第9話 決着?

 なんて事を思って歩いていると、突然目の前にまた三ツ頭みつがしらのドラゴンが前に立ちはばかった。

 え? なんで居場所がバレたの?

 目をパチクリさせながら振り返ると、私達が歩いてきた道の後ろから魔機達が走ってきていた。

 先頭に狼の魔物がいることを考えると、匂いで私とロリンの居場所を突止めたらしい。

 クソッ、匂いまでは透明化できなかったか。

 私が舌打ちをするご、ムーニーが「末っ子ぉおおおお!!!」と悲痛な声で叫んでいた。

「お前……うぅ……お前ぇぇぇ!!」

 なぜか声が上擦うわずっていた。

「絶対に許さない……絶対に! やれ、お前達!」

 ムーニーが叫んだと同時に、魔機達が一斉に襲いかかってきた。

 私は頭をフル回転させて、ロリンに「硬化のポーション」を渡すように言った。

 ロリンは私の意図が伝わったのか、箱を開けて一粒渡した。

 すぐさま口に入れて食べた私は試しに飛び掛かってきたスライムに一発殴ってみた。

 すると、バコッとへこんで地面に落とされた。

 スライムの頭から火花みたいなのが出ていて、当たりどころが悪かったのか、そのまま動かなかった。

 思った通りだ。

 鋼鉄の肉体には鋼鉄の攻撃を。

 硬化のポーションで頑丈な皮膚になれば、打撃でも通じる。

 だけど、ポーションの効果がいつ切れるか分からない。

「だったら、短期決着!」

 私は駆け出して、次々に迫りくる魔機達を蹴散らしていった。

 狼の魔物を鼻でペチッと叩いて怯ませてから攻撃したり、翼から炎が出ているワイバーンの頭を吹っ飛ばしたり、舌が剣みたいになっているカメレオン系の魔物の尻尾を引っこ抜いしたり、ぶよぶよした肉塊の魔物をパンチでベコベコにした。

 ロリンも私と同じポーションを食べたのか、拳や脚で魔機達をふっ飛ばしていた。

 気がつけば、立っている魔機はムーニーの乗った三ツ頭みつがしらのドラゴンのみとなった。

「うぅ……ザコ末っ子のくせにぃぃ……」

 ムーニーが悔しそうな顔を見せると、「行け! ドラゴンちゃん!」と腕を上げた。

 すると、右側のドラゴンは炎、真ん中のドラゴンは雷、左側のドラゴンは氷、とそれぞれ異なる攻撃をしてきた。

 さすがに色んなポーションを持っているけど、三つの違うタイプの攻撃をされてしまったら、どの耐性のを使えばいいのか、分からなかった。

 かといって三つ同時に食べて、また自分の格好に影響を与えるのも嫌だし。

 私はネズミのようにちょこまかと走り回りながらタイミングを伺った。

 ロリンもアタフタしながら避けている。

 ムーニーはまた高笑いしながらドラゴンに攻撃を続けるように言っていた。

 このまま一方的に逃げてもいずれ体力が尽きて、やられてしまう。

 対して、相手は体力の消耗なんか微塵も感じさせないロボットだ。

 やはり、あいつを狙うしかないか。

「ロリン! チョコを!」

 私がそう言うと、ロリンは「分かった!」とまた一粒投げた。

「させるか!」

 ムーニーがそう叫んだと同時に、真ん中のドラゴンから発せられた雷撃が一粒のポーションにあたり、黒焦げになってしまった。

「お前らが妙なものを食べて強くなっているのは分かっているのよ。

 さぁ、ロリンお姉ちゃん、大人しく私と一緒に来て」

 ムーニーに詰め寄られたロリンは視線を右往左往させていた。

「……分かった」

 ロリンは静かに頷くと、ムーニーは「ほんと?!」と満面の笑みを浮かべて、飛び跳ねるようにドラゴンの身体に降りていった。

「良かった〜! これで他のお姉ちゃん達に怒られなくてすむ!」

 ムーニーは嬉しそうにロリンの手を握って、ポケットをまさぐっていた。

「あ、あれ? ここに入れていた『自動道案内装置』が……」

「もしかして、これのこと?」

 ロリンが例の小さな装置を見せると、ムーニーは「あっ! それそれ!」と手に取ってポケットにしまった。

「けど、なんでお姉ちゃんが持っているの?」

「いや、落ちていたから拾ってあげたんだ」

「そうなんだ! ありがとう!」

「そういえば、この装置、とても面白いけど、どうやって作ったの?」

「へへへ! それはね……」

 なぜかムーニーは私そっちのけで、自分の発明品をロリンに語っていた。

 私の時とは違い、無邪気で可愛らしい子供みたいな声で姉に話していた。

 私より一つ上のくせに。

 はぁ、完全に置いてけぼりにされているな、これは。

 ん? ちょっと待って。

 今がチャンスなんじゃないか?

 そう思って私がムーニーに襲いかかろうとしたが、三ツ頭みつがしらのドラゴンが咆哮を上げて攻撃していた。

 こいつら、主が命令をくださらなくても、自律的に行動できるのか。

 私は必死に避けながらどうにかチャンスを待っていた。

 ムーニーは私の事なんか目もくれずに、楽しそうに話していた。

 すると、ロリンは「甘いもの食べる?」と例の固形型のポーションを渡してきた。

 ムーニーは「食べる! フラスコに入っていたラムネがなくなっちゃって、糖分が欲しくてしょうがなかったの!」とよく確認もせずに口に入れた。

「う〜ん! これは……私の好きなラムネだぁあああああああ!」

 一体何が起きたのだろう。

 ムーニーが食べた瞬間、誰も殴ったり爆発に巻き込まれた訳ではないのに、天高くまで吹っ飛んでしまった。

 それを見たドラゴンは背を向けて、彼女が飛んだ方角へ慌てて駆け出していった。

「ねぇ、ロリン。あいつに何を食べさせたの?」

 私がそう聞くと、ロリンはフフンと得意気な顔をして「『転移ポーション』を食べさせたの! これを食べた者は強制的に近くの村や街などに飛ばされてしまうの!」と語った後、ハッと何かに気づいた顔をした。

「これ食べたら最短で街や村へ行けるんじゃない?」

 その言葉に私は危うく転けそうになった。

「それがあるんだったら、最初から出してよ!」

「ごめんごめん、それじゃあ……」

 ロリンは転移ポーションを私に渡そうとしたが、ピタッと止めてしまった。

「いや、今は止めたほうがいい」

「どうして?」

「もし今食べて飛んだら、必然的にムーニーが降りた所に着く事になる」

 確かに同じポーションを食べたら、結果が同じになるのは当然よね。

「じゃあ、私達は歩いていこうか」

 私がそう提案すると、ロリンは「そうだね……あ、でも」と何か思い出したような顔をした。

「道案内の装置、ムーニーに渡しちゃったんだった」

 この一言で、私は思いっきり顔から突っ込んでしまうほどコケてしまった。


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初彼氏から久しぶりに連絡が来たけど、即ブロックしてやったチュピタンです!


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今回は激しめのバトル展開でしたね!

最後はロリンの作戦勝ちで、見事ムーニーを撃破しましたが、肝心の道案内装置を失ってしまいましたね……。


一体どうなってしまうのか、次回を楽しみにしててください!

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