第12話 なんてメルヘンな国なの!

 あんなに重たそうに背負っていたロリンのリュックがいつの間にか片手で持ち上げられるくらい軽くなっていた。

 チラッと中身を見たが、空の瓶でいっぱいだった。

 はたしてピグマリーオに着くまで持つかどうか不安だ。

 辺りが明るくなったおかげで、周囲の景色を確認する事ができた。

 出発する前は緑豊かな草原だったのが、いつの間にか枯れ木が多くなっていた。

 不毛ふもうの地――とでも言うのだろうか、雑草一本すらも生えていない。

 さらに不思議な事に、動物らしき声も聞こえなかった。

 鳥のチュンチュンという鳴き声も、地面に歩くアリですら見かけなかった。

 しかし、道の先には城壁と思われる建物があった。

 一瞬廃墟だと思ったが、よく目を凝らしてみると、人影のようなものが見えた。

「ねぇ、ロリン。遠くのものをよく見えるポーションとかない?」

 私がそう聞くと、補給していたロリンは「あるよ」と言って、紫色のお菓子を渡してきた。

 一口食べてみると、口の中がブルーベリーで満たされた。

 ゴクンと飲み干すとすぐに効果が発揮された。

 目を凝らしてみると、まるでズームしているかのように人影の輪郭がくっきり見えるようになった。

 あれは……魔機だ!

 たぶんオークだろう。

 棍棒を持って、同じ所を行ったり来たりしている。

 どうやら門番をしているらしい。

 魔機がいるという事は、あそこがピグマリーオで間違いはないみたい。

 だけど、どうやって入ろう……そうだ!

 私はあそこが目的地である事を教えた後、加えて透明化ポーションを食べて入国できないか提案してみた。

 これにロリンは「いいね! じゃあ、早速……」と取り出して口にくわえた。

 そして、私の顔に……って、おい。

「話の流れでキスをしようとするな! それをしないと効果が発揮しない訳ではないでしょ!」

「ちぇっ、バレたか……」

 ロリンは残念そうな顔をして、もう一個私に渡した。

 食べる前に水着から普段着に着替え、馬なし馬車を元の細長い箱に姿を変えてリュックにしまった。

「さっき燃料を入れたばかりなのに、小さくなっても液体が溢れないのはなんで?」

 私がそう言うと、ロリンは「そうなるようにうまく作っているのよ」とニヤッと笑った。

 一通り片付けを済ませた私達は、ほぼ同時に透明化ポーションを食べて姿を消し、こっそり歩いた。

 今食べなくても、ここから徒歩だとピグマリーオまで距離があるし、着く前に効果が切れてしまうじゃないのかと聞いてみた。

 すると、ロリンは「切れそうになったら、続けて食べると効果が持続されるよ」と教えてくれた。

 なるほど、いい事を聞いた。 

 そう思いながら私は目的地まで歩いた。


 2個ぐらい食べながら歩いて、ようやく門番の所まで来た。

 私達がすぐ近くまでいるというのに、オークの魔機は相変わらずあっちへ行ったりこっちへ行ったりしていた。

 門は――不用心な事に開けっ放しだった。

 私とロリンは顔を見合わせて、忍び足で門番の横を通り過ぎ、中に入った。

「うわぁ」

 思わず口からこぼれてしまうほど、自分の眼に映る景色に魅了された。

 三角屋根の小屋みたい建物が石畳の大通りに向かい合う感じでズラッと並んでいた。

 壁が赤や青、黄色などカラフルで、積み木を連想させた。

 多くの人が行き交いしていたので、ここまで来たらもう大丈夫だろうとコソコソせずに堂々と歩き出した。

 進めば進むほど魅了される国だ。

 ある小屋ではジュワジュワと何かを揚げているような音が聞こえたかと思えば、甘い油の香りが鼻孔をかすった。

 かと思えば、フワフワのパンケーキを片手で食べている人が私のを横を通り過ぎていった。

 あぁ、めちゃくちゃ食べ歩きしたい。

 とても外の不毛ふもうとは縁遠い街並みに私の好奇心はウズウズしていた。

 ふとこの国の人達の顔の口から顎ぐらいまで真っ直ぐな黒い線がある事に気づいた。

 一瞬ほうれい線かなと思ったが、そのわりには若者も子供も、老若男女問わずにあったので、この国に住んでいる一達の特徴なのかなと思った。

 それにしても、この国の町並みはなんて言うのだろう……めちゃくちゃ可愛くて私好み。

 小さい頃、独りで着せ替え人形で遊んでいた時に思い描いていた世界のような国だ。

 あぁ、一刻も早く探索したいなと思っていると、誰かの視線を感じた。

 ロリンかなと思って彼女の方を見たが、「どうしたの、メタちゃん?」と首を傾げていた。

 視線がロリンじゃなかったら誰が――と思った時。

「いやああああああ!!!」

 突然悲鳴が聞こえてきた。

 何だと思っていると、前方から水玉のワンピースを着た女の子が人混みを掻き分けてこちらの方に向かって走ってきた。

 その背後には、魔機達が追いかけてきた。

「まずい! 隠れよう!」

 ロリンにそう言われて、路地裏に引っ張られてしまった。

 こっそりと息を潜めていると、女の子が転んでしまった。

 すると、頭がゴロンと外れた。

 ……は?

 思わず自分の眼を疑った。

 なぜ転んだだけで頭が外れるの?

 頭の中がハテナでいっぱいになっている中、通行人は倒れている首なし女の子には目もくれず歩いていった。

 この国の人達は頭が外れる事が常識なの?

 なんだか、一気に怖くなってきた。

 そう思っていると、ある通行人の足が頭にぶつかった。

 頭はコロコロと私達がいる路地裏の方に向かってきた。

 背筋が一気に凍っていくのが分かった。

 頭は私の爪先にコツンとあたり、女の子の顔が現れた。

 ビー玉みたいに綺麗な水色の瞳をしていた。

「助けてください!」

 女の子は私と目が合うや否や、頭のままいきなり叫んだ。


↓宣伝の妖精からのお知らせ

……はい、チュピタンです。

あの、本当にすみませんでした。

上の方にまた怒られました。

正直に言います。寝てました。

はい、本当です。

あの、前に謹慎処分になったのに、勤務中に寝ているなんて何事か……と怒られました。

二度としません。

本当にしません。

家に変えって、やけ酒なんかしません。

ラム酒の効いたレーズンサンドを爆食いします。


……では、気を取り直して、宣伝です!


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新しい国に来ましたね!

まるで絵本のような世界ですね……けど、ここに魔機達がいるという事は、ムーニーもここにいるのでしょうか?

頭が外れた女の子も気になります……次回は一体どうなってしまうのか、楽しみにしててください!

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