第16話 休日の朝〈拾の姫エルナ〉その1
とりあえず、隠れていたテーブルの下から這い出て、ケヴィンに文句を言うことにした。
「余計なことを言わないでください。
ボクとしては、もうっちょっと、カッコよく、登場したかったのですよ。」
「テーブルの下にいる時点で、無理だろ。」
「余計なお世話です。」
などと、くだらないやり取りをしていたら、立ち上がる時、髪が何かにからまったのに気づいた。
長い髪って不便。もう切りたい。短くしたい。肩ぐらいまで短く。
と、ケヴィンの手が絡まった部分に伸びて、すっとそれがほどけた。
その髪は俺のもの、みたいな目で見てなければ、お礼くらい言ったけど。
そこで、姫や王子の視線がボクに集っているのに気づいた。ちょっと居心地が悪い。
引きこもりしてたから、仕方ないとは思ってるよ。でもさ、いろいろ、しょーがないと思うんだよね、ボクとしては。
「一応、言っておきます。ボクは女の子です。16才です。生きてます。お化けじゃないので。
名前はエルナです。拾国の姫ということになってます、一応。」
すると、姫と王子がそれぞれに名乗ってくれた。
「こちらの席にどうぞ。ケヴィン様もこちらにいかが?」
とシャルロッテ姫が声をかけてくれたので、ひとまず座る。なぜかケヴィンも隣にやって来た。
「ボクの話を聞きたいということでしたよね。
ボクも話さなくてはならなくなりました、卵が割れちゃったので。
ええと、つまり。
唐突だけれど、ボクはここではない世界から来ました、ある日突然。」
ケヴィンが思わずといった素振りで振り向く。そうそう、ちゃんと驚いてよね、ここは驚くしかないところだからね。
「……異界からの来訪者?」
テレーゼさんから聞こえる、ささやくような声。
「たぶんそれです。この世界で時々あるようですね。」
「私の故郷に昔、そんな方がいたらしいのです。」
テレーゼさんが驚きながらも話してくれる。ほかの皆の表情を見れば、知らない人はいないみたい。良かった。何それ美味しいの?という反応をされたら、さすがに話が進めにくいからね。
「これまた唐突だけれど、ボクがいた世界に、この箱庭の儀式ととてもよく似たゲームがあります。」
姫と王子の視線がボクに集中した。ホント、似てるなんてびっくりだよね?
「ゲームですの?」
イザベル姫がいぶかしそうに聞いてくる。
「それね、説明がすごく難しいんだ。この世界には似たようなものがなくて、今のところ。
物語を楽しむゲーム、みたいな何かだと思っていて。」
そしてボクはふっと空を見上げた。明るい青空。でもこれは青空であって青空ではない、閉じられた箱庭に作られた空。
「そのゲームはね、お姫様1人と10人の王子様が登場する物語。
どうして似てるんだとか、なぜそのゲームなんだかとか、どちらが先か、なんてきかないでね。ボクにわかるわけないでしょ。
ただボクは、そのゲームをやったことがある。そして書庫の記録をかなり読んで確認したから、似てることは確かなんだよ。」
クリスタ姫から質問がきた。
「それは、推理する物語なのですか?」
どうしてそんな質問になるのか、ボク、ちょっと分からないな。
「違うよ、恋愛の物語。最初っから最後までそれしかない。
ただ、ちょっとしたミステリ、つまり謎解き要素があって。登場人物の一人が失踪するんだ。殺されるとかじゃないよ、単に失踪するだけ。
その王子を探すのも、ストーリーのひとつっていうか。
このゲームはね、お姫様がどの王子を選ぶかによって、ストーリーが変わっていく。
でも、絶対に変わらない部分があるんだ。
失踪した王子を探すこと。
書庫の本を読んで、手がかりを見つけること。
二人の王子が、姫をめぐって争うこと。
卵を壊そうとしてみること。
箱庭の鍵を見つけること。
最後に卵を孵すこと。
この六つはどの王子を選んでも、ストーリーに出てくるというか、姫は選んだ王子といっしょにしなくちゃならないんだよ。」
再びクリスタ姫が問う。
「つまり、私たちも必ずそれをすることになると?」
銀の髪をくるくると指に巻き付けながら、ボクは答える。こういうとき、長い髪は便利かもね。
「もう、しているはずだよ。女官から聞けるだけお姫様たちの話を聞いたけど、してるでしょ。」
クリスタ姫の黒髪がさらりと揺れた。ボクはちょっと懐かしい気分になる。
「そうですね。ディルク様と私が書庫の本を調べたのは間違いないとして。
二人の王子が争うというのは、シャルロッテ様の件でしょうか。」
話を振られたシャルロッテ姫が瞬きした。
「……いえ、恋愛の物語なのであれば、あれは少々、求められているものとは違う気がするのですが。」
クリスタ姫がその件について簡単に説明すれば、皆の反応はまちまちで。
でも、ボクはこう思うんだ。
「たぶん、もう、細かいことはどうでもいいんじゃないかな。
そもそも、お姫様1人に10人の王子様だったのが、前回はお姫様1人に王子6人、今回はお姫様5人に王子5人になってる。ということは、そこは重要じゃないんだ。誰かが似たようなことをしさえすれば、ストーリーは進んでいくってことなんだとボクは思う。
だから、どれだけ意味が分からなくても、ボクが知ってるゲームと似たようなことをすれば、たぶんそれで成功なんじゃないかって。それでゲームは終わって、ボクたちはここから出られはずなんだ。」
「では後、卵は壊しましたから、失踪した王子を探すこと、箱庭の鍵を見つけること、卵を孵すことで終了ということですか?」
とリーンハルト王子。しかしディルク王子は。
「待ってくれ。なぜ、出られるだの出られないだのって話になる?俺たちは途中退場ができない。それは儀式の都合上だと考えていたが、違うということか?」
「参加者全員が箱庭から出られなくなったという話は、さすがに聞いたことがありませんが。」
とリーンハルト王子が皆を見回せば。
ユリウス王子がのんびりと話し出す。
「箱庭の入口からは出られないよ、オレ、試してみたからさ。」
「そういうのは、ケヴィンが真っ先にやりそうだが。」
とランベルト王子がこちらのほうを見れば、テーブルに肘をついたケヴィンが平然として答えた。
「やってみたぞ。だがな、そういうお前もしてるだろ?」
「私は箱庭の警備体制に興味があって、独自に調査をしていただけだ。」
「俺とたいして違わねえよ。
俺は入口はもちろん、それ以外にも出られそうなところがないか、昼も夜も試した。
今のところ無理だったけどな。」
シャルロッテ姫はまあと小さく声を上げ、クリスタ姫は興味深そうに、イザベル姫はあきれて、テレーゼさんは胡乱げな表情。
ボクは一応、ジト目で見てあげることにする。すると、むしろケヴィンは堂々と胸を張った。
「バレなきゃいいだろ?儀式には参加してるんだ。ちょっと外で息抜きすることの何が悪い?
そもそも、箱庭に閉じ込めなきゃならん理由がわからねえ。」
「……その発想、ボクには思いつかなったですよ。
ただ、たぶん、雪山の山荘とか、絶海の孤島とか、ミステリでいうところのそういうシチュエーションって美味しいからだと、ボクは思いますけどね。」
「美味いって何が?」
「そこ、ツッコまないでください。」
などと、ケヴィンとくだらないやり取りをしていたら、気づけばこの場に生ぬるく見守る雰囲気が広がっていた。
ちょっと待って。なぜそれが、ボクとケヴィンに対してなの!?全然違うでしょ!
生温かく見守りたいペアって、ほかにいくらでもいるでしょ、ほら4組も!!
と言いたいのを抑えて、ボクはこほんと咳払いした。せっかくの見せ場だから、カッコつけたいの!
「とりあえずですね、ボク、書庫にある10年分の記録を読んでみたんです。10年分しか読めなかったですけど。」
「へえ、そりゃすげーな。」
ケヴィンからの純粋な称賛にボクは胸を張る。
「ボク、こういうのはちょっと得意なので。」
「まったくそうは見えねえけどな?」
「失礼な。これでもボク、前の世界ではシンガッコーで成績上位だったのですよ。」
「何となく意味は分かった。お前の頭が悪いとは思わねえけどよ。やっぱ、そうは見えねえな。」
余計なお世話と言いかけて、ボクは我に返った。ケヴィンの言動にいちいち反応してる。俺様タイプに振り回されるとか、ボク、ご免なのに。
「話をもとに戻します。
書庫の10年分の記録に、参加者が箱庭から出られなかったと記されているものはありませんでした。
つまり、このゲームはクリアするのはそんなに難しくないんだ。どのくらいクリアできたかと、どのくらい強い結界が創れるかは連動しているけどね。あと、姫と王子のラブラブ度とね。」
なぜかこの場がビミョーな雰囲気になった。ラブラブって言い方、まさか恥ずかしい?ま、仕方ないね、そういうゲームなんだよ。
“ゲート・オブ・エデン ~箱庭の卵~
あなたは神託によって選ばれた、この世界を守る姫です。
王子と恋をして、箱庭の卵を孵し、この世界を守る結界を創ります。
箱庭のガーデンであなたを待っている王子は、10人。――あなたは誰と恋をする?”
まあ、こんな感じのね。
「ただ、ボクが知っている限り、卵を割ってしまうと難易度が上がるっていうか。
結論から言うと、王子が失踪する前に卵を割ると、箱庭に閉じ込められる、箱庭から出られない、ゲームが終わらないから、世界は守られない、ボクの知ってるゲームではそうなる。
ボクの知ってるゲームとこの箱庭の儀式は似ている、でもまったく同じじゃない。それでも、卵を割らない方が安全なのはわかってた。
だから、これは完全にボクの見込み違い。このゲームで危険な要素ってこれくらいだから、気にしてはいたんだよ。だけど、卵を割るにしても、箱庭に来て3週間目でそんなことになるとは思わなかった。ストーリーの進みが早すぎるんだ。通常2か月以上たたないと卵を割るとか割らないとか、そんな話は出てこないはずなんだ。
一応、神殿に確認はしてみたんだよ、裏技みたいに緊急避難出口があるかどうかってことを。回答はね、物資輸送のゲートはあるけれど、人は通れない、だった。」
テーブルに沈黙が広がる。ボクの話にどれくらい妥当性があるのか、判断するのは難しいと思うけど。
「ああ、ごめん、もう少し詳しくいっておくね。
卵を割ると、時間制限がかかるんだ。一日、24時間。その時間内に、箱庭の鍵を見つけ、卵を孵さなくてはならない。
通常なら、箱庭の鍵は絶対ではないんだ。書庫の記録では1回を除いて皆、見つけてたけどね。鍵があれば、結界がより強固になるくらいで。
でも時間制限がかかると、条件的に鍵も絶対必要。その鍵を見つけるにはまず、王子が失踪しないとダメなんだよ。失踪した王子を探して、それから王子の持っている鍵を探す、順序は絶対にこれ。そして、失踪から鍵を探すまで1日では無理なんだよね。
書庫の記録のうち、8回は卵を割らなかった。卵を割った2回のうち、1回は事故に近く、もう1回は意図的に。そして両方とも時間制限がかかった。ただ、失踪した王子を探し出した後だったから、あまり問題にならなかった。
昨晩から今朝までのうちに王子の誰かが失踪していればとにかく探してって、そうできるかと思ったけど……。」
「皆いるな。」
ケヴィンがあっさりとそう言った。ボク、けっこう深刻に話してるつもりなんだけどさ!
「昨夜は、テレーゼ様にスープを届けた後、もう遅いので明日の朝集まって話しましょうと、それで皆館に戻りました。わたくし、クリスタ様、イザベル様は、挨拶しあって、それぞれ部屋に入りました。」
とシャルロッテ姫がまとめれば、それに答えるように、
「王子の方はディルクから書庫の記録について聞き、その後は私を含めそれぞれ部屋に戻ったはずですが。」
とランベルト王子が残りの王子を見れば。
「僕は部屋に戻りました。その後、神殿側に前回のことについて姫や王子に少々話したと手紙に書き、神殿女官に渡すため一度部屋をでましたが。」とリーンハルト王子。
「俺は、書庫で卵が割れた記録がないか探して、それから部屋に戻った。」とディルク王子。
「割った卵が気になって、もう一度見に行ったんだ。その後はちゃんと部屋に戻ったよ?」とユリウス王子。
「俺はお前に会いに行った。もちろん、知ってるよな?」とケヴィン王子。
知ってるけど、どうしてそれを今ここで言うかな!?もう一度、ジト目で言ってあげるよ。
「何が起こったか、わざわざ教えに来てくれて、ボク、一応感謝しますよ。あんな夜中じゃなければ。」
あ、また、この場に生ぬるい雰囲気がじわっと広がった。ボク、ケヴィンと仲良しとかじゃ全然ないのに!昨日初めて会ったばかりなのに!
「ボクとケヴィンのことはどうでもいいです。とにかく、誰も失踪していないということは。」
するとディルク王子が聞いてきた。
「失踪というのはそもそも、どんな風に起こるんだ?」
「王子の館での注意点、女官からこう言われてない?どの部屋でも行っていいと。」
「……確かにそうだ。つまり、隠し部屋を見つけた王子が失踪者になると?」
「ま、そんな感じだね。」
今度はクリスタ姫が問う。
「失踪した王子が鍵を持っているということは、絶対なのですか?」
「失踪した王子が持っているもののどれかが、鍵になるって感じかな。」
「その鍵を使って、箱庭から出るということでしょうか?」
「鍵穴に差し込むというよりは、ゲームを終わらせるキーアイテムみたいなもの。」
だから。
「ボク、昨晩からずっと考えていたんだ。
卵が割れた以上、王子の失踪と箱庭の鍵がなければこのストーリーは終わらない。結界は修復されないし、箱庭からも出られない。
でも、誰も失踪しなかった。皆ここにいる。
例えば、何とか緊急避難出口を作ってもらい、全員出てリセットのような形にして、もう一度儀式をやり直すか。
あるいは、無理矢理にでも、お芝居みたいに王子失踪を演出して、箱庭の鍵を見つけることができたなら……。」
とボクの見解を話そうとしたところだったのに。
え、何でみんな、ボクを見てるの?
え、何でみんな、顔を見合わせて、肯き合って。
それって、まるで。
いや、そんなはずないよね、ボクが失踪担当みたいな。
「違うよ、失踪するのは王子なんだよ、姫じゃない。」
ケヴィンが相変わらずテーブルに肘をついて、余裕たっぷりに口を開いた。
「エルナ、自分で言っただろ。誰かが似たようなことをしさえすれば、ストーリーは進んでいくってな?」
……ああ、固定概念が!姫は一人でヒロインで主人公で、絶対失踪しない、姫が失踪したらストーリーが成り立たない、という思い込みが。
「仮にそうだったとして、そんな、でも、ボク、鍵なんて持ってないよ?
じゃなくて、鍵を探せばいいのか。それが本当なら、ボクの持ってる何かが鍵なんだから。」
なぜかテレーゼさんが、じっとボクの髪を見ているのに気づいた。そしてリーンハルト王子も。
「例えば、その紫水晶の髪飾り、それということはないでしょうか?」
「僕も、その可能性は十分あると思いますね。」
「じゃ、試してみるか。」
とケヴィンが言えば、ディルク王子が続ける。
「書庫の記録じゃ、やり方がわからなかったが。ここは神殿女官に確認するところか、それとも拾の姫が知っているか?」
「ボク、一応知ってます。」
「夕方までに見つけりゃ、何とかなるんじゃね?」
そのケヴィンの言葉に、小さなざわめきが広がって、姫も王子も立ち上がった。
その様子に、まったくこれだからできる俺様タイプは、なんてボクは思ったけどね。
ボクも立ち上がって、第三館に向かう。
その後を、お姫様たちがおしゃべりをしながらついてきた。
その後を、王子たちがぽつぽつ会話しながらついてくる。
第三館の扉を開ければ、中は昨夜のままのようだった。壊れた卵の残骸と鳥籠が転がっている。
ボクが鳥籠の方を拾い上げれば、ユリウス王子がにっこりと言った。
「あ、やっぱりそれ、変だよね?」
その言葉に、姫と王子が目配せしたり、肯き合ったりしている。
そう、この鳥籠には扉がない。というか、この鳥籠かなり重い。
ふっとそれが、軽くなった。ケヴィンが代わりに、じゃなくてケヴィンに鳥籠を取り上げられた。
「持っててやるから、進めろよ。」
……俺様タイプのはずなのに、そういうところ調子狂う。
「この鳥籠が開けば、それが鍵です。たぶん、近づければ反応すると思います。」
すると、ケヴィンが勝手にボクの髪から紫水晶の飾りを外した。もう、女の子の髪を勝手に触らないでほしいな。なんか恥ずかしいでしょ!
「ほらよ。」
とケヴィンが髪飾りをボクに渡す。
「ひとまず、やってみます。」
皆に見守られるなか、髪飾りを鳥籠に近づければ。
それはゲームと同じように、鳥籠が淡い光で包まれ、そして。
かちゃりと軽い音をたてて、鳥籠が開いた。
それは、誰が最初にしたものだったのか。
いつの間にか皆が手をたたいて。拍手の音が広がって。
上手くいって良かったと、お互いねぎらい合うような嬉しさが広がっていた。
鍵が見つかったのは喜ばしいことだと思うけど、ボクは驚いてしまった。
その拍手は、ボクにも向かっていたから。思わず、なぜかケヴィンを見上げてしまったら。
「当然だろ。」
ケヴィンはひとこと、そう言った。まるで、俺のエルナならできるだろうとでも言いたげに。そこ、俺のじゃないからね。
ついでなのか何なのか、ケヴィンがボクに聞く。
「エルナ、なぜ引きこもってた?」
すっと場が静まり返る。え、皆そんなに知りたい?たいした理由じゃないよ?
「書庫の記録をできるだけ読んでみるため、これがまず一つ。
もう一つは、ボクが儀式とよく似たゲームを知っていることで、かえってイレギュラーなことが起きるのを、あるいは起こしてしまうのを避けるため。それに、」
ボクは言おうとした言葉を飲み込んだ。人に、誰にも会いたくなかったなんて言うのもね。ちょっとヘンだよね。だからごまかすためにこう続けた。
「神殿の方には、このあたりの事情を話してるよ。でね、もし今までと違った儀式の進行状況になった場合は、ボクに任せた方がいいかもって、そんな話も出たんだけど。結局、ぎりぎりな感じだね?」
ボクが苦笑して見せれば、イザベル姫が言った。
「あら、今のところ問題ないのではなくて?」
「順調ですね。」とクリスタ姫。
「私は、いろいろすごいと思います。」とテレーゼさん。
シャルロッテ姫は微笑み、そして皆を見回した。
「この場合、どの姫と王子が卵を孵すのか、孵すことにするのか、それについて話し合った方が良いかもしれません。
本来ならば、1組の姫と王子が卵を孵すことになりますが、今回は皆で必要な条件を行っていますから。時間が許せばですが。」
とりあえずボクは答える。
「卵を孵すのに選べるシチュエーションはね。
夜、月光の差し込む第三館ホール。これ良いんだ、神秘的で神聖な感じがするの。
早朝の四阿、蔓薔薇の小道、噴水。朝もやがかかって幻想的なんだよね、こっちも捨てがたい。
あとは夕暮れ時のガーデン中央広場。
時間的に、夕方のガーデンで試してみる感じかな。」
そしてボクたちはまた、ぞろぞろとガーデンのテーブルに戻ることになった。
お姫様たちは、シャルロッテ姫を中心におしゃべりしている。
王子たちは、適当になんだかんだと会話している。
ボクはというと、お姫様のほうに引き入れられた。でもボク、国どうしの駆け引きとか、そういうのはさっぱりだよ?
とか言ってるうちに、シャルロッテ姫がランベルト王子に何かお願いし、ランベルト王子はそれならと王子皆を引き連れて、どこかに行ってしまった。ボク、ちょっとよく分からないな。
休日で女官のいないガーデンにボクたちが座っていると、そこに王子たちがトレイにポットやカップ、小さな焼き菓子も乗せてやって来た。
シャルロッテ姫がテーブルセッティングをして、人数分お茶を淹れる。
皆席について、思い思いにお茶を飲み、おしゃべりをして、焼き菓子をつまんで、一息ついたところで。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます