第92話 天の川銀河

「ちなみにこれが今地球の周囲の状況な。黒く塗りつぶされているところがシャドウの巣窟になっている領域」

「……分かってはいたけど地球にシャドウが来ているから、天の川銀河のほとんどは真っ黒なんだ」

「何でこれで地球側はシャドウの存在に今まで気付かなかったんだ?」

「天の川銀河だけでも直径10万光年ぐらいあるぞ。つまりはまあ、既に起こっていたけど観測出来ない状態だった、ってことだな」


黒猫から、何か銀河のマップを渡されるけど地球に隣接している星系も真っ黒になってるし現在進行形でどんどん黒い範囲が広がっている。いやこれ足止めすら出来てなかったのかよ。


ユリクリウスの言った通り、地球にシャドウが到達しているからその周辺地域もわりと真っ黒なんだな。何でこれで地球側が気付かなかったのとユリクリウスに疑問をぶつけると、光が宇宙空間では遅いということを教えられる。地球がいる天の川銀河でも直径10万光年ってことは、光の速さでも端から端まで10万年かかるということで……。


だとすると、シャドウの増殖速度ってえげつないんだな。惑星間の移動は光速超えてるというかワープしている感じ。……サポートロイドの量産で、何とかなるのかは怪しいところ。そして黒猫は、タキオン船団の別宇宙逃亡について、手助けする方針を固めているみたいだ。まあ反抗出来ないというのも理由の1つだろうけど、それ以上の理由がコイツにはある。


……黒猫より上の存在が全員別の宇宙にいなくなるということだから、このタキオン船団の離脱が成功すれば黒猫はこの銀河のトップに立てるということになる。現状では滅びゆく銀河のトップの地位だけど……何とかすることが出来れば、文字通り銀河の支配者になるだろう。


「え?ということは幼女同盟とかいうヤバイ名前の組織が全宇宙のトップに立つの?」

「一応俺は形式だけでも船長だからな。タキオン船団が丸々逃げ切った後は俺がトップだぞ。……だからまあ、地球組殿案には協力するつもりだが、ここに関してはタキオン船団と一緒に逃げたい奴は逃げて良い」


ふわわさんも自分と同じ発想に至ったみたいだけど、黒猫は特に否定することもなく。……一緒に逃げるという選択肢はないかな。そもそもその別宇宙が安心安全というわけでもないだろうし。


基本的には終始重苦しい感じだった話し合いというか会合は、後味の悪い感じで解散となり後は各自自由行動。一応、別宇宙に逃げる時期というのは掴んでいるみたいでおよそ半年後らしい。大いなる闇の復活があと10ヵ月後ぐらいだっけ?その前には逃げ切る感じかな。


ということは、それまでタキオン船団はイベントを開催してFUO2の延長感を出しつつ、逃亡の準備を計るというわけで……殿務めるのも嫌だけどまあやるか。


[クロワッサン:大量にパーティー組んでサポートロイドのパワーレベリングやる人募集]

[ユリクリウス:乗るぞ]

[ゼル:5パーティーぐらいで行く]

[ABC:相乗りしたいです……]

[時雨:百人単位になりそう(≧▽≦)

何十人か派遣するね('ω')ノ]

[黒猫:全部クロワッサンが敵吸えそうだし1レべ大量に派遣するわ]

[クロワッサン:……ヘイト上昇力は新スキルで更にあがったけど確実にお漏らしはするから強い方のサポートロイドも派遣しろよ]


大量の1レべのサポートロイド達をレベリングするため、共同でパーティーを組む誘いをチームチャットに投げると多くの参加希望が来るけど中にはサポートロイドだけ派遣する人も出て来た。もはやそれ寄生なんだけど強い方のサポートロイドも派遣してくれるならまあ良いか。


軽い気持ちで脅威度の低いシャドウの本拠地に集結させると、数百人規模のサポートロイド達が。なおプレイヤー本人が来たのは自分とユリクリウスとゼルとABCのみである。


[クロワッサン:自分のサポートロイド達は全員ソードマンさせるから、他のサポートロイドは全員遠距離職に変えといて]

[黒猫:しゃーねーな]

[ゼル:私もメインメイジに転職しとこっと]

[ユリクリウス:サポートロイド全員カチ勢にする意味あるか……?]

[クロワッサン:軍隊育てるならまず前衛からだろ]


シャドウも大量に出て来るけど、自分がほとんどの敵を集約させるのでサポートロイド達のレベリングは非常に楽なものとなった。ユリクリウスとかゼルさんとかは高いレベルのお蔭で、脅威度の低いところならシャドウからの攻撃を庇える盾になるし、わりと安全にレベリングは出来るな。


……それにしても、射撃職で揃えたサポートロイド達が一斉に射撃してシャドウを駆逐していく姿を見るとたぶんこれが黒猫のやりたいことなんだろうなあとよく分かる。プレイヤーよりもサポートロイドの方を信用する黒猫と、初心者を一から支援し教育しているふおにの森のシャルルさん。どちらが正しいかは、結果でしか語れなさそう。

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