第6話 一筋の希望

「大丈夫? メタちゃん?」

 私の視界には、ロリンや大勢のピニー達に覗きこまれていた。

「へ、平気よ……」

 本当は全ての骨が砕けたと言わんばかりに痛かった。

 爆発と衝撃の耐性は付けられていなかったの?

 私は何度か深呼吸してから起き上がった。

「ふぅ……あれ? 魔機達は?」

 あんなに私達に襲いかかってきた魔物ロボットの姿がどこにもいなかった。

「ムーニーが飛んで行ったから、一匹残らず尻尾を巻いて逃げていったわ」

 ロリンは私の顔を一切見ずに答えた。

 辺りを見渡すと、魔機達の襲撃とドラゴンロボットの爆発による被害が一目瞭然だった。

 ピニー達が必死に散乱したガラスを回収したり、火の消化をしたりしていた。

 焦げ臭いし、それに何だか肌寒い。

 炎のポーションを食べたせいで、体温がおかしくなっているのかな――と自分の腕を触ろうとした。

 が、私がいつの間にか下着姿になっている事に気づいた。

 イチゴ柄のパンツが丸見えになっていた。

「いやあああああああああああ!!!」

 一気に顔と体温が上昇し、その場にうずくまってしまった。

 ピニー達が慌てて駆け寄り、あたふたしていた。

「なんでこんな格好になっているの?!」

「恐らく火のポーションを体内に取り込んだからだと思う。

 いくら耐火のドレスでも内側から火を放たれたら、さすがに耐えきれなくなって燃えちゃうのかも。

 あるいは、似たような効果を持つポーションを使うと互いの効果がぶつかり合って、打ち消されてしまうのかもしれない。

 いや、そしたら何も起きないはずだから……」

「考察は後にして、早く私の着替えを持って来て!」

 私がそう叫ぶと、ロリンは我に返ったような顔をした。

「ご、ごめん! すぐに持ってくるから!」  

 ロリンはそう言ってどこかに行った。

 その間、私は自分の下着姿を姉に見られたという事実に打ちのめされていた。

 私が未だに幼少期の頃から履き続けている事を知られてしまった。

 あぁ、王子様にしか見せないつもりだったのに。

 よりによって、変態姉に見られてしまった。

 でも、パンプスは無事だった。

 どうせ壊れるなら靴にして欲しかった。

 素足だったら全然問題なかったのに。

 そんな事を思っていると、ピニーが新しいドレスを持ってきてくれた。

 さっきと似たようなイチゴミルク色だったので、「これ、またポーションを食べたら服消えるとかない?」と着替えながら聞いた。

「大丈夫。それ、万が一失敗した時用のためにごく普通の素材で染めて編んだドレスだから」

 失敗って……じゃあ、あのドレスは一か八かで作られたってこと?

「私を試したの? ロリン」

 私は着替えが終わり、殺気立ったオーラを放ちながら彼女の方に向かって歩いた。

「……おっ、固形ポーションの箱、見っけ」

 ロリンは全く気にしている様子もなく、服が消えて落ちたと思われる固形型のポーションの箱を拾っていた。

 殺気を感じたのだろう、青ざめた顔で私の方をゆっくりと振り返った。

「い、いや、試したっていう訳じゃあ……で、でもさ! ドラゴンの炎に包まれても効かなかったじゃん!」

 確かに言われてみたらそうだ。

「……次はないからね」

 私は今にも振り上げそうな拳をグッと抑えて、ピニー達と一緒に掃除の手伝いをする事にした。

 ロリンは殴ってこない事にホッとしたのか、水面から上がってきたかのように息を吐いていた。

 私が天井の石を運ぼうとしていた時、瓦礫の間に何か挟まっている事に気づいた。

 何だろうと思って拾ってみると、手の平サイズの本みたいな形をした物だった。

『家はあっち』

 表紙にはそう書かれていた。

 「ねぇ、ロリン。これって……」

 私は姉の所に持っていこうとすると、急に『そっちじゃない』と文字が変わった。

「え?」

 もう一度同じ方を向くと、さっきの『あっち』に変わった。

 そして、ロリンの方を向くと『そっちじゃない』に変わった。

「何これ」

 私が右往左往していると、ロリンが「どうしたの?」と言って近づいてきた。

「これなんだけど……」

 私がそれを渡すと、ロリンは「ほう」と興味津々といった顔で持ち上げたり動かしたりしていた。

 そして、例の文字が変わる様子も見た後、ロリンは「これは方位磁石と地図を合体させたやつね」と言って返した。

「つまり……どういうこと?」

「『家』という文字があるから、たぶんこれは家に帰る方向を指しているのだと思う。

 道を間違えたらちゃんと教えてくれるみたいだし……」

「家……もしかして!」

 私の頭の中に一筋の希望が舞い降りてきた。

「これを使えば、チャームの所に行けるんじゃない?」

 この言葉にロリンもハッとした。

「そうか、ムーニーはメタリーナの命令でこっちに来たから……もし家が奴らの根城なら、必然的にチャーム王子がいる事は間違いない」

 私とロリンは喜びのあまり、互いの両手を繋いで飛び上がった。

「そうと決まれば!」

「王子様のもとへ!」

 私が全力疾走で駆け出そうとしたが、ロリンが「ちょっと待ちなさい」と言って引き止められてしまった。

「まずはここの片付けを終わらせないと。彼らばかり働かせるのは不公平だよ」

 ロリンがあくせく瓦礫の撤去をしているピニー達を指差して言った。

「それもそうだね」

 私はすぐにピニー達の所に行って、一緒に石を運び始めた。

 かなり悲惨な状況だから、チンタラしていたら何日かかるか分かったものじゃない。

「うおおおおおお!!!」

 私は腕が二十本あるような気持ちで、瓦礫を撤去した。

 それが功を奏したのか、たった一時間で掃除は終わった。

 瓦礫は全て粉砕された後、自動的に新しい素材を作る装置を使って、ブロックや骨組みの材料を作った。

 飛散したガラスも余す事なく回収して、新しいガラスに作り変えた。

 その他の瓦礫なども別の材料になったりとかして、襲撃される前よりも綺麗になった。

 ピニー達に装置の使い方と止め方を教えたおかげか、彼らは地下以外に襲撃にあった城の廊下や部屋の修繕も短時間で終わらせていた。

 よし、もう一通り片付いた事だし、今度こそ……。

「行こう、ロリン」

 私がそう言うと、ロリンは「あとちょっとだけ待って!」と仮面みたいなのを付けて、耳が痛くなるほどうるさい音を立てながら火花を散らしていた。

 一体何を作っているんだ。


↓宣伝の妖精からのお知らせ

皆様、こんにちは。

わたくし、ピリタンと申します。

前回まではチュピタンという方がこの作品の宣伝をして下さったと思いますが、暫くの間……とはいっても今日だけですが、上の方から謹慎きんしん処分が下されたので、代わりにわたくしが担当する事になりました。


まずは、前回のチュピタンの言動により、ご不快になられましたファンの皆様に深くお詫び申し上げます。


では、宣伝に移らせていただきます。


まずは、この作品のフォローはお済みでしょうか?

もし『まだ登録してない』という方、この作品を応援したいという方がいましたら、ぜひフォローをしてお星様とハートをお送りください。


えっと、ここではこの話の感想を言えば良いのですね?


はい、分かりました……えっと、そうですね。

ムーニーさんが落とされた装置がどう活躍するか、気になる所です。

はい、以上です。

え? もう少し?

そうですね……えーと、個人的にはメタよりもムーニーが好みです。


では、以上となります。

明日からまたチュピタンが担当させていただきますので、よろしくお願いします。

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