少女の魔人

「『火球ファイア』!」


「讌ス縺励>縺ュ縺?シ」


先程から泊里と魔人は激しい攻防戦を繰り広げていた。どうやら泊里は火の魔法が得意な魔女らしい。使っている魔法が火に関する魔法しかない。対して魔人は腸をムチのように操るだけだ。


泊里は何度も魔人の腸を焼いている。だがその度異常なまでの回復力で魔人は腸を回復させている。恐らく回復力に限りはないと思っていいだろう。


「はぁ、はぁ…」


まずい…泊里に疲れが見え始めた。それを感じ取ったのか魔人の攻撃が一層激しさを増した。


「縺ゅl?溘♀蟋峨■繧?s逍イ繧後※縺阪◆縺ョ?」


「くっ!」


魔人の周りを守るように浮遊していた腸が鋭く泊里目掛けて放たれる。泊里はなんとかギリギリでそれを回避した。


「ぐ…」


だが完全に回避出来たわけではなかったようだ。横腹に切り傷のような傷が浅くついていた。その傷からは鮮やかな血が垂れていた。


このまま戦っていたらきっと泊里が負ける…


「泊里!俺があいつの気を引く!その隙にトドメを刺してくれ!」


なんとか俺があいつの気を引ければ泊里の魔法を直撃させることができるはずだ。


「な、何言ってるの!そんな危険なことさせられないよ!私は魔女だけど嶋原君はただの人間なんだよ!」


泊里は凄まじい勢いで襲い来る腸を必死に避けながらそう言った。


確かに俺は普通の人間だ。泊里のように戦う力を持っているわけじゃない。でも


「今はそんなこと言ってる場合じゃないだろ!そのままだとお前死ぬぞ!」


「きゃ!」


まずい!魔人の攻撃が泊里の左太ももを深く傷つけた。その傷からはおびただしい量の血が吹き出している。


「繧?▲縺ィ蠖薙◆縺」縺滂シ」


「泊里!」


「…仕方ないね。嶋原、お願いできる?」


泊里は申し訳なさそうに俺の目を見ている。


「あぁ、任せとけ」


くそ…怖ぇな…もし少しでも失敗すれば俺はあっさり死ぬだろう。だがここで俺が動かなければ二人とも死ぬ。やるしかない!


俺は足元に落ちていた石を広い走り出した。魔人と泊里から少し離れた場所で再び向き直る。魔人はまだ泊里を見ている。そんな魔人に対して俺は石を投げつけた。


「おら!」


投げつけた石は魔人の周りに浮いている腸によってあっさり撃ち落とされた。


「縺雁?縺。繧?s縲∫ァ√→驕翫s縺ァ縺上l繧九??」


「こっちだ!」


そう言うと上手く気を引きつけることが出来たのかゆっくりと魔人が近づいてきた。そしてある程度の距離になると不自然に腸が動いた。来る!そう思った次の瞬間、目にも止まらぬスピードで腸が飛んできた。


「うわっ!」


俺はすんでのところで横に転がることで回避した。魔人の攻撃が命中した地面は先程までとは比べ物にならないほどえぐれていた。


おいおい、さっきより威力上がってるじゃねぇか!


間違いない。一撃でも当たれば死んでしまう。1度の失敗も許せされない。


「もう少しだけ…もう少しだけ耐えてね…嶋原君!」


そう言った泊里は何かを唱えているようだった。きっと呪文を唱えているのだろう。それまではなんとか時間を稼がないと…


「ほらほら、当たってねぇぞ!」


魔人に対して挑発する。魔人は俺に対抗する手段がないと気づいたのか体を守るように浮いていた腸は攻撃をするために魔人の上空で浮遊していた。そして再び腸が不自然に動く。


「おわっ!」


俺は攻撃が来る前に横に飛び退いた。瞬間、先程まで俺がいた場所に大穴が空いていた。


…やばい。全く見えなかった。本音を言えば今すぐここから逃げ出したい。だがここから離れてしまえば泊里が今唱えている魔法を当てることが出来ない。


「ふっ!」


「はっ!」


「ひぃ!」


それから気合いでなんとか数発避けた。だがもう限界だ…


「泊里!まだか?!もう無理だぞ!」


そう言うと泊里はニヤリと笑った。


「ありがとう嶋原君。今ちょうど唱え終わったよ。避けて!」


そう言われて俺は咄嗟に横に飛び退いた。


「全てを葬る神の炎よ。我が仇敵を焼き払え!『神の炎カグツチ』!」


泊里がそう言いながら杖を突き出すと泊里が先程まで放っていた魔法とは比べ物にならない程の威力、熱量の魔法が魔人に降り注いだ。


「よし!」


泊里の放った魔法は魔人に直撃した。いくら回復力がすごいと言ってもあの魔法を受けて無事で済むはずがない。辺りには嶋原が放った魔法によって舞い上がった煙が広がっていた。


「やった!やったよ嶋原君!」


そう言って泊里が俺に駆け寄ってくる。だが俺の目には不吉な影が見えた。


奥からは走ってくる泊里の影が、その少し手前には右半身が無くなっている魔人の影が見えた。


俺はそれをみた瞬間、泊里に向かって走り出した。


「危ない!」


「え?」


そう言って俺は泊里を突き飛ばした。


「きゃっ!」


その瞬間、魔人は口から液を吐き出した。間一髪で泊里はそれを避けることが出来た。だが魔人が吐いたその液は地面にこぼれるとその部分が蒸発するような音を立てながら溶けた。


こ、これは


「胃酸か?!」


「う、うそ…まだ生きてるの?」


泊里の表情は驚愕に染まっていた。


「縺?◆縺?>縺溘>縺?◆縺?>縺溘>縺?◆縺?>縺溘>縺?◆縺?>縺溘>縺溘>??シ」


魔人は何かを叫んでいる。


幸い、半身を失うほどの傷を負った魔人は回復が追いつかずまだ動けないようだった。だが動けるようになるのも時間の問題だ。


「お、おい泊里!今のうちだ!魔法を…泊里?」


泊里はまだ魔人が生き残っていることに余程驚いたのか放心状態に陥っていた。


「泊里!しっかりしろ!」


ダメだ。いくら呼んでも反応しない。このままだと回復してしまう。泊里がダメなら俺が!


「すまん!貸してもらうぞ!」


「え?な、なにを…」


そう言って俺は泊里が持っていた杖を握った。


「だ、ダメだよ嶋原君!魔女でもない人が杖を持ったら魔力を吸い尽くされて死んじゃうよ!」


泊里はそう言っているが杖を握った俺は何ともなかった。泊里はなにを唱えていた?思い出せ!そうだ。


「縺雁?縺。繧?s縺ィ縺雁ァ峨■繧?s縺ェ繧薙°螟ァ雖後>?」


「『神の炎カグツチ』!」


そう唱えて杖を魔人に突き出すと俺の持っていた杖から閃光のような光とともに泊里が放った『神のカグツチ』とは比にならないほどの威力の魔法が放たれた。


「う、うそ…なんで魔女でもないのに…ましてや男なのに…」


これで倒せてなかったらもうダメだ。どうだ…?


魔法によって舞い上がった煙が収まる。そこには既に何も残っていなかった。


「や、やったぞ…」


俺は緊張が切れてその場に座り込んだ。


「はぁ…死ぬかと思った…」


そんなことを呟いていると泊里が目の前に仁王立ちしていた。


「泊里、助かったよ」


俺がそう礼を言う。


「ねぇ、嶋原君。どうして魔法が使えるの?」


泊里はそう言いながら詰め寄るように顔を近づけてきた。


「え?いや、なんでって言われても…杖を持ったら誰でも使えるんじゃないのか?」


「そんなわけないでしょ?!魔女になった人にしか使えないよ!しかも魔女は女しかなれないの!」


「そ、そんなこと言われてもな…」


俺だって分からない。


「…分かった。今から行く場所があるからついてきて」

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