帰宅
「たぁっだいまぁ!」
扉を勢いよく開け、ツクヨミはソファーに飛び込んだ
「はぁ〜、ここが極楽浄土かぁ〜」
「先に風呂入れよ」
くつろぎ散らかしてるツクヨミを鋭く突き刺すように陽真は現実を突き刺す
「いーやーだー!私はこのソファを夫にするのぉ!」
「はいはい、さっさと風呂入れー」
「ちぇー」
2人が生産性のない会話を続けていると
ガタン!
風呂場の方から音が聞こえた
「え、なに?」
ツクヨミが風呂場の前へと駆けつけた
そして、一息ついた後に扉を開けた
開いた扉の先にはタオルを巻いた一人の女性がいた
「か、
「ん?あーおかえり」
「おかえりじゃないよ!なんでいるのさ!」
加奈と呼ばれた黒髪の女性とツクヨミが話していると後ろから陽真が顔を出した
「とりあえず服を着てください。話はそこからです」
3分後
「さて、なんの用ですか?」
服を着終えた
「えーっと、まずは陽真、ツクヨミお疲れ様。今回の依頼はかなり急なものだったけど、早期解決に感謝するわ」
「えっへん!」
加奈がそう言うとツクヨミが自慢げに胸を張った
「お前は勝手に突っ込んでっただけだろ」
「うぐっ!」
胸を張ったツクヨミを事実で突き刺した
「それはともかく、解決をしてくれたことに関してはとても助かった。
おかげで尻尾がつかめそうだった」
「だった?」
加奈は過去形で答えた
「...あなた達が捕まえた二人の男。身元特定して情報を吐かせたの」
「え!?尋問しちゃったの!?」
ツクヨミが突然立ち上がり驚いた口調で言った
「ツクヨミ、冷蔵庫に入ってるプリン食っていいから黙っとけ」
「わーい!!」
陽真は立ち上がったツクヨミを餌付けするように冷蔵庫に向かわせた
「それで?その吐かせた情報とは?」
「……無かったのよ」
「無かった?嘘の情報を嚙まされたとか?」
「私もそう思ってもう一度尋問しようと思ったら」
「消えていたのよ……二人の男も……」
加奈は真剣な顔で答えた
どうやらふざけているわけではないようだ
「消えた?」
「そう、跡形もなく」
「魔法を使った痕跡は?」
「無かった.....まるで最初からいなかったみたいに」
少しの間、考えていた陽真に本題を示すように加奈が切り出した
「でも、進展が無いわけじゃないの。これを見て」
そう言ってタブレット端末に写った文章を見せた
「これは.....古文?」
「を、元にした暗号。それでね、これを解読したら一つの住所が割れたの」
タブレット端末をスワイプして住所を見せた
その住所とは、都内の海沿いに属する区間だった
しかし
「この住所って.....海の上じゃ?」
「そう思うでしょ?でもね、ここには学校があるの」
「学校?海の上に?随分と変わった学校ですね」
「違うのよ、ここは急遽埋め立てられて出来た土地」
「確かに特殊な学校ですが.....そんな暗号から出でくるほどです?」
「ここはね、魔法を専科とした学校であり、魔法学者の研究拠点でもある
陽真は背筋が薄ら凍った
「えぇっと.....猛烈に嫌な予感がするんですけど.....」
「あら?嬉しい報告の間違いじゃないかしら?」
腹を括ったように陽真は答えた
「つまり、この学校に行ってこいと?」
「惜しい、正確には通ってこいだね」
嫌な予感は的中してしまった
陽真は落胆するように机に伏せた
「ちょうどいいじゃない。本来味わうことのなかった青春を噛み締めて来なさい」
「はァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」
伏せたままの陽真が机に向かってため息を吐いていると
「え!?なになに?陽真学校行くの!?」
プリンを食べるために退席していたツクヨミが帰ってきた
「そうよ、陽真ったらこんなに嬉しそうにしてるのよ」
「これが嬉しんでるように見えるんならあんた重症だよ」
机と一体化した陽真が加奈にツッコミを入れると
「行く!私も行く!」
意気揚々と手を挙げながらツクヨミが叫んだ
「やめてくれ.....ただでさえ学校って単語だけで頭が痛いってのにお前の子守りも増えるとか頭が無くなる」
「は、なんだと?この私か子どもだとでも言いたいのか?」
「そう言ったはずだが聞こえなかったのか?」
「はいはい、そこでおしまい」
睨み合う2人をなだめるように加奈が仲裁に入った
「あ、そうそう制服はこのダンボールの中に入ってるからねー」
「なんで行く前提で来てるんだよォ」
これは、魔法が扱える世界で密かに平和を保つ少年の
甘く、哀しく、美しいお話である
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