第14話 人形の国の秘密

 人混みを掻き分けて、また路地裏に入っていく。

 奥に進むと、そこら辺に転がっていそうな空き箱が山積みになっていた。

 ティーマスはそれを一個一個丁寧にどかしていた。

 時間短縮のため、私もロリンもティーナも一緒に協力すると、入り口が現れた。

 金庫みたいに小さくて頑丈そうな扉だった。

 ティーマスがドンドンと強めにドアをノックすると、「誰だ」とたくましい声が聞こえた。

「俺だ。ティーマスだ」

 剣士がそう言うと、「合言葉を」と返ってきた。

「人形と職人に永劫の平安を」

 この一言でがチャッとドアが開かれた。

 思わず叫びそうになった。

 いきなり片目が潰れた男が現れたからだ。

 しかし、初対面の男の顔を見て悲鳴を上げるのは失礼なので、グッと堪えた。

「ティーロ!」

 王女が嬉しそうな顔をすると、ティーロと呼ばれた片目の男は「おぉっ! 王女様!」とほんの少しだけ口角を上げていた。

「さっ、中へ」

 ティーロに手を差し伸べられた王女はお礼を言って屈みながら中に入った。

 ティーマスも続き、私とロリンも中に入ろうとしたが、散らかっている箱が気になった。

 このまま放置すると万が一奴らが捜索に来た時に見つかってしまうので、私とロリンはギリギリ入れるスペースを確保しつつ前方からはうまく見えないように積み上げてから入った。

 中は洞窟みたいに暗かった。

 ロリンがバタンと扉を閉じると、余計に光が遮断されて暗闇になっていた。

 ティーロが灯りを持って付いてくるように言った。

 王女と剣士は慣れた感じで進むと、私とロリンは恐る恐る後を追った。

 この洞窟はモグラが掘って作ったのかと思うほど作りがイマイチだった。

 天井がデコボコしていたり、歩く途中に腰ぐらい高さのある石があるなど、何か物を運んだりする用途には使われていないんだろうなぁと個人的に思った。

 そんなこんなで、ティーロは立ち止まった。

 チラッと見ると、彼の前に木製のドアがあった。

 トントンとドアを叩き、暫く待っていた。

 が、「そういえば中誰もいなかった」と天然ボケみたいなのをして、ガチャっとドアを開けた。

 中は想像よりも広かった。

 天井は洞窟の時よりは高く掘られていて、テーブル一つとソファが3つというよく分からない家具の揃え方をしているが、食料とかを入れる棚がないことに気づいた。

「普段はご飯はどうやって食べているの?」

 私がそう疑問を口にすると、ティーナは「私達人形は水や食べ物を取らなくても生きていけるんです」とにこやかに教えてくれた。

 なるほど、ある意味不老不死に近い状態なんだ。

 ん? いや、ちょっと待って。

「でも、町には美味しそうなお菓子とか店頭で売っていたり食べていたりしていたじゃない。あれは一体どういう事なの?」

 その質問に彼らの表情がまた曇ってきた。

「それは……奴らの仕業なんです」

 ティーナは深刻そうな顔で語り始めた。

「ピグマーリオには人形の他に職人が暮らしています。

 職人は人形が壊れたりしたら治したり新しい人形を作り出す役割を持ってい

 人形と職人達は互いに助け合いながら暮らしてきました。

 ですが、ある時にムーニーと魔機達が攻めてきました。

 彼らの技術力に、人形と職人達はなす術無くあっという間に乗っ取られてしまいました。

 ムーニーは職人達の技術力の高さを利用して、全員工場に連れ込み、そこで魔機の修理や開発を始めました。

 私達、人形はたちまち反対の声を上げました。

 もし壊れた時に修理してくれる人がいないからです。

 すると、ムーニーはもし壊れたら無償で修理をすると宣言しました。

 ですが、それは表向きの理由……実際は違います。

 奴らは手当たり次第に壊れている人形を捕まえては、自分達に逆らえないように改造させているんです。

 彼らを見たでしょう?

 私が転んでも見向きもせずに通り過ぎていたでしょう。

 奴らは心を奪ったんです。

 人間みたいな機能を得る代わりに人を思う心を……もうあの頃の面影はもう……」

 ティーナは話しているうちに感極まったのか、剣士に寄り添って泣いていた。

 なるほど……あいつ、とんでもない事をしているな。

「改造されていないのは、ここにいるあなた達だけ?」

 ロリンは神妙しんみょうそうな顔で聞くと、ティーロが「そうだ」と頷いた。

 なんてこった。

 たった三人しかいないのか。

 一体私が王子との結婚でウキウキしている間に、彼らはムーニーの暴虐非道ぼうぎゃくひどうな政策で人形達かれらを操り人形にさせるとは……なんて奴だ。

「許せない……」

 私が怒りに震えていると、ロリンが「工場はどこ?」と尋ねていた。

「恐らく城だと思う」

「恐らくって? 誰も知らないの?」

「城門前には、魔機達がウロウロしていて、警備が厳重なんです」

 ティーマスがそう言うと、ロリンは「分かった。じゃあ、私達で見に行きましょう」と私の方を見た。

 なるほど、透明のポーションを食べたら、容易に潜入できる。

「僕も付いてきます」

 ティーマスが名乗りを上げると、ティーナが「私も」と目をこすって言った。

「王女様はここに……」

 ティーマスが止めようとしたが、王女は「もうやられっぱなしは嫌なの。彼らが来たのはあいつらに報いを受けさせる絶好のチャンス。これを逃したら二度と奴らに立ち向かえないと思う」と真っ直ぐな目で見た。

「……分かりました」

 ティーマスが頷くと、王女は「ありがとう!」と言って彼の頬にキスをした。

 剣士の顔が一気に赤くなっていた。

「俺も行こう。この片目を潰した奴の仕返しをしたいんだ」

 ティーロも参戦する事になり、結局全員で城に向かう事になった。


↓宣伝の妖精からのお知らせ

チュピタンが風邪を引いたため、ピリタンが担当する事になりました。


チッ、よりによって今日……ゴホン、失礼しました。


えっと、この作品のフォローと星と応援、よろしくお願いします。


では、感想を……えーと、なんやかんやでムーニーがいる城に潜入する事になりそうですね。


どうなるか気になりますね。


はい、以上です。それでは。


……さっ、巻きで終わった事だし、推しのライブへ……。

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