第105話 軍国主義

どうやらタキオン船団が逃げようとしていることは一部の地球組にバレ始めたため、前回集合した面子の誰かが口を滑らせた模様。というわけで前々回、イベント前に集まった8人だけが船長室に集まり、今後の方針について確認する。


「この中の誰かが口を滑らせたとかは考えないんだ?」

「というか本当に黒猫だけが知っている状態だったのか?他の船団の船長から地球組に知らされた可能性もあるだろ?」

「他の船団の船長が地球組に知らせる必要性が皆無だし、そもそも誰が漏らしたのかはおおよそ検討がついてるからな。というかお前ら2人、前提条件から疑う姿はそっくりだな」


可能性として、自分はこの中の面子が漏らした可能性と、ユリクリウスは他の船長が地球組に漏らした可能性を挙げたけど両方黒猫に否定された。というかもう犯人分かってるらしい。どうやら船長という役職は、全てのチャットを閲覧することが出来るそうで……やっぱタキオン船団って監視社会だなあ。


「……で、これからするのが戦況の話だけど……ぶっちゃけ人手が足りてない」

「知ってた」

「どうするの?」


例のシャドウで黒く塗りつぶされたマップを表示して、黒猫が言う事は単純。人手が足りていない。強いシャドウをぶっ殺すよりも、とにかく数を倒すことを求められているっぽいねこれ。だからこそサポートロイドの大量投入なんだろうけど……。


ゼルさんがどうするのと問うと、黒猫は非戦闘組から戦闘組に戻す人を増やすのと、単純にレリックへ移住して来た地球人をシアリーとして徴兵するとのこと。切羽詰まってるなあ。


「……強制徴兵して戦ってくれるとは思えないんだけど。というか何この軍組織」

「ああ、銀河にいる別のコミュニティとの戦争のために軍隊組織しないとアレだから軍隊組織する」

「ふぁー」


あとどうやら将来的に軍を持つようになるそうなので移住して来た地球人とかどういう反応するんだろうとちょっとワクワクして来たよ。いやまあタキオン船団を除くほぼ全てのコミュニティから宣戦布告されてもおかしくないし、何ならタキオン船団がいなくなった瞬間に宣戦布告されそう。


「……それって周囲の戦力から宣戦布告されるからか?」

「宣戦布告してくれるといいな」


ユリクリウスも同様のことを考えたっぽいけど、それに対する黒猫の返答があまりにも明確に現状を示していた。……宣戦布告されるって幸せなことなんだな。そうだよな。全銀河の敵にわざわざ自分から攻めに行きますって宣言する勢力なんて無いわ。


全方位から敵意向けられているとか、シャドウをどうにか出来たとしてもその後が苦しそうだ。宣戦布告無しで殴りかかって来そうな勢力が、最低でも2つはあるようで現状地球はかなり危険な状態らしい。まあ時々シャドウが降って来てるし、タキオン船団に歯向かった国がボロボロになっていってるから既に危険だけどね。日本も結局超がつく不景気に突入してるし。


「強力な軍隊を持って反撃出来るようにしておかないと、地球なんて一瞬で植民地だぞ。……外交で平和を達成出来るとか抜かす奴は全員相手国に送りつける」

「それ地球の人達結構な数が該当しそうな気がするんだけど……あと、タキオン船団って軍隊持ってる?」

「大量のシアリーに、母船はこれ一応戦艦だぞ。アホみたいな威力の主砲があるだろうが」


黒猫によると、最低限見せかけの戦力は必要なようで……そういえばガ〇ダム生産工場とかを建てていたの、そういうことでもあるのかな。


ゼルさんがタキオン船団の軍について聞くけど、この今いる母船が一応戦艦でもあるようで……耐久力はすさまじい上にそう言えば主砲もあったなこの船。


こんな船が31隻もあるから、現状襲い掛かって来ない別勢力だけど……もしかしてタキオン船団が脱出したら母船が30隻丸々無くなるから軍量が1/31になるの?そりゃ周辺国も喜んで襲い掛かって来るわ。


……というわけで今回の集まりで共有されたことは、母船をこれから作れるようにしていくからそのうちここに居る面子は船長になるということ。あとは地球人にシアリー適性があることは分かっているんだから、ニートを許さずマンパワーを使い始めるってことかな。政治体制は明言してないけど、タキオン船団が去った後は黒猫の独裁だろう。


ぶっちゃけ戦時なのに一々全員で合意とかとってる時間ないし、黒猫が独裁してくれるならそれで個人的には問題ない。これで移住してくる日本人達が政治活動とかし始めたら、黒猫の性格的に面白い事になりそう。


……というか現状既に黒猫が独裁していることに対して問題提起している人とかいるんだよね。自分的には過激な対応してくれても、融和的な対応してくれてもどっちでも良いんだけど……あの人の性格的に過激な対応になりそうだなあ。

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