第41話 新たなる場所へ
「末っ子ぉおおおおおおお!!!」
すると、鏡にムーニーが狼の魔機に乗りながらこっちに向かっているのが見えた。
「止めて! ムーニーが来ている!」
私がそう言うと、ロリンは「え?!」と慌てた様子で急停止させた。
その反動で頭がグンと背後から押されたような感覚がした。
固定されていなかったら、本当に突っ込む所だった。
縄が自動的に解除され、私は馬なし馬車から降りた。
ムーニーはすぐ近くまで来ていた。
彼女は狼の魔機からピョンと降りると、「私にさよならも言わないまま行くなんて酷いじゃない」とムッとした顔で近づいてきた。
もちろんロリンも外に出て、彼女の元へ駆け寄った。
「ムーニー! まだ寝てないと……」
「大丈夫よ。私を誰だと思ってるの? 『天才』ムーニーはそう簡単にくたばらないわ!」
ムーニーはドンッと胸を叩いたが、少しだけよろめいた。
とっさに受け止めようとしたが、「本当に平気よ」と体勢を立て直した。
「それよりもあなた達に渡したいものがあるの」
ムーニーはそう言って、半ズボンのポケットから封筒を取り出した。
受け取って開けてみると、中には二枚の淡いピンク色の紙が入っていた。
しかし、何も書いていなかった。
「何これ?」
私が聞くと、ムーニーは「絶対に無くさないで。カートゥシティって所で必要になってくるから」と紙が何なのかは言わずに使用する場所だけを教えてくれた。
カートゥシティ……また知らない場所に行く事になるのか。
「そこには何があるの?」
この質問にムーニーはニヤッと笑った。
「行けば分かるわよ」
その笑みに私は物凄く不安になった。
こいつ、私をハメようとしているのか?
すると、ムーニーが急に「アハハハッ!」と甲高い声で笑った。
「そんな捕食されるネズミみたいな顔をしないでよ! あなたが思ってるほど危険な所じゃないから!」
ムーニーはそう言うと、突然真面目な顔になった。
「……頑張って」
そう言って、私に――ではなく、ロリンに抱きついた。
「ロリンお姉ちゃーーーん! 寂しいよーーー!!!」
ムーニーは甘えた声で頭を擦りつけていた。
ロリンは姉らしい大人びた微笑をしながら「甘えん坊さんね」と頭を撫でていた。
何だこれ。
今、何の時間なのだろう。
まぁ、恐らくロリンと離れるのが名残惜しいからスキンシップが欲しかったのだろう。
本当にロリンラブなんだな。
なんて事を思っていると、満足したのかムーニーはロリンから離れた。
「いつまでも引き留めてちゃいけないよね……じゃあね!」
ムーニーはそう言って、親指を立てた。
私とロリンも同じようなポーズをした後、再び馬なし馬車に乗って走り出した。
チラッと飛び出た鏡を見てみると、ムーニーが物寂しそうな表情をしているのが見えた。
「お姉様に負けるなーーー! メターーー!!!」
いきなりムーニーが叫んだかと思いきや、狼の魔機に乗って、背を向けて走り出してしまった。
……ん? あいつ、私のこと『末っ子』じゃなくて『メタ』って言わなかった?
うーん……気のせいか。
ムーニーと別れてから一時間ぐらい経った。
不毛の地から徐々に緑が戻っていくのが分かった。
少しすると木や草花がそこら中に生えてきた。
ピグマーリオもこんな風に緑でいっぱいになるといいなと思いながら久しぶりの緑の景色を堪能した。
道中、舗装されていない場所があって、車内がガタガタ揺れて吐きそうになったが、酔い止めのポーションを食べたおかげで、胃の中のものをリバースせずに済んだ。
ちなみに酔い止めポーションは酸っぱい梅だった。
「それにしてもこの馬なし馬車、全然補給とかしなくていいのね」
私は隣にいるロリンにこの車の事について聞いてみた。
ロリンは円型のハンドルを握りながら「ガスから太陽光に変えたの」と答えた。
「タイヨウコウ?」
「太陽からの光よ。上に貼り付けてある板がその光を吸収してエネルギーに変換させるの」
ふーん、なんかよく分からないけど、前の車に比べて燃費が良くなったってことね。
「じゃあ、カートゥシティまでどれくらいかかるの?」
私の質問にロリンは「ちょっと待ってて」とハンドルの近くにあるボタンを押した。
すると、前方に無機質な壁からクルッと回転して真っ黒い板が現れた。
それが急に光り出したかと思えば、『ご用件はなんでしょうか?』と白い文字が出てきた。
これを見た時、なんか見覚えがあるなと思った。
真っ黒い板、白い文字……あっ!
ムーニーが持っていた道案内してくれる機械だ!
それが馬なし馬車に入れ込まれたってことなの?
私がそう考えていると、ロリンは口頭でカートゥシティの経路を教えて欲しいと頼んだ。
『かしこまりました』
白い文字でそう言うと、『検索中』と出た後、『直進』とだけ表示された。
地図みたいなのが出てくる訳じゃないんだ。
「これって、どのくらいかかるかも搭載されているの?」
「うん、口で質問してくれたら教えてくれるよ」
ロリンはそう言ってくれたので、私は「カートゥシティまでどれくらいかかるの?」と聞いてみた。
『教える訳ねぇだろ。バーカ』
いきなりこの文字が現れたので、反射的に画面を叩き割りそうになったが、グッと堪えた。
この機能、絶対にムーニーが作ったな。
「ロリン、私だと生意気な態度で教えてくれないから、あなたが答えて」
私はロリンにそう頼むと、彼女は「え? あぁ、うん」と若干困惑した感じで時間を聞いてみた。
すると、『現在地からカートゥシティまでおよそ二時間くらいかかります♡』とご丁寧にハートマークも添えて答えていた。
こいつ、本当に人を選んでいるな。
なんかこの道案内に一言二言ぶつけてやろうかなと思ったけど、自動的に固定させた縄が解除されて、走行中に投げ捨てられる機能があったら嫌なので黙っている事にした。
↓宣伝の妖精からのお知らせ
皆さん、こんにちは。
チュピタンです。
えー、前回はまさかの分身が救世主的な立場になってしまったんですけど……よくよく考えてみたら、分身が救世主になった事であらゆる注目が分身にいく訳で……。
つまり、何が言いたいのかといいますと……オリジナルの私はこれでもうあらゆる脅威に怯えなくて済むんです!
やったーーーー!!!
これでもうビクビクしながら逃げなくてすむ!
やったね!
気分がいいので、宣伝させていただきます!
皆さんはこの作品のフォローはお済みでしょうか?
もしまだの方がいらしたら、ぜひご登録をお願いします!
またもしこの作品を面白いと思ってくださったら、ぜひ星とハートをください!
次に行く場所が決まりましたね!
カートゥシティ……いったいどのような所で、そこではどんな事が待っているのか……楽しみです!
では、また次回ぐむむむむむむ!!!
ぐっ、ふっ……ガクッ。
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