第36話 王子様の居場所

 ティーロとティーマス達は早速王国の外にある水と源泉を確かめに行った。

 実際にある事が確認させると、今後これをどう有効活用させるかを話し合っていた。

 ティーナはムーニーに頭と胴体が離れないように直してくれた。

 そのおかげか、前よりも倍くらいに動けるようになり、魔物ロボットにもテキパキと瓦礫を運んだりしていた。


 そういえば、一つ気になる事があった。

 城の残骸には恐らく工場にいたであろう魔物ロボットの残骸が出てきたが、黒い騎士がどこにも見つからないのだ。

 彼は確か牢屋に閉じ込めておいたから、城の下敷きになっているはずなのに。

 ロリン曰く自分が出ていった時はまだいたらしい。

 見つからないほどバラバラになったか、自力で脱出したか……気になるけど、今は関係ないか。


 私とロリンは屋根の修理に取り掛かった。

 城から落下した時に大穴を開けてしまった民家だ。

 私が城の瓦礫から使えそうな板を運んで、ロリンに渡すと、彼女はトンカチを巧みに使って板を貼り付けて――と連携して作業を進めたので、予定より早く終わらせる事ができた。

 もちろん、壊れた家具も使えそうなものは使って新品同様にして返した。

「本当にごめんなさい」

 私が改めて家の持ち主達に謝罪すると、若い男の人形は「いや、いいんだ」と許してくれた。

 それよりも私が出した雪をまた家の中に降らしてほしいとお願いをしてきた。

 人形達はどうやら雪が好きらしい。

 私はロリンから雪のポーションをもらって、彼らの家の中に雪を積もらせた。

 二人は喜んで子供みたいに遊んでいた。

 けど、これから職人達に記憶を消されてしまうと考えると……なんだか複雑な気持ちになった。


 さて、いつまでもピグマーリオにいる訳にはいかない。

 そろそろ旅立ちたい所だけど、まだムーニーに肝心の王子様の居場所を教えてもらっていないので、聞きに行く事にした。

 ムーニーは城の跡地にいた。

 瓦礫を運んでいる魔物ロボットにアレコレ指示していた。

「ムーーニーー!」

 ロリンが大声で呼ぶと、彼女の表情がたちまち晴れやかになった。

「ロリンお姉ちゃ……お姉様!」

 ムーニーはわざわざロリンの呼び方を訂正した後、パフパフとサイズの合っていない靴の音を鳴らしながら駆け寄ってきた。

「どうしたの?」

「王子様の居場所を教えてほしいのよ」

 ロリンがそう聞くと、少しだけ暗い顔をした。

「そっか……本当に助けに行くんだね」

 ムーニーが大きく溜め息をついた。

 いや、本当も何も。

 そもそもそれが目的だし。

 私がそう反論したかったが、変にへそを曲げて言わないなんて事があったら最悪なので、グッと堪える事にした。

「チャーム王子はロロ・レックウようにいる」

 ムーニーは私達を真っ直ぐ見つめながら言った。

 ロロ・レックウとう――初めて聞く場所だ。

 そこで姉達とのマイホームを作るのか。

「ロリンは知っている?」

 私はロリンの方を向いて聞くと、彼女は眉間に皺を寄せて「……うん」とだけ返した。

「この国からそこまでどれくらいかかるの?」

 私がそう尋ねると、ムーニーは腕を組んで唸った後、「馬車で行ったら一ヶ月以上はかかるかもしれない」と言った。

「はぁああああああ?!」

 私は思わず叫んでしまった。

 一ヶ月以上かかるって……どんだけ遠い所にあるのよ。

 というか、そもそもそんな長距離をどうやって移動させたの?

 結婚式の前日に彼と「明日結婚式楽しみだね」だなんて話をしたのに。

 うーん、ムーニーが作ったドラゴンロボットに乗せて行ったのかな。

 そしたら、一晩で移動できるかもしれない。

 でも、問題はそこじゃない。

 どうやってピグマーリオからその島まで行くかだ。

「ドラゴンロボットはもうないの?」

 私はそう聞いたが、ムーニーは「あなたが壊してくれたおかげで全滅」と首を振った。

「じゃあ、魔機を輸出する際に使ったドラゴンは? あれも壊れちゃったの?」

「よく知っているね……えっと、運搬用のドラゴンちゃんはまだ帰って来てないの。そろそろ帰ってきてもいいんだけど……」

 うーん、空を飛んで最短で行く方法は全滅か。

 ロリンが作った靴はコントロールが難しい上に燃料いるから遠くまで飛べないし、馬なし馬車も燃費が悪すぎて絶望……ん? 待てよ。

 いい事ひらめいちゃった。

「ねぇ、ロリン。あなたの馬なし馬車、けっこう欠陥だらけじゃない?」

 私がそう言うと、しばらく難しい顔をして考えていたロリンが我に返った顔をして「え? なに?」と返事をした。

「馬なし馬車、欠陥だらけじゃない? だから、ムーニーと一緒にどうしたらいいのか見てもらったら?」

「ふぇ?!」

 思わぬ事にムーニーが素っ頓狂な声を上げていた。

 ロリンは手で口元を覆いながら「確かに『天才』に見てもらった方がいいかも」と言ってリュックから長方形の箱を取り出した。

 そして、出っ張りを押すとガチャガチャと変形して、煙突の生えた長方形の車に変わった。

「すごーーーー!!!」

 これにムーニーは目を輝かせて、隅から隅まで飛び跳ねるように見ていた。

 中も確認したが、汗臭かったのだろう。

 若干咳き込んだ後、鼻を摘みながら「どこが駄目なの? 換気扇?」と聞いてきた。

 ロリンは燃費が悪くて長距離移動する際にイチイチ燃料を入れないといけない事や中が暑くなって水着に着替えないと乗車できない事を話した。

 ムーニーは指を鼻から離して頬をかいた後、「燃料は何を使っているの?」と聞いてきた。

 ロリンは「主に失敗した液体ポーションで、それを沸騰させて水蒸気で動かしているの」と答えた。

「どうやって沸騰させているの?」

 ムーニーはすぐさま尋ねると、ロリンは「腐敗した果実や草花とかを使ってガスを溜めているの」と返す。

「なるほど。バイオガスを使っているのね。不純物とかは出ないの」

「黒い塊が出て、そのまま排出している」

「ふーん、そっか……設計図とかないの?」

「あるよ!」

 ロリンはリュックから一枚の紙を取り出して、ムーニーに渡した。

「あぁ、なるほど……そりゃあ、水着を着ないといけなくなるよね。釜の中にいるようなもの」

「やっぱり……じゃあ、どうしたらいいのかな?」

「うーん、そもそもガスを止めて……」

 私には何の事だかサッパリだが、二人はイキイキとした表情で話していた。

 ムーニーは今までにないくらい楽しそうな顔をして、改善点を伝えたりしていて、それをロリンがウンウンと真剣な眼差しで聞いていた。

 それを私は遠巻きに見た後、ぶら下げている事すら忘れていたポシェットの整理を始めた。


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王子様の居場所がようやく分かりましたね!

ピグマーリオから離れた所にありますが……馬なし馬車がどのように改造されるかも気になります!


それでは、次回……はい?

あ、手紙? 私に?

一体誰から……え?!

妖精の国からだ。何だろう。

……うぇえええ?!

よ、妖精王が危篤きとく?!

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