第42話 はめられた?

 案内ボード(私が勝手に名付けた)が言っていた事は本当で、休憩を挟みながら二時間ほど走っていると、何やら見られない建物が見えた。

 いや、見慣れないどころじゃない。

 一瞬お城かなと思うくらい高い建物が何個も見えたからだ。

 私とロリンは一旦車を止めた。

 小高い山の中腹辺りの開けた場所だったので、景色がよく見えた。

 さらに詳しく見るために遠くのものがよく見えるポーションを久しぶりに食べた後、観察する事にした。

 そこは辺り一面家だらけだった。

 城壁とかは存在せず、右を向けば家、左を向けば家と花畑か田んぼみたいに建物がびっしり並んでいた。

 一際目立つのが塔だった。

 いや、塔と言ってもいいのだろうか。

 見た目が完全に石やレンガではない素材で何十メートルはありそうな塔が何基もあって、それが転々と建てられている。

 特に目立つのが、真っ白な塔で他のよりも群を抜いて高かった。

 視覚的には山よりも高そうで、それぐらい高いと風に煽られて倒れるのではないかなと思ったが、全然揺れてもいなかった。

 あと、ビックリするぐらい人が多い。

 まるでアリみたいにウジャウジャいて、一瞬鳥肌が立ったくらいだった。

 けど、彼らの近くで何かが浮かんでいた。

 何だろう……見た目はドラゴンの赤ちゃんっぽいけど。

「ねぇ、ここは一体何なの?」

 ロリンに聞いてみると、彼女はウーンと唸った後、「どうやら他の国に比べて異色の文化があるみたいだね」と返した。

(行って大丈夫かな)

 一瞬そう不安に駆られたが、ムーニーに渡された何も書いていない紙も気になるし、とりあえず行ってみる事にした。

 馬なし馬車は前のと同様、小さな箱に変形できるらしく、ロリンのリュックに閉まった後、歩き出した。

 今度は透明化のポーションは使わずに堂々と歩いてみた。

 山から降りると、早速建物が見えた。

 四角形をジグザクしたような見た目で、窓も不規則に取り付けられていた。

 その手前には立て看板があり、『入国したい方は中へ』と書かれていた。

 どうやらここは関所らしい。

 私とロリンはそれに従って進んでいき、勝手に開いたドアに驚きつつも中に入った。

 関所の中は天井が高いが、幅はそんなになく、代わりに奥行きが深かった。

 どうやら細長い作りになっているらしい。

 それに何故かこの中に入った途端、身体が爽快になるくらい涼しくなった。

 換気が行き届いているのかなと思って窓を見てみると、ピッタリと閉じられていた。

 閉まっているのにこの涼しさは、どこか馬なし馬車の前方から送られてくる風を思い出させた。

 なんて事を思いながら、今度は関所内を見てみた。

 私達以外にも入国する人達が列を成していた。

 荷車に大きな荷物を背負っている商人らしき男やきらびやかな格好をしてしゃなりしゃなりと動いている妖艶な女性もいた。

 一体彼らはどのような目的でこの国に入るのか気になるが、それよりも奇妙な鎧を着ている人達に注目せずにはいられなかった。

 随分光沢感のある真っ白な鎧を頭から足の爪先まで肌の露出を完全に無くした格好の人達が、入国する人達の手荷物を見慣れない道具で検査をしていた。

 ライトのような光を放つ棒状のもので荷物にあてた後、モニターに表示される絵を見ていた。

 そして、ジッと確認した後、「行ってよし」と言って通していた。

 ピグマーリオの居眠り門番とは比べ物にならないくらい厳重である事は何となく分かった。

「次の方、どうぞ」

 凛とした声の人に言われて、私は何となく周りの人達の様子を見ながら白い鎧の前に立った。

「初めてですか?」

 開口一番にそう言われたので、私は「え? まぁ、はい」と別に悪い事もしにきた訳でもないのにドギマギしながら答えた。

「やはり、そうでしたか。入国審査に慣れていない御様子だったので……あまり外国には行かれないですか?」

「え、えぇ……まぁ、というか、一回ある国に行ったんですけど、けっこう緩めな感じだったので……」

「ほぅ、それはどんな国ですか?」

 白い鎧の声が鋭くなった。

 何かまずい事でも言ってしまったのだろうか。

 いや、ここで狼狽えたらますます怪しまれてしまう。

「ピグマーリオという国です」

「ピグマーリオ?」

 白い鎧が首を傾げていた。

 え? まさか知らないの?

 すると、そこへ大柄の赤い鎧がやってきた。

 赤の鎧もいるんだ。

「どうした?」

「いえ、こちらの方がピグマーリオから来たと申しているのですが……」

「ピグマーリオ? 知らんな……ちょっと待ってて」

 赤い鎧は本みたいなものを取り出して、指先を押し当てたりしていた。

「ピグマーリオ、ピグマーリオ……おっ、あった。山の向こうにある所か……なに? おいおい、この国……とっくに無くなってるぞ」

「え?」

 そんな馬鹿な。

 あそこには人形達と職人とムーニーがいるはず……あっ。

 そういえばあの国では、魔機を製造していたっけ。

 あんな国を巻き込んで兵器を作っている事を他国に知られたらどう思うだろうか。

 もちろん、魔機を買う国だったら良いけど、全てが欲しいと思っている訳じゃない。

 ましてや、この国は恐らく他国から来る危険物(武器など)にかなり警戒していると考えられる。

 そんな国の近くで堂々と魔機を作るためには、ピグマーリオそのものを無くした方がやりやすいはずだ。

 クソッ、ムーニーのやつ、はめやがったな。

 私達の事を逃がすと見せかけて、この厳重な警備に引っかからせて捕まらせるつもりだったんだ。

「すみません、手荷物をチェックさせてもらえませんか?」

 赤と白い鎧が訝しむ声で聞いてきた。

 ここは無理に逃げ出さず、素直に手渡そう。

 ハイと言ってポシェットを渡していると、隣から言い争う声がした。

 チラッと見てみると、ロリンが白い鎧にリュックの中身を一つ一つ取り出しながら質問攻めを受けていた。


↓宣伝の妖精からのお知らせ

……皆さん、こんにちは。

あ、あの……こんな小声ですみません。

えっと……今、目が覚めたら地下?みたいな所にいるんですけど……。


なんか私以外にも人がいるんですが、見たことない格好をしています。


みんな不安そうな顔をしています……。


な、何かが起こる前に先に宣伝しておきますね。


皆さんはこの作品のフォローはお済みでしょうか?

もしまだの方がいらしたら、ぜひ登録してください。


またこの作品が少しでも面白いと思ってくださったら、ぜひ星とハートをください。


感想は……ん?


なんか、小人みたいなのが現れました。


『パンパカパーーン♪ パンパンパンパ、パンパカパーン♪』

『皆様、よくぞ集ってくれたね☆』

『これから楽しい楽しいゲームを始めるよ☆』

『ルールは超簡単☆ ぼくが背を向けて10までの数字を言い終えるまでに動かずに立っていた人が優勝だよ☆』

『それ以外はゲームオーバー☆ とてつもない罰がくだるよ☆』

『では、スタート☆』

『いーーち、にぃーー……』

 

なるほど、これは分かりました!

つまり、あの小人が数えている間にダッシュで背中にタッチしたらオーケーというゲームなんですね!

よーし、やって……うげ、いつの間にかみんなすぐ近くまで。

わ、わたしも急が……。


「じゅう!」

 

ブシャアアアアアアアン!!!


……え? え? みんな頭吹っ飛んで、バタバタ倒れちゃったんだけど……。


『ハハハハハ!! 全員ゲームオーバ……チッ、まだいたのか。

 えっ?! しかもよりによってアイツが生き残るなんて……クソッ!』

『で、でも、ルールはルールだ。うん……お、おめでとーございます……つ、次のステージへどうぞ』


えぇ、まだあるの?!

でも、まぁ、こうなってしまった以上、頑張るしかないか!


それにしてもあの小人……どこかで見た事あるような……。

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