第5話 魔物ロボットとの死闘
「な、なんなのこれ?!」
私が呆気に取られていると、ムーニーは軽やかな足取りでドラゴンの背中に乗った。
「アハハハッ! こいつは
「魔物を……ベース? どういうこと?」
私が首を傾げていると、ロリンは背負っていたリュックを投げ棄て、「魔物の容姿や身体能力などを参考にして作られたってことよ」と教えてくれた。
つまり、今目の前にいるドラゴンは本物のドラゴンを模して作られた兵器ってこと?
それ凄いヤバイいんじゃないの?
「さぁっ! このドラゴンちゃんの炎の餌食になりたくなかったら、おとなしく私達の所に来なさい!」
ムーニーはそう叫ぶが、ロリンは「お断りよ!」と舌を出して拒否した。
これにムーニーは少し残念そうな顔をして、「どうしても嫌だというのなら……無理やりにでも連れて行くしかない」とまた何かスイッチを押した。
すると、ドラゴンが空けた穴からワラワラと
「さぁ、お前ら! ロリンを捕まえて! メタは殺してもいいから!」
おい、さり気なく私を殺そうとしているぞ。
オークやゴブリンの形をした魔物のロボット達が「ウォオオオオ!!!」と雄叫びを上げながら襲い掛かってきた。
「はっ!」
私は棍棒を振り上げているオークに一発蹴りをかました。
すると、彼は吹っ飛んで、背後にいた魔機達もろとも一緒になって倒れた。
「おぉっ! これってパンプスの力……って、うぇえあああああ?!?!」
ロリンの方を向いた瞬間、思わず叫んでしまった。
姉の身体が燃えていたのだ。
「あっつううううううう!!!」
ロリンはあまりの熱さに身体をゴロゴロ動かしていた。
そりゃそうだろ。
あ、でも、魔機達がドンドン吹っ飛んでいく。
ピニー達が慌てて手から水を出して、ロリンの消火をしていた。
こいつら、火だけでなく水も出せるんだ。
ロリンはビショビショのまま倒れていた。
僅かに腕が動いていた。
手に白くて小さな――恐らく回復のポーションだろうう――を口に入れた。
そんなに時間が経たないうちに、ロリンは立ち上がった。
「う〜ん、危なかったぁ……危うく燃え死ぬ所だった」
ロリンはそう言って胸を撫で下ろしていた。
全く何をやっているんだが。
でも、これで魔機達は――って、あれ?
私の蹴りやロリンの回転で蹴散らしたはずの魔機達が何事もなかったかのように起き上がっていた。
「ええええええ?! な、なんで?!」
私が目を丸くしていると、ムーニーが高らかに笑っていた。
「馬鹿め! お前らのヘナチョコな攻撃で壊れるように作っていると思うか?!
私は『天才』って呼ばれているのよ?! 舐めるな!」
ムーニーは続けて私達を指差し、「さぁっ、お前達! ロリンを捕まえて!」と魔機達に命じた。
再び襲いかかってくる彼らに私は蹴りを御見舞しようとした――が。
「メタちゃん! 上!」
ロリンにいきなりそう言われたので、反射的に見上げた。
ドラゴンが大口を開けていた。
その中にメラメラと燃え上がる球体が大きくなっていた。
嫌な予感がする。
「しねぇぇええええ!!! 末っ子ぉおおおおおおお!!!」
ムーニーがそう叫んだと同時に、ドラゴン口から炎の球体を放った。
あっという間の出来事だった。
炎の球体が一気に私の至近距離まで近づいた。
ロリンが私の名前を叫ぶ声が聞こえたのが最後。
私は炎に包まれた。
全身が焼けるように熱い。
視界も聴覚も嗅覚も触覚も炎に喰われてしまいそうだった。
そして、脳内も――と思ったが、炎が急に止んだ。
私はまだ夢の中にいるような気がして、自分の履いているパンプス、
「……どうして?」
私と同じようにムーニーも驚いていた。
「な、なんで?! まともに食らったはずなのに?!」
ムーニーは困惑している様子で、眼を擦ったりして私を見ていた。
「……そうか。このドレスだ」
ロリンがポツリと言った。
「特製ドレスは、衣服だけじゃなくて着衣した人物にも影響を及ぼすんだ……だったら!」
ロリンが魔機達の猛撃をかわしながら何かブツブツと呟いたかと思えば、「メタちゃん、これを!」と何かを投げてきた。
パシっと受け取ると、固形型のポーションがたくさん入っていた小さな箱だった。
「オレンジ色のやつを食べて!」
「え? なんで?」
「いいから!」
ロリンに強気にそう言われたので、しぶしぶ口に入れた。
うん、オレンジの酸味がして美味しい。
ん? 何だろう。
身体がポカポカしてきた。
血の循環が良くなるポーションなのかな?
「えぇい! こうなったら死ぬまで撃つしかない! 行け、ドラゴンちゃん!」
ムーニーがドラゴンに命じ、何発もの炎を吐かせた。
「わっ! ちょっ! はっ!」
効かないのは分かっているけど、火だるまになるのはごめんなので、避けまくった。
「アハハハハ!!! いつまでダンスしているのかな?!」
ムーニーが指差してゲラゲラ笑っている。
クソー、いい気になりやがって。
でも、手も足も出ない。
「メタちゃん、呪文を!」
「呪文? 呪文ってなに?」
「炎を出す呪文! ほら、小さい頃に本で読んだ!」
小さい頃に読んだ本――あぁ、魔法の本。
確かあれには魔法使いになるための魔法があって、確か炎を出す呪文は……。
「ボボ?」
私が小さな箱をしまってそう唱えると、地面の方に向けていた右手から火が出てきた。
「うわっ!」
思わず後ずさりして、自分の手を振って乾かした。
けど、すぐに手は冷めてしまった。
うーん、これがポーションの力?
もしそうなのだとしたら、今の私は炎の魔法が使えるっていうこと?
だったら……。
「ボボ!」
私が試しに噛み付いて来ようとしてきた狼の魔機に手を向けて呪文を唱えた。
すると、火の球が奴にあたり、炎に包まれていった。
おぉ、これは使えるぞ。
「ボボ! ボボ!」
私は迫ってくる魔機達に手当たり次第に、火の球を放ち、奴らを火だるまにしていった。
けど、火に耐性があるのか、まだ動いていた。
あぁ、もう拉致があかない!
親玉を狙うしかない。
「うおおおおおおお!!!」
私は魔機達を避けながらドラゴンに乗っているムーニーの方に向かって走った。
ムーニーは危機を感じたのか、ドラゴンに命じて何発もの火を放たせた。
私は対抗して火の球を何発も撃って、相殺させた。
ジャンプして、ドラゴン鼻の穴にぶら下がった。
「こ、この……ドラゴンちゃんから離れろ!」
たちまちドラゴンが頭を振って、落とそうとしていた。
私はしっかり捕まったまま片手を奴の口の方に向かった。
「ボボ!」
火の球は見事にドラゴンの中に入っていた。
すると、ピタッと動きが止まり、悪寒がはしったかのようにガタガタと揺れ出した。
「ま、まずい……」
ムーニーが青ざめたのも束の間、ドラゴンのボディが大爆発を起こした。
私は爆風で一気に地面に叩きつけられてしまった。
「グフッ……」
息が止まりそうになりながら私の視線の先には、天まで飛んでいくムーニーが見えた。
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