第111話 カジュアル

このFUO2がゲーム時代だった時、プロフェッショナルとカジュアルの区分はだいぶ揉めた。このゲームは12人のマルチクエストが売りだったわけだけど、プロフェッショナル同士、カジュアル同士しかマッチングしなくなった結果、カジュアル同士で行くエマージェンシークエストは未クリアが多発した。


……よく考えたら幼女同盟ってこれと同じことを先んじてチーム内でやっていたんだよな。基準をクリアすればチーム同士でエマージェンシークエストに行くし、チーム対抗戦に出られるようになるけど、基準未達成なら野良でクリアして来てという超放任主義。


何というか、黒猫がシウラさんに気に入られて情報渡されるようになったのも納得ではある。最終的に少人数でも精鋭が残ったら良いって考えは賛否両論あると思うけど、たぶん幼女同盟の大半は賛成側だと思う。


そのプロフェッショナルとカジュアルという区分が再度起きたことで、掲示板とかではカジュアル煽りが多発。え?君まだ地球に行けないの?という煽りが出回る辺り廃人共は基本的に性格が悪い。


[クロワッサン:そういえばプロフェッショナルになれば地球に行けるってことはこっちに移住して来た地球人も対象なの?]

[黒猫:当たり前だろ。元々地球を捨てる誓約書書かせて移住させてるんだよ。だから移住人数は緩やかというか少ない規模なんだ]

[ABC:その移住して来た人も、プロフェッショナルになれば地球に里帰り出来るよ]

[ゼル:戦力増強目的?]

[黒猫:まあ、そういうことだ。あと移住者の中にはこういうゲームみたいな世界でレベリングしたかった人達が多いぞ。単純な新天地目的はあまりいない]


地球からこのレリックへ移住して来た人は、全員地球に戻らない覚悟もあるみたいでよく移住して来たなと思うけど異世界転生したい人とかはこの話に乗るだろうし、レベリングすれば強くなれるという状況、戦える人なら最高なんじゃないかな。


なお基礎知識がないと初期の惑星でも手こずるというか序盤は選択肢が少ない分、高レベル帯よりシビアなところもあるから死んでる人が結構いる模様。毎回高レベルの人がレベリングの補助を出来るわけないし、仕方ない面もあるんだけど黒猫はだいぶ割り切って考えてるな。


……ゲーム時代、プロフェッショナル側が、カジュアルと一緒にクエストに行ったりレベリングをしたくないという気持ちは分かる。プロフェッショナル同士のマッチングを『希望しない』にするとカジュアルとも一緒に遊べたんだけど、当然ながらクリアタイムは遅くなったし、それに伴い報酬も落ちる。


加えて、両者は常識が違う。お兄さんへのアドバイスで、ユリクリウスはわりと困惑していた。そりゃそうだ。ユリクリウスは回避が上手かったし、PSが高かった。ゲームが現実になった時、誰よりも早く動きがゲーム時代準拠になるよう練習をしていた。だからまあ、ボスの攻撃を食らいまくる想定がなかったんだろう。


……そして自分は、『お兄さん』側の気持ちも分かっているつもりだ。だって回避出来ないからカチになったんだもん。もちろん、回避せずに敵の攻撃を受け切る先輩カチ勢達に憧れたのもあるが、PSが最初は低かったこともカチ勢転身の理由だ。


カチ勢になってゴリ押し戦術を身に着け、対人戦についてはある程度のPSも身に着けたつもりだけどユリクリウスのような変態機動が出来ていたわけではないし。……『お兄さん』に防御特化勧めようかなあ。PSの差を埋めようと思ったら、タンク役というのは1つの選択肢だ。


[クロワッサン:お兄さんさんにはカチ勢なるの勧めようかなあ]

[ユリクリウス:今からカチ装備作るのは火力装備作るより地獄だろ。まず素材屋が防御やHPはかなり少ないしな。お前のその装備、どれだけの周回数とリアルマネーが注ぎ込まれてると思ってるんだ]

[クロワッサン:……自分は練習しても上手くならないから膨大な時間をかけて素材揃えてカチ装備作っただけなんだよなぁ。正直、普通の火力装備なら条件クエストクリア出来てる気がしない]

[ユリクリウス:そのカチ勢特有の立ち回りも基礎的なことを身に着けるまでは酷かったけど、今はちゃんと出来てるだろ?火力装備だったとしても何回かチャレンジすればクリア出来てるだろ。……何か病んでる?]

[クロワッサン:ちょっとだけ自己嫌悪してた]

[ユリクリウス:まあ俺も二刀流拾った時はそんな感じだったけど……細かいことは気にするな]


ユリクリウスと個チャをして、ちょっと気分が晴れたので『お兄さん』にカチ装備を勧めるといつものノリだと勘違いされたのか断られた。……いやまあ、今からプレイスタイル自体を変更するのも地獄だろうしね。クリア出来るのは何時になるか分からないけど、あの真面目さならそう遠くはない内にクリア出来るでしょ。

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