第21話 えぇ、私もミニスカート?

「ところで、メタちゃん。ドレス、ボロボロじゃない?」

 満足するまで私の抱擁をしたロリンが聞いてきた。

 確かに変態生脚……じゃなかった。

 黒い騎士との戦闘で、ドレスが所々破れていた。

「新しいの無いの?」

 私がそう聞くと、ロリンは「ちょっと待ってて……」と二つの丸いものを置いて、リュックの中を漁った。

 待っている間、私はロリンが応援している時に持っていた丸いものを拾った。

 これは一体何なのだろう。

 思っていたよりもずっと軽い。

 振ってみると、シャンシャンと音が鳴る。

 本当に何なんだ、これは。

「おっ! 早速気になってくれているみたいだね〜!」

 ロリンがニヤニヤしながら私に服を渡してきた。

 私は丸い奴と交換しながら「これは何なの?」と聞いてみた。

「ポンポンだよ」

「ポンポン? 飴みたいなものの中にお酒が入っている……」

「それは『ボンボン』。これはポンポンって言って、応援する時により一層鼓舞させるために必要な道具なの!」

 ふーん、こんなんでやる気が上がるとは思えないけど。

 どちらかといえば、生脚を見せた方が……いや、それは黒い騎士へんたいだけか。

 さて、私の着替えは……ん?

「ねぇ、ロリン。これって……」

 私は渡された服を見て、嫌な予感がした。

「そうだよ。私とお揃い。色違いだけど」

 ロリンは今着ている格好を指差して言った。

 嘘でしょ、こんな格好をしなきゃいけないの?

「他にはないの?」

「あるにはあるけど、まだ洗っていない水着が……汗でベチャベチャになっているけどそれでもいいなら……」

「分かった! 分かったわよ。着替えるからこっち見ないでね」

 私は覚悟を決めて、ドレスを脱いだ。

 当然黒い騎士が気絶している事を確認し、イチゴミルク色の半袖とミニスカートを履いた。

 うん、思っていたよりも可愛いし動きやすい。

 靴はいつも通りのパンプスだけど……まぁ、これはこれでありか。

「さぁ、行きましょう!」

 私がそう言うと、ロリンは「あっ!」と何か思い出したような顔をした。

「鼻が元通りになっちゃった」

 やっぱり、そうか。

 全く応援なんかしているからよ。

 そう心の中で思ったけど怒ったりはせずに「また食べればいいじゃない。私にもちょうだい」と言った。

「はい、これ」

 ロリンは薄緑色のお菓子を渡してきた。

 パクッと食べてみる。

 うーん、ミントだ。

 おぉっ、心なしか……。

「くっがああああああ?!」

 私の鼻の中に、この空間の汚臭があっという間に占拠されてしまった。

「ぶえっ! ケホッケホッ! ガッゴホッゴホッ!」

 何度も咳き込むが、臭いがこびり付いて取れなかった。

「ろ、ろりぶはっ! な、なじ、ごべ、へっおへっ、へーーブシュン!!」

 遂にはクシャミをしてしまう始末だった。

 ロリンは首を傾げて言った。

「あれ? そんなに効果が強かったっけ? 私は全然平気だけど」

 それって、あなたの嗅覚がめちゃくちゃ低いから食べても悪臭の影響を受けなかったんじゃないの?

 もしそうなら、よく私を見つけられたね。

 けど、今は死ぬほど鼻と喉が痛い。

「ぶえっぶしゅん! ぷへっぷしゅん!」

 私は何度もクシャミをしながら早く地下室を出ようと歩いた。

 が、涙で視界が歪んでしまい、まともに歩けなかった。

 ヨタヨタ歩いていると、足に何かあたった。

 そのまま無視したいけど、つい視線を落とした。

 黒い騎士が使っていた剣だった。

 ふと私の脳裏にこの剣でティーマスが腕を刺した光景が過ぎった。

 人形の強度はどれくらいかは分からないけど、ティーナ王女が転んで頭部が取れた時、地面に激突しても傷一つ付いていなかった。

 という事は、人形は人間よりも強度が高い。

 それを貫ける剣は人形の強度以上という事になる。

 私が硬化のポーションを食べても折れないのも納得がいく。

 ん? という事は……。

 私の頭の中である考えが浮かんだ。

 鼻はグジュグジュしていて最悪だったけど、脳内では色んな記憶の情報を元にして、ある設計図が浮かんだ。

「メタちゃん? 大丈夫? 嗅覚やられて思考停止しちゃった?」

 立ち止まって考えている私を心配したのか、ロリンが顔をのぞいてきた。

「ロビン、ばいぶくのぼーじょん!」

 私はすぐに回復のポーションを要求すると、ロリンは通じたのか「はい!」と白いお菓子を渡した。

 すぐに口に入れると、酷い臭いは収まっていき、鼻と喉の痛みもひいていった。

 嗅覚の効果が消えてよかった。

 私は声の調子を確かめた後、ロリンの方を向いて「ちょっとお願いがあるんだけど」と、私が頭の中で考えた事を伝えた。

 ロリンは真面目な顔をして一通り聞いてくれた後、ウーンと腕を組んだ。

「確かにそれだったら……けど、すぐには出来ないよ?」

「私一人で探すから大丈夫よ」

「危なくない?」

「むしろその方がいい。ロリンが戻ってきている事を知っているのは、たぶん黒い騎士こいつだけ。

 私がムーニーの所に向かえば、相手は『地下牢から脱出したんだ』と思わせる事ができる」

「なるほどね……分かった。気をつけて!」

 ロリンはそう言って、私に硬化のポーションと戦闘に使えそうなものをいくつか渡してきた。

「えっと、チョコ以外は何なの?」

 どれも初めて見るやつだったので聞いてみると、ロリンは「食べてみてからのお楽しみ♡」とウインクした。


 念のため、黒い騎士を牢獄に入れて鍵(ロリンが速攻で作った)をかけて収容させた後、私は階段を上った。

 連れて来られる間に見た光景を思い出しながら走っていく。

 途中、何体か魔機と遭遇したがボコボコに殴って倒しながら進んだ。

 ようやく工場に戻ってきたが、しゃがみながら忍び足でガラス窓の方から中の様子を探る事にした。

 工場内では、多くの魔機達が後始末をしていた。

 オークが瓦礫を荷車に乗せて運んだり、牛頭が火花を散らして修理していたりした。

 ワイバーンもバケツいっぱいに溜まった壊れた機械をどこかに運んでいた。

 さっきムーニーに注文票を渡していた牛頭が大きな紙を見ながら指を差したりしていた。

 あれが司令塔なのだろうか。

 魔機にも上下関係があるのね。

 だけど、ムーニーやティーロとティーマスがいない。

 ここではないとしたら……いったいどこにいるのだろう。

 もう少し探してみよう。

 そう思った私は忍び足でこの場を後にした。


↓宣伝の妖精からのお知らせ

皆さん、こんにちは!

チュピタンです!


では、宣伝に移らさせていただきます!

早速ですが、この作品のフォローはお済みでしょうか?

もし『まだ登録してないよ〜!』という方がいらしたら、ぜひフォローしてください!

また面白いよと思ってくださったら、お星様とハートをください!


黒い騎士を倒せて良かったですね!

彼が持っていた剣を見て何かひらめいて、ロリンに頼んでいたみたいですが……とても気になります!


では、また次回お会い致しましょう!


……これで大丈夫でしょうか?


ハイっ! ハイっ! 看守様。

ありがとうございます、ありがとうございます……こんな感じで完結までやればいいんですね?


ハイ……変な事をしたり暴走したら釜茹で一万年の刑……分かりました。


では、よろしくお願いします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る