第8話 私の唇はイチゴ味

 なんか変な旅立ちになってしまったが、兎にも角にも愛しの王子様を助けるため、私とロリンは草原を進んだ。

 春の穏やかな気候だからか、小さくて可愛らしい花達が咲いていた。

 そこら中に咲き乱れているというよりは、赤い花だったらその色限定が集まって群生している感じ。

 まるで一つ一つが独自の街でも出来ているかのようだ。

 青く茂っている草が境界かな?

 彼らはどんな話をしているのだろう。

 きっと隣の黄色の花がたくましくてタイプ……なーんてね……うーん、何だか詩人になった気分だ。

「ねぇ、ロリン」

「何、メタちゃん?」

「王子様の所にどれくらいで着くのかな?」

「うーん、この装置だけじゃあ、何とも言えないね」

「それって、目的地に着くまでの残りの距離とか教えてくれないの?」

「いや、方角だけだね」

 えぇ、それだけだったらいつになるか分からないじゃん。

「改良してそういうの出来ないの?」

「そもそもチャーム王子がどこにいるのか分からないから、現在地からそこまでの距離を測れない」

「じゃあ、どうしたらいいの?」

 私は溜め息をついた。

 あぁ、チャーム王子。

 今、あなたは何をしているの?

 ちゃんとご飯食べているの?

 牢獄に入れられているのかな?

 いや、王子様ラブの姉どもの事だから、きっと……あぁ、考えただけで腹がたってきた。

「あーあ! 馬車とか通ってきてくれないかなー!」

 私がそう天に向かって叫んだ。

 すると、前方から砂ぼこりが立ちこもっているのが見えた。

 早くも願いが届いたのだろうか。

「あれ、何?」

「何かこっちに向かってきているね」

 私とロリンは立ち止まって、ジッと眺めていた。

 馬車にしては速度が速すぎるし、動物の大群かな?

 砂埃が徐々に近づいていくに連れて、輪郭がはっきりしてきた。

 えっと、かなり大きめで、頭が三つ分かれている動物。

 そんなのいたっけ……おや?

 何か背中に乗っているぞ。

 小人かな?

「末っ子ぉおおおおおおおおお!!!!」

 遠くからでも『末っ子』というワードが聞こえてきた。

 私をそう呼ぶのは一人しかいない。

 という事は、こっちに向かってきているのは……。

「ムーニーだ!」

「ムーニーじゃん!」

 私とロリンはほぼ同時に叫ぶと、百八十度方向転換して、走り出した。

 王国へまっしぐらだけど、襲われるよりはずっといい。

 だけど、相手は思ったよりも早く、足音と地響きがドンドン迫ってきていた。

 チラッと見てみると、ドラゴンの頭が三つに分かれていて、翼は生えていないが、たくましい四肢と鋭い爪で四つん這いになって駆けていた。

「なんで、お前がここにいるの?! ふっ飛ばされたんじゃないの?!」

「私がドラゴンの魔機を一体だけ作ったと思ったか? 残念! 事前に待機させておいたんだよ!」

 はぁ? 何よそれ。

 でも、翼が無いのにどうやって受け止めたの?

 なんて疑問に思っていると、ムーニーが「奴らの前まで飛んで!」という命令を下していた。

 背後から雄叫びが聞こえたかと思えば、背後から突風が吹いた。

 私とロリンは風で押されて転んでしまった。

 ズシーーンと脳も揺れるかと思うぐらい響いた。

 起き上がってみると、三ツ頭みつがしらのドラゴンが私達の前にそびえ立っていた。

「ヤバッ!」

 私は振り向き、逃げようとしたが、魔機達がワラワラと囲うように迫ってきていた。

 あぁ、挟まれてしまった。

「アハハハッ! アーーハーー!! 観念しろ! 末っ子!」

 ムーニーが上機嫌に笑った後、「ロリン以外殺せぇえええ!!」と命じた。

 また襲い掛かってくる魔機達。

 よし、ポーションを食べて戦うしかない。

「ロリン! 火のポ……」

 衝撃的な事が起きた。

 私がロリンが立っている方を見た瞬間、いきなり口付けをしてきたのだ。

「うぇえええ?!」

 ムーニーもさすがに狼狽している様子で、それに連動するかのように魔機達も唖然と見ていた。

 いや、一番驚いているのは何より私だ。

 意味が分からない上に、しかも舌を入れられて――ん?

 舌にしてはフニャッとしている。

 なんだこれ。

 私が困惑していると、ロリンが少し顔を離した。

 彼女の口に何か咥えていた。

 それがポーションだと分かった瞬間、私は反射的に噛んで飲み込んだ。

 何も味がしない。

「あ、あれ? ロリンと末っ子は?」

 すると、ムーニーがなぜか私達を探していた。

 魔機達の方も見ていると、目の前にいるはずなのにキョロキョロと辺りを見渡していた。

 ロリンと目が合う。

「どういうこと?」

 私は首を傾げると、ロリンはニヤニヤしながら「透明化のポーションを食べたのよ。さぁ、効果が切れないうちに」と走り出した。

 ロリンはリュックをユサユサと背負っていたが、魔機達は気づいていない様子で、全然違う方向に探しに行っていた。

 人間だけじゃなくて、その人の衣服や荷物も消えるのか。

 そう思いながらロリンの後を付いていった。


「あれは一体どういうこと?!」

 ムーニーと魔機達の姿が見えなくなるまで遠く離れたタイミングで、私はロリンにあの件を聞いた。

 ロリンは正座して俯いていた。

「えっと……その……普通にポーションを食べていたら、ムーニー達に阻止されると思って……だから、インパクトを与えれば……ビックリして隙が生まれるかな……と」

 なるほど、私達が逃げやすくするために口移しをしたという訳ね。

「だけど、私は王子様の婚約者なのよ! 誓いのキスもしていない相手に口移しするとはいい度胸ね!」

 私はプンプンと頬を膨らませて怒った。

「でも、ファーストキスは済ませたんでしょ?」

 ロリンは上目遣いでとんでもない事を言った。

 なぜ、私と王子様とキスをした事を知っていんだ。

 いや、『済ませたん』って聞いているから、知っている訳ないか。

 私と彼が告白した直後に交わした蜂蜜よりも甘いキスなんて、知っているのはずがない。

「ファーストキスは……うん、えっと、その、すま……えぇい! そんな事は今はいいじゃない! それより、何か言うべき事があるんじゃないの?」

「メタちゃんの唇がイチゴのように甘かったってこと?」

「謝りなさいって言っているの!」

 私が顔を鬼にして怒鳴ると、ロリンは「ごめんなさい」と頭を下げた。

「いい? もう二度とあんな真似はしないで」

「はい。重々反省しております」

 やけに素直に反省するなと思いながら「じゃあ、夜にならないうちに村を探しに行きましょう」と言って歩いた。

 それにしても私の唇はイチゴみたいに甘いのか……なんかちょっと嬉しい。

 けど、どうせなら王子様に言われたかったな。


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皆さ〜〜ん!!! こんにちは〜〜〜!!!

宣伝の妖精のチュピタンだよ!

今日から心機一転、頑張るぞ〜〜!!!


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まさかのロリンとメタの百合キスが見られましたね!


個人的に百合は大歓迎なので、今後ももっと増やして欲しいなと思っている自分がいます!


あ、でも、そしたらメタとチャーム王子のカップリングが成立しないか……うーん、悩ましい!


皆さんはどっち派ですか?


では、また次回お会い致しましょう!


ちなみに私のファーストキスは五百歳の時でーす!

相手は初彼氏♡

食べ方汚くて速攻で別れたけど。

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