第11話 道のりは長い

 まるでサウナにいるかのような室内に、なぜロリンが水着着用を強要させたのか、よく分かった。

 カタカタ揺れているけど、動いているのかな?

 私がキョロキョロ辺りを見渡すと、座席の後ろに窓があった。

 入ってくる時に前の操縦席に気を取られて気づかなかった。

 こんなに暑いのに割れたりしないのは、かなり分厚くしているのだろう。

 だけど、曇ったりはせず外の景色はくっきりと見えた。

 草花が見えたとかと思えば一瞬で遠くなっていった。

 凄い、馬がなくてもちゃんと走れている。

「でも、なんでこんなに暑いの?」

「あぁ、それは……ポーションを火で沸騰させているからだよ」

「沸騰……もしかして、この中が鍋みたいにグツグツ煮込まれているってこと?! なんでそんなことをしているの?」

 私の疑問に、ロリンは立ち上がって、時計をジッと見てレバーのようなものをカシャカシャ動かしてから答えた。

「水蒸気を作るためだよ」

「水蒸気? そんなんで動くの?」

「それだけじゃあ、動かないけど……ヤカンでお水を沸かす時を思い出した方が分かりやすいかも。

 中に水を入れて火にかけて沸騰すると、ヤカンの蓋がカタカタ音が鳴るのを見た事がない?

 あれは中で沸騰した事によって生まれた水蒸気が一杯になって上に逃げようと蓋を押し出しているからなの。

 その原理を元にして作ったのが、この馬なし馬車ってわけ。

 床の下には液体ポーションを入れる釜と可燃性の燃料が入った缶と肥料が入った缶が三層式で入っているんだ……」

 ロリンはそうブツブツ言いながらまた時計をジッと眺めていた。

 そんな光景を見ていると、ふと疑問が思い浮かんだので、質問してみた。

「沸騰させるための火はどうやって付けているの? たきぎ?」

「いや、生ゴミ」

「生ゴミって……イチゴのヘタとか?」

「そうそう。それをこの車の底に酸素に触れない状態にして、生ゴミにいる微生物でガスを生み出させるの。

 ガスは操縦席のメーターでどれくらい溜まるか分かるかから、満杯になったらレバーを引いて、缶の蓋を開けて管からガスだけを送る。

 そのガスもメーターで溜まっているかどうか分かるから、それも確認できたらスイッチで点火させる。

 スイッチ一つで火が付いたり消えたりできるようにしてあるから、ガスの無駄な消費がない。

 あとは、液体ポーションを沸騰させて水蒸気を作って、栓――ヤカンのフタをカタカタさせて、その動きの力を管や棒を使って車輪と連動させて、馬なし馬車を動かしているの」

 なるほど……色々言ったけど、この馬車は生ゴミのガスで失敗したポーションを沸かしながら動くってことね。

「これって燃えカスみたいなのは残らないの?

 例えば、海水を沸騰させたら塩がでて来るみたいな」

「うん、まぁ、微生物の食べ残しとかの不純物みたいなのは出てくるけど、それは排出口から外に出してくるから、問題ないよ」

「え?」

 私は後ろの方を見た。

 確かによく見ると、地面に何か白い煙と共に小さな黒い塊みたいなのがあちこちに置かれていた。

 あれが不純物?

「ねぇ、あれは地面に置いておいて、大丈夫なものなの?

 動物が食べたら具合が悪くなる事はない?」

「うん、特に影響はないよ。前に熊で試してみたけど、めちゃくちゃ凶暴になったくらいで、病気や死んだりする事はないから」

 熊が凶暴化って、絶対にその不純物の影響でしょ。

「絶対に駄目じゃない!」

 私がそう叫んだと同時に、急に大きく揺れたかと思えば、静かになった。

 暑さも引いている気がした。

「あぁっ! もう!」

 ロリンが苛立った様子で立ち上がり、リュックから液体のポーションを何瓶か取り出すと、外に出た。

 私も蒸し暑い車内に留まりたくなかったので付いていった。

 外はいい感じに冷えているせいか、身体がサッパリして、風呂上がりのような気持ちになった。

 チラッとロリンを見ると、またトクトクと注いでいた。

 全ての瓶が空になると、「いいよ! 乗って!」と中に入っていた。

 また暑い中に入るのかと嫌になったが、徒歩よりはマシかなと自分に言い聞かせながら乗車した。

 そして、例のごとくスイッチを押して、車内を真夏にさせ、カタカタと不純物を吐き出しながら進む。

 しかし、またすぐに止まって、ロリンが瓶で管に液体を注いで、またスイッチを押して発進した。

「これの最大の欠点は、燃費が悪い事なんだよね」

 ロリンは愚痴をこぼすように言った。

「ねんぴ? ねんぴってなに?」

「一瓶の液体ポーションでどれくらい進むかってこと。

 前に実験で試したんだけど、1リットルの常温20度の液体ポーションで大体……43分くらいかな」

 うーん、あんまりよく分からないけど、そんなに効率はよくなさそう。

 いちいち供給しないといけないのなら、馬車に乗った方が早い気がする。

 そう言いたかったけど、ロリンが一生懸命操縦しているので、文句は言わない事にした。

 ついでに、止まっている間に点火の材料になりそうな雑草や腐った木の実を拾ってきて、少しでも長く走行できるように協力する事にした。

 ただ走る度に落ちる黒い塊が気になったので、何か使えはしないかと、補給時間の間に走るポーションを食べて、全て拾った。

 気がつけばポシェットの中には小さな黒い塊でパンパンになっていた。

 そうこうしているうちに、夜が明けた。


↓宣伝の妖精からのお知らせ

……すぅ……ムニャムニャ……すぅ……はっ!

し、失礼しました!

えっと、あの、寝ていません!

決してロリンの馬なし馬車に関する話が専門的過ぎて、眠くなって、『ちょっとぐらい目を閉じてもバレないだろ』と思ってやったら、爆睡していたとか……絶対にそんな訳で寝息をたて……瞬きをしていた訳ではないです!


えっと、あの、チュピタンです!

宣伝に移ります!


えっと、あの、さ、早速ですが、この作品のフォローはお済みでしょうか?

もし『まだ登録してないよ〜!』という方がいらしたら、ぜひフォローしてください!

また面白いよと思ってくださったら、お星様とハートをください!


……ふぅ。あ、感想。

感想……なんか凄かったですね!

以上です! それでは!

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