第12話 エマージェンシークエスト

徐々にタキオン船団の生活にも慣れてきた頃、それは唐突に起こった。


『エマージェンシークエスト発生!採掘ステーションにシャドウの軍団が接近中!対象惑星は惑星テトラス、惑星サマーリアです!』


マイルーム内でくつろいでいる最中でも、警報が鳴り響く。ゲームが現実となってから、初めてのエマージェンシークエストだ。内容は惑星にある採掘ステーションが襲撃されるというもの。対象惑星によって難易度は変わるけど、テトラスは高難易度でサマーリアは低~中難易度ぐらい。


自分は当然高難易度に行くべきなんだろうけど、今のボリューム層である低~中難易度に挑む人がどういう状況か確認したいし、サマーリアの方へ行こう。ユリクリウスを誘って、いつも通りの2人パーティー。サマーリアの採掘ステーション防衛ならゲーム内だと2人でクリアもしたことあるし、周囲がどうであろうと何とかなるだろう。


チームメンバーにも事情を話して惑星サマーリアに移動しようとすると、惑星サマーリアの中でもシャドウの脅威度が高い地域から低い地域までを選択できるようでここは脅威度が高い地域を選択。出て来る敵は80レべぐらいらしいけどそれなら何とかなるかな。


キャンプ船でサマーリアへと向かい、採掘ステーション前に到着すると、なんか12人では収まらない程度の人がいた。20人ぐらいいるね……?


まあエマージェンシークエストだし、ゲームの様に12人限定にする意味もないか。そしてキャラ情報でクラス編成を見て回っていると、あることに気付く。装備が見れるのだ。


[クロワッサン:あれ、装備が見れる]

[ユリクリウス:それ、21レべ以上下の人だと装備が見れるらしいよ。120レべからだと99レべ以下は見れるし、123レべなら102レべ以下を見れる]

[クロワッサン:同格なら見れないって感じか。うわ、未強化のレア度50代を担いできてる奴がいるんだけど]

[ユリクリウス:まあこれだけ人数いたら大丈夫だろ……]


「失礼、幼女同盟のユリクリウスとクロワッサン?」

「ん?あ、ふおにの森のライさんか。120レべいるなら寝てて良いな」

「今は122レべです。中級者の様子を見に来たんですが、指導する人とかいないんでしょうね……」

「未強化装備を身に付けてエマージェンシークエスト来た人見かけたからびっくりしたよ……」


装備を見て、中級者の状況が思っていたよりも不味いことを確認していると、ふおにの森のライさんが話しかけて来た。ライトさんと混同されることも多いが、こっちは普通の微課金勢でアバター名は「lie」だけどめっちゃ誠実な人。ふおにの森1の1軍メンバー12人の中に入っているので当然強い。クラスはゴースト/キャスター。


物理攻撃を半減するゴーストのクラスはHPを盛れれば存在そのものが強い。キャラクター本体のHPも半減するけど、特殊能力で盛ったHPは半減しないし、魔法攻撃はメイジに次ぐ火力が出る。耐久寄りで火力も出すという思考は自分と似ているし、何回かカチ装備談義はしたことのある人だ。


「おいてめえ!脅威度高いのに何で41レべで来てるんだよ!装備も全部未強化じゃねえか!」

「ゴールドがないから仕方ないでしょ!このクエストは経験値が美味しいの知ってるのよ。このクエストが終わったら強化するわよ」


なんか怒声が聞こえて来たが、怒鳴っているのは65レべで装備もスロット5まで拡張している5年前に前線に居そうな人。怒鳴られている方は受注制限ギリギリの41レべで、未強化装備を担いでいる人。


懐かしいなあ。高難易度クエストが増えて来た5年前、嫌というほど見た光景だ。ただHP全損=死になった現実でも未強化装備担いで来る人がいるとは思わなかったよ。


そしてゲームの時のように、非戦闘エリアというものは存在しない。送られた20人、直で戦闘エリアへ転送される。おお、採掘ステーションの大きさは実際に見るとヤバイな。まあ惑星の魔力を吸い上げている装置だから大きいのは当たり前だけど。


転送から間もなく、シャドウが湧いて出て来るけど未だに中級者組と初心者組の言い争いが終わらない。……やばいな、80レべ台が出るとは聞いていたけどこいつら89レべあるじゃん。65レべでしっかりした装備の人も41レべで未強化の人も、みんな等しく一撃で死にそう。


こいつらを送り込んだオペレーター共は何をしていたんだと思ったけど、脅威度選んだのはこちら側ですね……。脅威度を選ぶタイミングでもオペレーターに質問は出来たわけだし、実際に自分とユリクリウスはオペレーターから「この惑星で確認されているのは最高でも80レべ代の敵なので、お2人であれば脅威度が高くても死ぬことはないかと」と言われている。うわ、ゲームの時よりか明らかにシャドウの数が多い!


「ユリクリウスさんは1番をお願いします!僕は2番を守るので!」

「自分は!?」

「ボス敵の引きつけをお願いします!」


ライさんから指示が出るが、従う意味はない。でも従わない意味もないので素直に言うことを聞く。そもそもライさんはふおにの森の指示出し係みたいな存在だし、指示もわりと的確なので文句はない。少なくとも、この3人で役割分担はするべきだろう。

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