第8話 課金勢

自分とユリクリウスのパーティーにライトさんとらんらんさんが加わり、パーティーリーダーはユリクリウス。このゲームは4人までのパーティーが組めたけど、現実となった今でもパーティ人数は4人までのようだ。


「クエストは何でも良いですか?」

[ライト:どこでも良い]

[らんらん:喋れライトォ!]

「ええ……普通に喋った方が早くない?」

「だよね?ライトはこの世界になってからもずっとチャットだけど」


受付嬢のいるカウンターへ行き、クエストを受注するのはパーティーリーダーの役目だからユリクリウスがどこでも良いかと聞いて来たけど、あれはたぶん惑星ドゥームズの探索任務を受けるつもりだろうから自分からの要望は特にない。


……ライトさんがずっとチャットで喋りかけて来るのは最早コミュ障ってレベルじゃないけど、ログが残るし聞き間違いとかがないから自分もチャット機能で喋りたくなる気持ちは分かる。ただ、普通に喋った方が早い。


まあもしかしたら声が変な設定のままという可能性もあるし、意思疎通ができるなら何とも思わないけど。このライトさん、課金額は最低でも累計6000万円overと比較的ヤバイお方。自分は高校の頃からアベレージで年間60万円ぐらいだから、合計で400万ぐらいしか使ってないけど、ライトさんは年1000万ペースで6年間ずっと最前線でのプレイしているから色々とヤバイ。


というか年1000万ってどの辺に課金しているんだろうと前に聞いたことがあるけど、普通の課金勢ではまず買わない、重課金勢でもほぼ買わないレアドロップ率+400%を高い金額でまとめ購入していた。いやレアドロップ率+200%や+300%が無料で大量に配られているのに、そこに課金する意味はあるの……?


ただまあ、そういう無駄な課金が出来るぐらいにはほぼ全ての課金要素で大金を突っ込んでいる上、細かい仕様も把握しているから装備も当然10スロット変態仕様。具体的にはMPが400を超える。自分のMPは200程度だし、ユリクリウスや火力特化型の廃課金でも大体が250ライン。300を超えたら変態と呼ばれるMP盛りの世界で1人MP400の装備を用意できるのは頭おかしい。


このMPはあればあるほど、技や魔法を使用し続けることが出来る。ライトさんのクラスはメイジ/キャスターという、魔法攻撃しか考えていないアタッカーだ。MPがあればあるほど継戦力が上がるし、火力も群を抜いているからチーム対抗戦や鯖対抗戦の時は圧倒的エースです。ライトさんがいると、ひたすらに戦場を電撃や氷塊が走る。


MP回復速度も早いし、息切れをしない魔法使いはまあ恐ろしい存在だ。そんなライトさんの付き添い人であるらんらんさんはアーチャー/キャスターという完全にサポート特化なクラス編成。攻撃弱体化の弓矢を撃ち込み、防御弱体化の呪符を使い、支援魔法や状態異常回復魔法で補佐をする。特にキャスターの状態異常回復魔法は、状態異常を回復するとMPの回復速度が上がったり攻撃力が上がったりする。マジ便利だしライトさんとのペアになっているのはよく見る光景だ。


ついでに課金者同士、どれぐらい突っ込んだかというのは分かるんだけど、らんらんさんはかなり微課金よりの人。たぶん月2000円とかその程度じゃないかな。それで第一線で活躍していた人だから頼もしい。……いやでも月2000円でも10年プレイ勢だから24万円ぐらいは使ってる計算になるのか。


「前回アブダクションを受けた惑星ドゥームズの探索任務にしました。

……やっべ緊張して来た」

「2回目もアブダクションされるなら毎回アブダクションを覚悟した方が良いね。

ただタキオン船団も対策をアップデートしたらしいし、しばらくは来ない可能性もある」

[ライト:二刀流拾いたい]

[らんらん:私も緊張して来ました(*´꒳`*)]


ライトさんがチャットで喋るから、らんらんさんもチャット勢になってしまった。らんらんさんせっかくの可愛いキャラ声が勿体無い。というかこの世界、今気づいたけど女性率が高いから男性視点ハーレムだな。


確か、ゲームをプレイしている層は男性8割女性2割。ゲームの中の性別は男性2割女性8割。中身男性の女性が多いハーレムって需要どこだよ。というか今気づいたけどチーム幼女同盟はユリクリウスと自分以外全員アバターは女性だから外から見たらユリクリウスが完全に黒一点だ。自分はもう、完全に女の子にしか見えないし。


クエストを受注して、キャンプ船で移動するまでは前回と同じ流れ。今回はライトさんとらんらんさんがいるからちょっと賑やかだけど、このキャンプ船とんでもない速度で移動というかワープするので、ものの15秒で惑星ドゥームズに到着する。ゲーム的な都合かと思っていたキャンプ船待機15秒だけど、本当に15秒だったのか。


そして今回はアブダクションが起きないので、惑星ドゥームズの大地にそのまま立つことが出来た。日本の昔ながらの街並みが続いているような感じだけど、基本的に住む種族が鬼で大きいから建造物も大きく感じるな。


『北にシャドウの反応があります。殲滅をお願いします』


寺みたいな建物もあるなと周囲を見渡していると、オペレーターの人から連絡が入る。ゲームだと同じNPCで可愛い声だったけど、完全に別の人の声だね。


探索任務なので、この北にいるシャドウの殲滅はすぐに達成しないといけないわけではない。たぶん拠点みたいなのが生えているだけだろうし、釣りとか採掘とかして良いかな?


[ライト:釣りが今までのように秒で釣れるとは思えないからさっさとシャドウ倒す]

「俺も直接シャドウの拠点叩くだけで良いと思う。採取系はもうちょっと時間ある時にやろうぜ」

「それもそうか。

らんらんさんはボス直で良い?」

[らんらん:早く戦いたい]

「らんらんさんも戦闘狂だった……」


少し話し合った結果、採取系はあと回しにしてシャドウの拠点を叩くことに。ゲームの世界ではポットのような拠点を送り付けて、そこでシャドウを繁殖させるというのが大いなる闇のやり方だったけど、現実でも同じ感じなのかな?

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