第13話 防衛戦

さて、採掘ステーションの大きな採掘装置はこの地域だと1番から3番までの3本。ユリクリウスが東の1番、ライさんは南の2番の敵を殲滅しつつ、西の3番の敵に遠距離魔法を当ててヘイトを稼いでいる。となると、自分のやるべきことはボス敵を引きつけつつ、3番の装置に被害を出さないよう立ち回りつつ、3番に群がるシャドウを適度に狩ることかな。


ライさんからユリクリウスと自分を除く、その他全員に対し、3番で防衛するように指示が出るが当然反発する人が出て来る。こいつらほぼ全員が50レべから60レべ代だから居たらむしろ邪魔なまであるけど、全員で力を合わせれば3番に群がるシャドウを1匹ずつ倒すことも出来るだろう。


「何でレベルが上がらないのよ!きゃぁ!」

「あぶねえ!」


ふと、さっき言い争いしていた2人が目に入ったけど41レべの方は戦う気もないみたいだ。完全に寄生プレイをしていた人の思考だな。……救う価値はないに等しいけど、目の前で死なれたら目覚めが悪くなるので身を呈して助ける。


しかしそのせいで、ボス敵の高威力遠距離攻撃が飛んで来た。躱したらこの人が一撃死するからHPで耐えるしかない。うげ、50も減った。


「戦う気がないなら隅っこでメカハンターと戯れてて!装置の周囲で戦うな邪魔!」


流石に死が眼前に迫って文句や反論を言う気はなくなったのか、自分が指示を出した後は一番弱い敵のメカハンターを引きつけて攻撃し出す41レべの人。これでまあ、一先ずは安心か。1番の装置は寄って来るシャドウをユリクリウスが全滅させていて、装置に傷1つ付けてないし、2番の装置は多少攻撃を受けているけどライさんが3番の装置の敵まで引きつけているからよく戦っている方だ。


なお3番の装置はその他20人ぐらいで戦っているけど被害が半端ない模様。よし、引きつけていたボス敵は倒したから雑魚掃討するか。


……!?!?!?


「頭の爆弾を破壊して!」

「は?

ああああああああああああああああああああ!」


しかし自分が介入しようとしたところで、一部の人がメカハンターの頭を破壊せずにHPを削り切ってしまい、爆発が起きる。さっき怒鳴っていた、65レべの人がやらかしているとか、もう何を信じたら良いんだ。


メカハンターは頭に爆弾を搭載しているから、頭の部位破壊をしないと爆発してしまう。ちょっとまて、何でそんなことまで知らないのに脅威度高いところ来ているんだよ!65レべでしょ!?


……流石に今のは、援護できない。このゲームの高難易度クエストは、わりとギミックもあるので思考停止でプレイは出来ない。これは懇切丁寧に一から説明しないと戦力にもならないぞ。


そこから先は、地獄絵図だった。シアリー側がバッタバッタと死んでいく。忠告をした人も、爆発の巻き添えを食らって死んだ。ついでに自分も巻き込まれた。ダメージ倍率が高いから1発で30ダメージも入ったよ。それが2発。60レべから65レべまでの並みの耐久ならまず死ぬ。


更に装置は破壊され、シャドウの攻撃は2番の装置に集まる。一部始終を見ていたライさんは「嘘でしょ……」と呟いていた。……自分が火力特化なら、防げていた事故ではあるんだよな。


いや、どちらにしろ誰か1人はボス敵を装置から引き剥がす役割をしないといけなかったし、別にボス敵を倒すスピードが遅かったわけじゃない。結局のところ、知識不足の人が足を引っ張った形か。


[クロワッサン:テトラスの脅威度高いところはどんな感じ?]

[黒猫:おー、ふおにの森のメンバーが張り切って狩ってるからめっちゃ楽。20人ぐらいいるしな。棒立ちのままガンガンロケランを撃てるの楽しいぞ]

[ユリクリウス:他鯖の人はいない?]

「黒猫:いないな。たぶん別の惑星に配置されてると思う」


一息入れられるタイミングになったころには、自分とユリクリウスとライさん以外の人は2人しか残ってなかった。その2人の内の1人は、さっきの41レべの人。もはや途中から1番の装置の後ろでずっと泣き続けているけど、その行動が一番ありがたいという紛れもない事実。


もう1人は、75レべの人だから最盛期を過ぎても少しはプレイしていた人か。クラスはガンナー/アーチャーと遠距離特化。爆発から一番遠い位置に居たから死ななかったんだろうね。


その後、ライさんが1番の装置担当、ユリクリウスが2番の装置担当に切り替わって無事に1時間守り切ったところでエマージェンシークエストは終了。スコアも表示されるけど当然のように1位はユリクリウス。倒した敵数が圧倒的過ぎる。2位はボス敵を全部狩ったからか自分だね。


「ありがとうございました。お2人がいなかったらたぶん失敗しています」

「こちらこそありがとう。中級者の育成は早急にやらないと不味いね……」

「これ、俺が魔法職使ってたら何とかなったか……?」

「無理だと思うよ。メカハンターの頭爆発させてたもん」

「はぁ!?」


ユリクリウスは3番の装置壊滅までずっと東の1番を守っていたから、西の状況が分かってなかったみたいだけどメカハンターの頭を爆発させていたことを告げると頭を抱えた。まあそれほど、上級者からすればあり得ない行動を取っていたということだな。


……今回のエマージェンシークエストで、たぶん多くの人が死んだと思う。初心者から中級者の育成までの育成は、ちゃんとして行かないとこれからどんどん死にそうだ。

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