第27話 ヤバイ、このままだと死ぬ

「待ちなさい!」

 私は裸足のまま追いかけようとしたが、回転し過ぎて三半規管が狂ってしまったのだろう、突然視界が歪んだかと思えば、頭の中が揺れた。

「おえ……」

 一気に吐き気が押し寄せてきて、まともに立っている事もできずに、その場で倒れてしまった。

 あぁ、追いかけなきゃいけないのに、気持ち悪くて動けない。

 心臓は高鳴り、耳鳴りも聞こえてきた。

 三ツ頭みつがしら対策用に作った剣と火のポーションを組み合わせた策によって得られた勝利の代償は大きかった。

 私は暫くの間、動けずにいると、どこかで地響きが聞こえてきた。

 いや、地面が揺れているだけじゃない。

 この部屋全体がまるで巨人が箱を持って動かしているかのようにグラグラと揺れているのだ。

 天井から瓦礫の欠片や埃が落ちてきたり、地面にヒビが割れ始めたりしていた。

 あいつ、この部屋を破壊する装置でも作動させたのか?

 そんな事を思っていると、ヒビがドンドン大きくなっていき、裂け始めた。

 呑気に寝そべっている場合じゃない。

 私はグワングワン揺れている頭と視界に鞭を打って立ち上がった。

 そして、ドアに向かって走った。

 が、地面がパックリと裂けて、足場が崩れてしまった。

「うわっ!」

 私はどうにか裂けた床の縁に手をかけて掴んでいた。

 チラッと下を見ると、見えるはずのない町並みが視界に広がっていた。

 この部屋にあった壁が剥がれ落ちたみたいに無くなり、外から丸見えだった。

 ゆっくりと三ツ頭みつがしらの亡き骸がズルズルと地面に引っ張られるように動いていた。

 そして、崖になった床から離れ、ヒュルヒュルと落下。

 グシャグシャになったのは言うまでもない。

 それがまるで私の未来を見ているような気がして、背筋がゾワッとした。

 一旦宙ぶらりんから脱出しようと両腕を上げるが、戦闘による疲弊か、思うように力が出ない。

 そうこうしているうちに、今度は壁の方にもヒビが入っていく。

「やばっ、このまっうわあああああ!!!」

 私がしがみついていた部分が崩れて、強制的に落とされてしまった。

 当然私の身体は地上へと向かっていく。

 肌の露出が多いせいか、風がダイレクトにあたって寒い。

 何もしなければ内臓やら骨やらが破裂する未来に直進だ。

 そうだ、硬化のポーション。

 確か一個だけ残っていたはず……。

 私は落ちる中、ミニスカートのポケットをに手を入れようとした。

 けど、逆さまに落ちていたからか、ポケットから一気に残りのポーションがぶちまけてしまった。

「ヤバッ!」

 私は必死に掴もうとするが、落ちた何個かが顔にあたって、そのまま流れるように落ちていった。

 どうにか掴んだのは一個だけだった。

 手を広げてみると、チョコの色をしておらず、真っ白だった。

 嘘でしょ、まさかの回復のポーションだけが残ったの?!

 落下中に傷が癒えても致命傷の衝撃が待っているというのに。

 でも、ないよりはいいやと口に入れた。

 ん? ヨーグルトだと思って食べたけど、違う。

 これは……練乳だ!

 という事は回復ではない?

 じゃあ、一体何のポーションだろう。

 そう思っていると、一気に寒くなってきた。

 まさか近くに雪山か雪原でもあるのかと見てみると、それらしきものはなかった。

 じゃあ、単純に風を受け過ぎて体温が低下してしまったのか。

 いや、そんな急激に寒くなるなんてあり得るのだろうか。

 きっかけは……ポーションを食べた直後!

 という事は、これはポーションの効果?

 待って。確かこれと似たような経験をした事がある。

 えっと、うーんと……そうだ!

 火のポーションだ!

 あれを食べたら身体が熱くなってきた!

 もしそれと同じなら、何か手から撃てるはず。

 えっと、火とは逆の存在……水とか氷?

 呪文を唱えないといけないんだっけ……えっと、何だっけ。

 思い出せ! 思い出すんだ、私!

 えーと、水はノ、の、ノノ!

「ノノ! ノノ!」

 しかし、反応がない。

 じゃあ、氷だ。

 えーと、確かガリゴリ系だったっけ。

 ババ、ブブ、ビビ、ガガ、ギギ、ググ……ゴゴ!

 そうだ、ゴゴだ!

「ゴゴ! ゴゴ!」

 けど、反応がない。

 単純に呪文が間違えているのか、それとも別の魔法か。

 あるいはそもそもそんな効果がないのか……それだけは勘弁してほしいけど。

 なんて事を思っていると、ドンドン町並みがはっきり見えてきた。

 まずい、まずい。早くしないと。

 えーと、他に寒くなりそうな魔法はあったっけ?

 うーんと、えーと……雪ぐらい?

 雪の魔法なんかあったっけ?

 思い出せ、えーと、あーと、うぉーと、結構単純だったような気がする。

 あぁ、なんで旅立つ前に魔法の本を読み返さなかったんだろう!

 頭をこねくり回して……雪だからユユ!

 もうこれじゃなかったら、おしまい。

 さぁ、頼むよ。

「ユユ!」

 私がそう唱えると、手から白い塊がブワッと出てきた。

 おぉ、雪のポーションだったか。

 それならこれを使って、クッションを作ろう!

「ユユ! ユユ! ユユ!」

 私は何度も呪文を唱えて、雪球を出した。

 けど、屋根にあたって水玉模様になるだけで、積もらなかった。

 まずい、もう民家の屋根目前だ。

「ユユ〜〜〜〜〜!!!」

 私が断末魔みたいに長く叫ぶと、今度は塊ではなく、雪崩みたいに大量に出てきた。

 屋根がバラバラと崩壊した所にちょうど私が入っていき、積もっていた雪の中にダイブした。


↓宣伝の妖精からのお知らせ

皆さん、こんにちは!

チュピタンです!


今、無事にホテルに着きました〜〜!!

いえーーーい!

パスポート偽造したり、私の華麗な変装のおかげで、どうにか密入国する事ができました〜〜!!


うぇーーーい! やった♪ やった♪ やった♪


ふぅ、これで釜茹で一万の刑を免れる事ができる。


いや、もちろん、仕事はちゃんとしようと思いましたよ。

宣伝は私の天職ですし。

けど、あんな劣悪の環境でやらされるぐらいなら、脱獄した方がいいかなって……。


あ、もちろん、宣伝は続けますので、どうかご安心を!


では、行きます!

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では、感想ですが……まさかの真っ逆さまに落下した状態でポーションを食べるというハラハラした展開になりましたね!


私もいつ捕まるかドキドキの状態ですが、お互い頑張りましょう!


では……え? サイレンの音?

なぜバレ……はぁ?! 生放送になっている?!


あー、録音ボタンを押したつもりが、まさかの配信ボタンを押してしまうとは……私の馬鹿!


早くここから抜け出さないと……さらば!

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