第26話 死に晒せぇえええ!!

「な、何をボゥっとしているの?! 早く何とかして!」

 ムーニーの怒声が聞こえる。

 途中、熱くなったり寒くなったり痺れそうになったが、回転しているからか、受け流されて、全く影響を受けなかった。

「おりゃおりゃあああああ!!!」

 私は遠心力を利用して軽くジャンプした。

 フワッと浮かんだかと思えば、そのまま上昇していった。

「ボボ〜〜〜!!!」

 私がそう叫ぶと、手が急に熱くなった。

 流れるように全身に伝わっていき、視界に小さな火が無数に飛んでいた。

 全身が燃え盛っているのは明らかだった。

 このまま三ツ頭みつがしらの方に向かえば……と思っていたけど、全く動いていない事に気づいた。

 そうか、回転して宙に浮かんでいるいるからと言って、鳥みたいに飛べる訳じゃないのか。

 どうしたらいいのだろう。

 ふとパンプスを思い出した。

 踵を鳴らせば物凄い勢いで空まで飛んでいた時の出来事が脳裏を過ぎった。

 あれを使えば移動できるかもしれない。

 けど、ロリンに普通のパンプスに交換してもらったからできないはずだけど……試しに両足で鳴らしてみた。

 すると、シュゴオオオと勢い良く出てきた。

 これにも付いているんかい。

 ロリンのやつ、『普通』とか言って、新しい空を飛ぶ靴と交換したな。

 アイツには色々言いたい事があるけど、今は目の前の敵に集中だ。

 しかし、靴の勢いが凄すぎたのか、そのまま天井にぶつかりそうになった。

「うわっ! ちょっ! ほっ!」

 回転しながら足をジタバタさせて、どうにか向きを変えると、斜め向きに宙で蹴った。

 すると、そのまま直進で進んでいった。

 よしよし、このまま三ツ頭みつがしらの方に突っ込め。

 私はグルグル回転しながら進んでいった。

 相手もジッとやられるのを待っているはずもなく、ほぼ同時に熱と冷気と痺れが来た。

 が、当然受け流した。

 すると、巨大な爪みたいなのが見えたかと思えば、急に回転が弱まっていた。

 ギュルギュルと鼓膜が破けそうな音もした。

 どうやら受け止めようとしているらしい。

 このまま止められてしまうのはマズイ。

 万が一パンプスの中にある燃料(ロリン曰く)が切れたら、進む事ができなくなってしまう。

 それにこの剣の燃料も切れる可能性もある。

 唯一この怪物に勝てる策を潰す訳にはいかない。

「ボボ! ボボ! ボボ!!」

 私は何度も火の球を出す呪文を唱えていた。

 すると、さらに握っていた手が熱くなってきたような気がした。

 それが要因かどうか分からないけど、三ツ頭みつがしらの掴む手の力が弱まっているように感じた。

「死に晒せぇえええええ!!! ボゥオオオボォオオオオオオ!!!」

 私が命を削る気持ちを込めて叫び、呪文を唱えた。

 やがて、三ツ頭みつがしらは炎の熱さに耐えられなくなったのか、パッと手を離した。

 それが決定打になった。

 回転した身体はギュルルと進し、ガキンッと何かにあたった。

「ウゴオオオオオオ!!!!」

 三ツ頭みつがしらの悲鳴に近い声が聞こえた。

 よし、奴の胴体にあたったんだな。

「ボボッ! ボボッ!」

 さらに呪文を唱えながら力を込めた。

 キリで穴を空けるようにドンドン深くなっていった。

 ギャリギャリ、ギュリギュリ、ガチャグチャなど聞き慣れない音が耳を通過していき、気がつけば部屋の壁が見えた。

 燃料はすでに切れていて、パンプスと剣の力を失った私は勢いそのまま壁に激突した。

「ふぎゅっ!」

 一瞬意識を失いそうになったが、どうにか堪えて立ち上がった。

 振り返ると、三ツ頭みつがしらの胴体に大きな穴が空いていた。

「ウガ……ガァ……」

 奴は左右にゆっくり揺れた後、前に倒れた。

 ズシンと地響きが起きた後、三ツ頭みつがしらの動きが止まった。

「……ふぅ」

 どうにか勝てたみたいだ。

 チラッと手元を見ると、剣が刃が欠けて折れ曲がっていた。

 パンプスは真っ黒焦げだった。

 ふと自分が着ている服装が燃えていない事に気づいた。

 ミニスカートや半袖は汚れてはいるものの燃えて布が消えているような形跡は見られなかった。

 一体どんな素材を使っているんだ。

 なんて事を思っていると、ムーニーが「そ、そんな……」と呟いている声が聞こえてきた。

「私のドラゴンちゃんが……自信作だったのに……」

 ムーニーは目の前に映っている光景がまだ信じられないのか、呆然とガラクタになった三ツ頭みつがしらのドラゴンを見つめていた。

 私は使い物にならなくなった剣とパンプスを棄てると、ムーニーに向かって言った。

「私の勝ちね」

 すると、ムーニーがゆっくりとこっちの方を向いていた。

 無駄に目を大きくさせて、ジッと見ている様は生気を感じられず、一瞬だけゾッとした。

「……ワタシノ……カチ? ナニをイッテイルノ? 勝負はココカラ……ココカラカラヨ」

 まるで乗っ取られたかのようにぎこちなく喋った後、急に走り出した。


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……ふぅ、関門突破したぁ。

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