第115話 単独任務

黒猫に呼び出されたので、また何か話があるのかなと思ったら自分一人しか呼んでないみたいで少し警戒していると、黒猫が警棒みたいなものを取り出した。


「……ちょっと持って貰えるか?」

「なにこれ?新しい武器?」

「正解。それの先端をシャドウに押し付けてMPを込めるとシャドウが消える」

「マジ!?

一撃死させれるみたいなものなら自分は相性良いし、テストとかなら付き合うよ」


その警棒みたいなものは、手で持ってみると結構重い。シアリーの身体で重いと感じるということは相当重いんだなこれ。素材は何で出来ているんだ。


そしてこの警棒の機能としては、シャドウの一撃死が可能な武器とのこと。シャドウに押し当てて、数秒するとシャドウを消し去れるらしい。……その数秒の間はダメージ受け放題だからまあ、カチ勢御用達の装備になりそうだな。


「ついでに消し去ってしまうから経験値は得られないしドロップ報酬もない」

「ええ……滅茶苦茶良いなと思ったらデメリットありかい。まあでもこれ以上必死になって経験値稼ぐ必要性も薄いから使ってみるよ」

「……そうだな。試しに1000体ぐらい消し去ってくれないか。

場所は、このシャドウの領域の最奥で頼む」

「了解。まあそういう任務だとは思ってた。

報酬ある?」

「1000体毎に1億ゴールド払うわ」

「よっしゃ。1万体ぐらい消してくる」

「あと他言無用で頼むな」

「了解」


この武器のテスト使用をするみたいな任務だけど、強い敵を連続で消しても大丈夫かとか、耐久性能を測る感じなのかな。……いや待て。それだけならもうちょっと大々的に行っても良いはず。特にふわわさんやゼルさんとかは耐久性能もあるし、自分だけじゃなくても良いと思うんだけど……これたぶん裏があるな。 


というかそもそもシャドウを消す武器、なんてものをタキオン船団が持っているなら既に導入しているはず。黒猫の頭がいくら良いと言っても、タキオン船団が開発出来ないような武器を開発出来るわけない。


ということは、既存の技術でありあわせた武器というわけで……タキオン船団の既存の技術と言えばまあ、ワープだろうな。つまりこの武器は、敵を消す武器じゃなくてワープさせる武器。経験値が貰えないなら、どこか別の空間へ飛ばすだけの武器だろう。


時間稼ぎかとも思ったが、それならそれでこそこそする必要もない。ということは、どこかにシャドウを飛ばしたいというわけで……一応、探っておくか。


「……これを使って、一般人とかに被害は出ないな?」

「……約束しよう。地球組の他のシアリー達にも危険は及ばないようにする」


……この会話、シウラさんに聞かれてない?本当に大丈夫なのか?まあ、やるしかないか。黒猫の指示通り、サポートロイドも連れずにシャドウのエリアの最奥へキャンプ船で移動。その後、キャンプ船がシャドウに乗っ取られないよう、3時間後に迎えに来るよう設定して送り返す。


久々の、完全一人での狩りだな。1体3秒ぐらいで処理できるし、1000体なら3000秒。まあ大体1時間で終わるかな。


敵シャドウのレベルは、最奥だと230レべとかそんなんになっているけどダメージは入らない。このレベルのカチカチじゃないと、この最奥でシャドウをワープさせる仕事は難しいのかな。ふわわさんとかゼルさんは生粋のカチじゃないから、ダメージ自体は入る。


シャドウが群がってくるこの状況、カチじゃなかったら下手すれば簡単にHPが尽きるな。そして群がってくるシャドウを、1体ずつ消していく。何というか、結構簡単な作業だな。飛ばした先は……自分の推測だと、シャドウの本拠地。その中心部に封印されているとかいう、大いなる闇の腹の中。違うかな?


あれの復活が早まったら、タキオン船団は脱出が難しいと考えているからタキオン船団は復活前に宇宙から脱出しようとしている。あとはタイミングの問題だけらしいから、復活の予兆を早めてタキオン船団を早期に動かすことが狙いか。


……たぶん新しい別の宇宙へと通じる穴を作ったら、そこにシャドウは群がるだろう。新しい宇宙はたぶんシャドウなんていないからシャドウの密度が極めて薄いだろうし、餌もたくさんあるだろうからな。


[クロワッサン:2000体送ったら2億ゴールドくれる?]

[黒猫:渡す渡す。

結構いい感じっぽいわ]

[クロワッサン:……何がいい感じなのかは知らんけどあと1000体頑張るわ]


結局、2000体きっちり消したところでキャンプ船が迎えに来たので離脱。報酬としてポンと2億ゴールドを渡されるけど黒猫結構金持ってるな。自分で狩って稼いだわけじゃないだろうから、何か徴収とかも始めたのか?


……あっ、そういえば今船団番号31の税金は一旦全部黒猫に渡ってるのか。その中から幾らかが船長報酬として入ってくるだろうし、お金は大量にあるんだろうな。

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