第35話 人形の作り方

 ムーニーと一緒に教会の一番下まで降りて外に出ると、ロリンの他に人形達が集まっていた。

 その中にはいつの間にか目覚めていたティーロとティーマス、あとはティーナもいた。

「このクソ野郎!!」

 ティーマスがムーニーを見るや否や、鞘から剣を抜いて斬りかかろうとしていた。

「待って! ちょっと落ち着いて!」

 私がムーニーの前に立って制すと、ティーマスは「どうして奴の味方をするんですか?」と目を丸くしていた。

「そうですよ。どうしたんですか?」

 ティーナも困惑した様子で尋ねると、私はムーニーに「自分の口から説明して」と囁いた。

 ムーニーは俯きながらゆっくり前に出ると、「ごめんなさい!」と頭を下げた。

「今まであなた達にどんな酷い事をしてきたか……謝っても許されないのは分かっています。

 どうかお願いです! 私に贖罪しょくざいのチャンスをください!」

 ムーニーは普段の生意気な雰囲気とは打って変わって、丁寧な口調で謝罪の言葉を述べた。

 が、辺りはシンと静まっていた。

 やはり、今まで好き放題に悪行を重ねてきた相手に許してくれと頼んでも無駄だったか――と思っていた時。

「やっとお前の本音が聞けた」

 ティーロがツカツカと彼女の近くまでやってきた。

「ティーロさん、彼女を許すんですか?! こいつは私達の平和を汚したんですよ!」

 ティーマスがそう叫ぶと、「そうだ! そうだ!」「処刑させろ!」という声が上がった。

 声のした方をみると、職人達が野次馬の最前列に立っていた。

 皆、怒りで震えていた。

「こいつに毎日ほぼ休みなく奴隷のように働かされてきたんだ!」

「私達が端正込めて作った人形達を改造させるなんて許せる訳がない!」

「首吊りだ! 打ち首だ!」

 職人達から次々と「殺せ! 殺せ!」とコールしていた。

 これにムーニーは顔を俯いたまま震えていた。

 不思議な事にそう叫んでいたのは職人達だけで、他の人形達は怒りを見せないどころか、血気盛んに叫んでいる職人達に怯えているように見えた。

 これにロリンは「周りは賛同してないみたいだけど」と珍しく冷たい口調で言った。

 職人達はようやく周囲との温度差に気づいたが、「これは奴に改造されたからだ!」とあくまで自分の主張を変えようとはしなかった。

「見損なったぞ」

 すると、ティーロが深く溜め息をついて、職人達の方を向いた。

 これにハゲ頭の職人が「ど、どうしてそんな事を言うんだ!」と驚いていた。

 ティーロは「周りをよく見てみろ」と言って話し始めた。

「こいつを処刑した後、一体誰がこの壊れた家や城を直すんだ?

 お前らか? それとも人形達おれたちか?

 一体どれくらいかかるんだろうなぁ。

 10年、20年……いや、もっとかもしれない。

 もし彼女を生かしておけば復興が早く終わる……そうだろ?」

 ティーロにそう言うと、ムーニーはハッと顔を上げた。

「そう……そうです! 私の技術力があれば一ヶ月で終わります!

 それにそれだけではないんです!

 この国の周辺に水と温泉があります!

 それをもっと有効活用すれば、周りは緑で生い茂る素晴らしい国になるはずです!

 お願いします! 私も復興の協力をさせてください!」

 ムーニーは必死にそう言った後、また頭を下げた。

 すると、職人達の雰囲気がさっきまでとはガラッと変わった。

「温泉……温泉って言ったか?」

「嘘でしょ、この不毛の地にそんなのがあるの?」

「しかも、水が出たんだって!」

「じゃあ、食料も輸入に頼らずに出来るってこと?!」

 職人達は少しの間、ザワザワした後、ハゲ頭の職人が「ちゃんと罪を償う気持ちがあるのなら、処刑は撤回し復興の協力に尽力じんりょくしてもらうぞ」と言った。

 これにムーニーは「ありがとうございます!」と何度も頭を下げてお礼を言った。

「さて、お前はどうする?」

 ティーロが未だに剣を構えている剣士に言うと、ティーマスはチラッと王女を見た。

 ティーナは静かに首を振ったので、彼は舌打ちをして剣を収めた。

「すぐにでも不審な動きをしたら即刻斬るからな!」

 そう言って足早に去っていった。

 私はロリンと顔を見合わせた。

 彼女は親指を立てて、私の行動に称賛してくれていた。

 これを見た私は何だか力が抜けてしまって、ハァと長く息をついた。

 これで、何もかも全てが終わった。


 ムーニーはすぐにこの国の復興の準備に取り掛かった。

 城の瓦礫の中で埋まっていた魔物ロボットを危害を加えないように改造して、人と人形だけでは苦労しそうな重たいものを運んだり、どかしたりした。

 また、家屋の中に埋まっている人がいないか捜索するために、小型のネズミみたいなロボットを作って瓦礫の隙間から入って、もし見つかったら大型のロボットを使って持ち運んで救出していた。

 これには半信半疑だった職人達も嬉しそうな顔をしていた。


 職人達はムーニーによって改造させられた人形達を元に戻していた。

 一度改造させられたもの達を元に戻す事はできるのか疑問だったが、新しく作った人形に「シシ」と唱えると、人形の身体から魂みたいな光の球が出てきた。

 それがスゥと新しい身体に入っていくと、目が覚めて動けるようになった。

 職人は魔法使いなのだろうか。

 私は気になって聞いてみると、職人の一人が少し違うと話してくれた。

「俺達は死んだ魂を入れているんだ。魂を呼び寄せて人形に宿す。

 すると、彼らは前世の記憶は忘れて新しい自分に生まれ変わるんだ。

 ただし、赤ちゃんみたいになるのではなく、ある程度の知識は残る。その加減は俺達職人の腕の見せ所だ」

「じゃあ、あなた達は黒魔術師なの?」

 私がそう聞くと、職人は「いや」と首を振った。

「あいつらは悪魔や魔物と協力して魔法を使うが、俺らは呪文だけ代々引き継がれて来たんだ」

「じゃあ、ご先祖様は黒魔術師?」

「うーん……それはよく分からない。俺のお婆さんよりも前から受け継がれて来たから……もしかしたらそうかもしれない」

 つまり、どういう経緯で入手したかは不明だけど、死霊を操る呪文は継承されてきたと。

 どうやら職人達は村みたいな密接した繋がりがあるらしい。

 考えれば考えるほどチンプンカンプンだけど、今は別にいいか。

 職人の話は本当で、新しい身体になった人形達はムーニーに改造させられた時の記憶は失っていた。

 彼らはどうして町が悲惨になっているのか驚いた様子だった。

 これを見た私はワザワザ人形に戻す必要はあるのかなと疑問に思った。

 ティーナが言ったように人形より人間が素晴らしいとは思わない。

 だけど、彼らは幸せそうだった。

 『改造』ではなく『進化』と捉えていたら、こんな事をすることはなかったはず。

 だけど、職人達がしてしまったのなら、仕方ない。

 部外者の私が言っても効果はないだろう。

 恐らく全員戻すつもりだろうが、このペースだと一ヶ月もしないうちに元の人形に戻るだろう。

 なんだかなぁ。



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メタちゃん達も一緒に手伝っているようですし……もし、あのまま旅立ったら好感度爆下がりですよ!


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まぁ、私が宇宙で困っている生命体を全滅させてくれたお礼で、パーティーを開いてくれているようですが……。


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それじゃあ、バーーーイ!!

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