」
「わたしも、知らなかったです」
「サフィア、君はどうしてここの領主館でお世話になっているんだ」
「あの、私、その、あの、ドミニオン様たちの、性教育のために、買われました」
なるほど。貴族の子供ともなれば、そりゃあ女の子が手取り足取り教えてくれると。そりゃそうか。
まだちょっと早かったか。早まったな。まあいいか。
「あとは、その、乳母候補ですね」
ああ乳母ね。おっぱいを代わりにあげる例のあれ。貴族ならそれも必要だ。
信頼の置けない乳母なんて、怖くてそばに置けないもんね。
まあ、こんな感じで、とりとめもなく、色々なことを教えた。
魔力操作、魔力感知、クリーン、ウォーター、ファイア、ライトは三人とも難なく覚えた。
火、水、土、風の基礎魔法も問題なかった。
忘れちゃいけないのがヒール、回復魔法もある。
剣はまだまだ筋肉がなくて、へなちょこだけれど練習すれば上達するだろう。
あと、おおざっぱな歴史感とか、教訓的なもの、メイドとかが知らなそうなことを中心に、なるべく広範囲に教えた。
短い期間だったけど、充実した家庭教師だったと思う。
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