第18話 船長面談

眼前に座るシウラさんは、優雅にコッペパンの用意したお茶を飲むけど組織のトップと急に1対1で相対するのは中々に緊張する。……シウラさん、間近で見るとかなりの美人さんなんだよな。


「とりあえず武田様は止めて欲しいです」

「わかりました。ふむ。何故今のタイミングで?と聞きたいようですが、単に重要な人と強い人から面談していたら今のタイミングであなたとの面談になっただけです」

「……自分より先に面談した人って教えてもらえますか?」

「各鯖の1位チームのチームリーダーと黒猫様を除けばライト様、モルモット様に続き3番目ですね」

「7鯖のモルモットさんそんなに強かったっけ……?

あ、アブダクション生還組か」


このタキオン船団の船長ということは、実質国のトップ、企業でいう社長との面談ということになる。就活の時の社長面接を思い出したよ。もうその企業も日本も滅びているっぽいけど。


どうやらこのシウラさんから、自分は全鯖で3番目の強さだと思われているみたい。ユリクリウスの方が火力は絶対にあるが、二刀流でも自分にはダメージがそんなに入らなかったからな……。ダメージ割合カットは至高。


ライトさんがトップなのは納得できるとして、何で7鯖のモルモットさんが2位なんだろうと思ったけど、そう言えばアブダクション生還組か。30組中7組の中で知っている人は、自分達を覗くと3鯖のアクアさん、7鯖のモルモットさん、15鯖のR3さん、22鯖のぶんぶんさん。


たぶんモルモットさんはユリクリウスやアクアさんみたいになんか凄いスキルを拾ってるな。元々モルモットさんも7鯖ではトップクラスには入るプレイヤーだったから聞き覚えはあるし、そういう人が凄いスキル拾っているなら全鯖でトップクラスになるのは分かる。


一桁ナンバーの鯖は、サービス開始直後からあったから古参が多いんだよね。その後に人が増えて11鯖から20鯖が出来て、最盛期には21鯖から30鯖が出来た。その後はひたすら人が減少したけど、他ゲームで聞く鯖統合とかはなかったな。


まあ最初からこの状況にする予定だったなら、鯖統合がなかったのも分かる。うーん、マジで戦力としてこの世界に引き込んだのかは気になる。あと戦力として引き込むのに、初心者や初級者までセットで連れて来た理由も気になる。


「あの、どうして初心者や初級者まで引き込んだんですか?」

「身体は用意してしまっているので、1人でも多くの人を連れ込んだ方がその中から英雄の発生確率は上がるでしょう。

こちらからの質問ですが、貴方は大いなる闇との戦いに挑む勇気はありますか?」

「……ゲームと同じ仕様なら一撃で100ダメージ程度。大技でも1000ダメージ程度。勇気がなくても戦える範囲です」

「……なるほど。貴方の性格、思考は分かりました。」


シウラさんからの質問は、大いなる闇との戦いについてだった。いやラスボスに命をかけて挑む勇気はあるかと問われれば皆無だけど、ゲームと同じ仕様なら恐らく死なない。つまり、勇気がなくても戦うことは出来るな。


そのことをそのままシウラさんに伝えると「人間らしくて良いと思いますよ」とか言うけどそれ人間じゃない存在の常套句。自分が人造人間の身体に魂を入れられた人擬きであることはもう把握してしまっているが、シウラさん本人も滅茶苦茶強かったはずだから人じゃない可能性や黒幕の可能性が捨てきれない。


その後も性格や趣味嗜好に関わることについて、何個か確認されるけど人となりを見に来ただけとは思えない。やることなすこと全てに意味がある完璧超人シウラさんだぞ。絶対に何かある。


「では最後に、貴方はこの世界を楽しめていますか?」

「……FUO2プレイヤーの上位勢で楽しめていない人はいないと思いますよ。少なくとも自分は楽しめています」

「新しくサポートロイドを買おうとするぐらいですものね。

それでは今日はありがとうございました。お見送りは結構です」


……と思ったけど、最後の質問で単に落ち込んでいる人とか気後れしている人がいるか探しているだけのように感じた。あと、面談が終わったらサッと次の人のところに向かうようで、一瞬で消えてしまった。それと同時にユリクリウスがチームチャットで叫んでいたので、ユリクリウスのところへ行ったのだろう。元々結構な課金勢の1人だったユリクリウスだけど、シウラさんの評価では全鯖で4番目の強さか。


さて……。


「『チャイナドレスS:緑』も良いなー。いやせっかくだしレイヤリングウェアを重ねてオリジナル感だそうかな。『ニーソックス:白』と『指ぬきグローブ:白』と……」

「……マスターって先ほど勇気がないとおっしゃいましたけど、かなり強心臓ですよね?」

「ゲームの世界ですら死ぬのが嫌だったからカチ装備作ってるやつに勇気なんてないし強心臓なんてナイナイ」


シウラさんも帰ったことだし、ロリっ子作成を再開。せっかくだしコッペパンに合わせてチャイナドレス姉妹も良いかと思ったけど、清楚なメイド服とかも良い感じに似合いそうだから迷うな。やっぱりキャラクリは、ある程度仕上がってからの着せ替えタイムが一番楽しい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る