第51話 癖の強いトーク
その後は似たような歌詞を歌って、ようやく一曲が終わった。
ここで、ルピーは「みなさーーん! 来てくれてありがとーーー!」とあざとさマックスの声で叫んでいた。
もちろん、大歓迎の声援で応える観客。
「『オールシーズフェアリー』のリーダー、ルピーでーーーす!! 今日は思う存分楽しもうね!」
彼女はそう言うと、観客は「ウォオオオオ!!!」と雄叫びに近い声を上げながら腕を振り上げた。
すると、ルピーに変わって、カールという名前をした黄色の子が喋り出した。
「皆様、ご機嫌よう! カールですわ〜〜〜!!!
こんなにも大勢のファンの方達がわたくし達の公演を観に来てくださるなんて、とても嬉しいですわ!
どうぞ最後までお楽しみくださいませ〜〜!!」
何ともお嬢様感の強い話し方をする彼女の挨拶が終わると、パーカという青髪の子が口を開いた。
「皆様、あの……えっと……こんにちは。ぼ、僕は……パーカです。
その、あの、えっと、あの、その……よ、よろしく……です」
随分緊張しているようで、逃げるように紫色の子の背中に隠れた。
すると、観客の中の誰かが「頑張れーー!!」と叫んだ。
それを合図に所々から「ファイトーー!!」「負けるなーー!!」と声が上がった。
「ほら、頑張るでござる!」
紫色の子がパーカを励ますと、彼女はゆっくりと前に出た。
「ご、ぼ、僕も一生懸命頑張るので、どうか帰らないでくださいです! 以上です!」
『くださいです』という奇妙な丁寧語を言って頭を下げると、観客達は「頑張った!」「かわいいよーーー!!」とまるで英雄みたいに称えていた。
いや、さっき堂々と歌ってなかったっけ?
なんて疑問をよそに、次はセミノールというオレンジ色の子にバトンタッチされた。
いや、よく見たらけっこう歳とってるぞ。
「みんな! こんにちは! セミノールだぜ! 今日はたくさん可愛い子猫ちゃん達が来てくれて嬉しいぜ!
もし俺様の事を初めて知ったという方も、別の推しがいるという方も今日で俺様の虜にしてやるから、覚悟するんだぜ!」
やたらダゼダゼうるさい彼女がウインクをすると、また黄色い声援が上がっていた。
あんなのがカッコイイのか。
チャーム王子の方が百倍くらいカッコイイと思うけど。
でも、ウインクはいいな……再会できたらお願いしてやって貰おうっと。
なんて事を思っていると、セミノールの挨拶が終わった。
そして、オギンと呼ばれていた紫の子が喋り出した。
「最後は
拙者、オギンでござる! 今回もこんなにたくさんの方に来てくれて嬉しいでござる!
今日は名曲揃いの歌や新曲もあるので、ぜひ最後までお楽しみ申し上げまする! とっぴんぱらりのぷう!」
なになになに?! 何か呪文みたいなのを言ったぞ、今。
何かこの人達は語尾に『だぜ』とか『ござる』とかインパクトのある単語を足して喋るのが流行っているのだろうか。
それとも単純に生活環境で自然とそういう口調になったのか。
オギンの挨拶が終わって、再びルピーの番になった。
「それじゃあ、次の曲聞いてくださーーい! 『濃い濃い濃くて濃い恋』」
お前は普通に喋るんかい。
いや、その言い方だと語尾クセの強い彼女達がおかしいじゃないって事に……違和感あるのは確かだけど。
二曲目はコイコイうるさかったが、観客達は熱狂していた。
曲が終わると、また彼女達の話が始まり、再び歌を披露して、トークをするといった感じだった。
隣にいるポーイは終始叫んだり号泣したりと、感情の入れ替わりが激しかった。
それに対して、ロリンは静かに手拍子をしていた。
表情を見ると、微笑していたが心の底から楽しんでいない様子だった。
あまりこのコンサートに興味がないか、それともルピーの事について何か思う所があるのかは分からなかった。
たぶん後者だと思うけど。
そんなこんなでコンサートが終わり、ルピー達が観客達に何度も手を振って別れを告げると、袖の方に消えていった。
すると、舞台上に白い鎧達が現れて、出入り口に向かう際は譲り合うようにという注意をしつこいぐらいに叫んでいた。
観客達は満足したのか、素直に従い、それほどギュウギュウにならずに外に出る事ができた。
「ふわはぁぁぁぁ……感、動……」
ポーイは余程楽しかったのか、成仏しそうな顔をして余韻に浸っていた。
「じゃあ、約束通り、地図屋に案内して」
私が彼にそう命じると、ポーイは「ふわーい、こちられふ……」と夢見心地な声でフワフワと進んだ。
大丈夫かな、こいつ。
町中を歩いていると、日が落ちてきた。
夕焼けが高い塔に照らされて、建物の上部分が幻想的なグラデーションに染まっていた。
どこからか、子守唄みたいな音色が流れていた。
「五時半になりました……子供達は速やかに……お家に帰りましょう」
なるほど、時刻を知らせてくれるのね。
でも、どうやってるんだろう。
辺りを見渡してみると、ネズミ色の木に四角い箱みたいなのがぶら下がっていた。
そこの下に行ってみると、あの音色が近くに聞こえてきたので、ここから音源が流れているのかと分かった。
夕暮れになると、街並みも変わっていって、リュックを背負った子供達は友達と楽しそうに話しながら歩いていた。
黒で統一された服の男女が袋にパンパンに入れた食材を持ちながら今日の晩御飯の話をしていた。
不思議だなと思った。
昼間は目まぐるしく
ピグマーリオとはまた違った趣きだ。
そんな事を考えていると、カップルと思われる若い二人がイチャイチャしながら明日のカダイ(学校の課題のこと?)について話していた。
私の横を通り過ぎた時、ふと二人が手を握っている事に気づいた。
立ち止まって、彼らの背中を見つめているうちに、二人が私とチャーム王子の写し身みたいに見えた。
いいなぁ、私もあんな風に手を繋いで歩きたいよ。
あれ? 前にもこんな想いをした事あったっけ。
いや、気のせいか。
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