第24話 今度こそ決着?

 ムーニーの手にボタンの付いた小さな箱を持っていたので、私はすぐに取った。

 縦一列に二つ並んでいて、『拘束・解放』と書かれたボタンと『放電・停止』と書かれたボタンがあった。

 私は両方押した。

 すると、椅子の装置が止まり、ティーロとティーマスを拘束していたものが外れた。

 二人ともほぼ同時に倒れたが、意識はあるようだった。

「グオオオオ!!!」

 主を倒されて怒っているのだろう、三ツ頭みつがしらのドラゴンが咆哮を上げてい。

「よし、今度こそ決着をつけようじゃないの」

 私はそう呟いて、ミニスカートのポケットからポーションを一口食べた。

 ん? チョコレートだと思ったら全然違っていた。

 これは……コーラ?

 パッと見て色合いが似ていたからつい食べちゃったけど……この味のポーションはどんな効果を持つのだろう。

 なんて事を考えていると、右側の頭のドラゴンが炎を吐いてきた。

「うわっ!」

 私は避けようと飛んだ……が。

「え? わわわわっ!」

 まるでカエルみたいにジャンプ力が上がっていたのだ。

 その跳躍力ちょうやくりょくは凄まじく見上げていたはずのドラゴンと見つめ合っていた。

 だが、彼らは気にする事なく、真ん中のドラゴンが雷を放っていた。

「アビビビビビ!!!」

 当然ジャンプ中に避けられる訳もなく、まともに喰らって、そのまま落下していく。

 だけど、トドメをさすと言わんばかりに左側のドラゴンの口から吹雪が出て来た。

 死ぬほど寒い。

 このままだとカチンコチンにされてしまう。

 そうなる前になんとかしないと……。

 地に落ちるまでの数秒間でどうにかポケットをまさぐって、一個取った。

 たぶんオレンジ色のポーションだった。

 ん? この色はどこか見覚えが……視界がぼやけているからあまりよく見えないけど……いやいや、記憶を振り返っている場合じゃない。

 今にも身体の半分ぐらいが凍りそうになっているので、私はまだ動ける腕を使ってそれを口に入れた。

 噛んでいる途中で地面に着地し、その直後に氷漬けにされてしまった。

 うぅ、全然動けない。

「アハハハハ!! ざ〜〜こ!!」

 いつの間にか起きていたムーニーが鼻に手をあてながら私の氷像に指をさして笑っていた。

 くそっ、あの蹴りじゃ不十分だったか。

 まだ口は動かせる……味覚はもう麻痺しているけど、飲み込んでしまえば……。

「さぁっ、ドラゴンちゃん! このままバラバラに砕いちゃって!」

 しかし、その猶予を与えないと言わんばかりに三ツ頭みつがしらの腕が振り上がった。

 あともう少しなのに……と思った瞬間。

「ちょっと待ったーーーー!!!」

 突然聞き覚えのある声が聞こえた。

 その声にドラゴンの腕が止まり、ムーニーも声のした方を向いた。

 よし、今がチャンスだ。

 私は今にも消えそうな力でポーションを飲み込んだ。

「お、お姉ちゃん?! 良かった、無事だったんだ……っていうか、何でそんな格好をしているの?!」

 ムーニーの反応からして、ロリンがやって来た事は明らかだった。

「あー、これ? メタちゃんを応援するために作ったの! どう?」

「う、うん、まぁ、に、似合うけど……あんまり露出が多いのは……色々と目のやり場に困るよ」

「そう? 結構気に入っているんだけどなぁ……ねぇ、メタちゃん?」

 ロリンが私に向かって尋ねた時には、私の凍っていた身体は溶け切っていた。

 良かった。

 私がギリギリの状態で食べたのは『火のポーション』だったみたいだ。

 けど、こんなに早く溶けるものだったっけ?

 それに何だか身体が真夏みたいに暑いし……たぶん普段より身体が冷えていたから、前より暑く感じたのかな?

「うぇえええええ?! す、末っ子?!

 どうして……凍っていたはずなのに……いや、待って。

 なんで、お前もロリンお姉様とお揃いの格好をしているの?」

 私の生還に驚いたかと思えば、ロリンと同じミニスカートの格好になっている事に怒っていた。

 感情の入れ替わりが激しい姉だな。

「さぁ、大人しく人形達を元通りにし、王子様の居場所を吐きなさい。

 そしたら命だけは助けてあげるわ」

 私がそう言うと、突然ムーニーが声を上げて笑い出した。

「はぁ? 何を言っているの? どの口が私に物を言っているの?」

「なぁっ?! こ、こいつ……」

 私はまた殴りかかろうとしたが、ロリンが「待って。ここは私が」と前に出た。

 ムーニーの表情がガラリと変わるのが分かった。

 三ツ頭みつがしらが唸り声を上げるが、ムーニーに睨まれると、すぐに黙ってしまった。

 ふとロリンの右手に何か握っている事に気づいた。

 もしかして、私が頼んでいたやつが完成したのかな。

 なるほど、彼女の気を引いている隙に受け取れってことなのかな。

 私は様子を伺いながらこっそり近づくことにした。

 ティーロとティーマスはようやく立ち上がって互いの肩に腕を回した状態で私達の行動を見守っていた。

 すぐにでも受け取ろうと思ったが、三ツ頭みつがしらが六つの眼で監視していたので、思うように動けなかった。

 そんな中、ロリンがムーニーのすぐそばまで近づいた。

 ムーニーは彼女しか見ていなかった。

「どうしたの? ロリンお姉様」

「ムーニー、あなたはどうしてこんな事をしているの? 昔はそんな子じゃなかったはずだけど……」

 ロリンにそう尋ねるや否や、ムーニーは「それは……」と俯いてしまった。

「何か話したい事があるならお姉ちゃんが相談に乗るから……ね?」

 ロリンはそう言ってムーニーと目線を合わせた。

 しゃがんだと同時に、右手に隠し持っていた箱を放して、かかとで軽く蹴った。

 その箱が私の方に近づいたので、軽くダッシュして拾った。

 その時に何かスイッチを押したのだろう、箱がガチャガチャと変形して剣になった。

 形は黒い騎士が持っていたのと似ているが、刃の部分が若干厚くなっているのが分かった。

 おぉ、これだ。

 私が注文したやつだ。

 けど、うまく斬れるかな?

「ウガアアアア!!!」

 この剣を見た三ツ頭みつがしらは危険を察したのだろう、ムーニーに知らせるかのように雄叫びを上げた。


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皆さん、こんにちは!

チュピタンです!


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では、また……プツッ。


やはり、そうか。

なんかあんな問題を起こしていたやつにしては、ずいぶんと大人しいと思っていたんだ。


自分の声を録音して、その隙に牢獄の床に穴を掘って逃げたんだな。


はぁ、映像を送るのを許可した私が馬鹿だった。


今すぐに指名手配を作れ。各地に捜索隊も派遣しろ。


何としてでもチュピタンを探し出せ!!

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