第5話 メカビートル

メカビートルが吠え、戦闘態勢に入る。120レべのメカビートルは体力が大幅に増強されていて、ゲーム時代も12人でタコ殴りにしないと結構時間がかかった。それなのに126レべで登場してるとか、2人+サポートロイド2人で倒さないといけないとか、本当に不味い。


「アブダクションに何でボスキャラがいるんだよ!」

「知らねえよ!ここが拠点だからだろ!?

くそ、ウォークライ!こっちだ!」


ユリクリウスが思わず叫び、距離を取るが当然の行動だ。このゲームのレベル差は結構大きい上、ボスキャラは基本的に一撃死があり得る。死んでもすぐに復活出来るゲームと違い、今は現実。しかも蘇生アイテムがなくなっているんだから距離を取るのは間違ってない。


自分も速攻でヘイト上昇スキルを使用し、自分が攻撃するが全く効いていない気がする。このメカビートル、120レべでHPは12億ある。単純計算で126レべなら13億はあるな。12人で倒すようなボスだから、この体力は絶望的な数字だ。


「GGGGGGGGGGGGUUUUUUUUUUUUUUUUUUOOOOOOOOOOOOOOO!!」

「ヤバイって、何でいきなり最終砲撃とうとしてるんだよ……」

「全フィールド攻撃って俺に死ねってことかよ!?」

「よし、落ち着け。自分の影に隠れろ。現実なら恐らく放射状だ」


そして唐突に、メカビートルは飛び上がり奇声を発してエネルギーを蓄え始める。本来はHPが残り2割を切った時の、メカビートルの特殊行動だ。内容はフィールド全面にエネルギー砲を発射すること。紙耐久は即死。並み耐久でも死ぬ。クリティカルが多ければそれなりに耐久盛ってても死ぬ。


ゲームなら逃げ場などないので、その前にメカビートルの眼前にあるエネルギー球を破壊する行動が必要になるが……恐らくあのエネルギー球、HP1億近くはあるはず。そんなの2人で発射前に破壊し切れるわけないでしょ。12人でもたまに失敗するのに。


なのでユリクリウスとコッペパンとサタンちゃんを守るようにして立ち、エネルギー球が眼前に落ちて来るのを待つ。大きな剣を盾にして、少しでも衝撃波が後ろに伝わらないようにする。直後、巨大なエネルギー球が目の前に降ってきて破裂した。


赤い衝撃波と共に、HPがゴリゴリ減っていく。一度のダメージ発生で130程度HPが削れているな。そのダメージ発生が10連続で起きてHPは1300ほど減る。その後すぐに回復していくけど、これ生半可な耐久力なら一度のダメージ発生で1000は減るから合計で10000ダメ。当然即死だ。


「大丈夫だったか⁉︎」

「こっちはダメージ発生が無かったから大丈夫だ。

というか未だにゲーム内でトップクラスの威力の最終砲を受けて何でHP半分以上残ってるんだよ……」

「回復薬オートが起動するような体力にもならなかったぞ」

「こっわ。

と、それよりダウン状態だ。攻撃入れて来る」


後ろを振り返るとユリクリウスとサポートロイド達の無事を確認する。まあ物理的に衝撃波が届かない範囲だったからゲームとは違って生き残れたのだろう。その後、最終砲を撃ったメカビートルはダウン状態に入る。


この最終砲モーション、メカビートルの眼の前でエネルギー球を破壊してもDPSが足りなくて撃たれても、メカビートルにもダメージが入る仕様にゲームではなっていた。その後のダウン状態はボーナスタイムであり、ダメージ量が倍増する上に急所である角の根本部分が露出する。まあ第1章のボスだけあって最終砲以外はそこまで大した敵ではない。問題はその最終砲でマルチメンバー全員が死亡することも多々あることだけだ。


さっきの最終砲は凄まじい威力だったし、恐らく現実でも反動があるはず。本来なら敵同士の攻撃って当たらないはずなんだけど、雑魚敵はさっきの一発で全員消し飛んだし。


ユリクリウスがゲッカエンドの構えをして、突く。これをユリクリウスが5回繰り返したところで、メカビートルは赤い光になって消える。それと同時にレベルアップのファンファーレが脳内に鳴るけど、やっぱりレベル上限解放されてるなこれ。下手したらレベル上限ないかも。


そしてメカビートルの周囲にアイテムが散乱するので回収。何でゲームのようにアイテムが散乱するのかは謎だけど回収するべきものはさっさと回収する。うーん、経験値+100%はもう腐るほど持っているんだよなぁ。


武器のビートルソードもたぶん今までに1000本以上回収してるな。っと、アブダクション産だからか特殊能力にオールステアップⅤがついてる。まぁまぁの当たりだ。


「ドロップ品はゲームと変わらなさそうだな。

……どうした?」

「……なんかスロット1アイテムの二刀流って奴が出た」

「明らかに主人公属性のレアドロップしてて草」


シャドウのおかわりが来ないか警戒しながらドロップ品を確認していると、スロット1の特殊能力追加アイテムをユリクリウスが拾っていた。この手のアイテムは貴重で、時にはとんでもない価格で売れることがある。


自分の持つダメージ量を10%減らす特殊能力も、元々はスロット2アイテムの堅牢なる力というもので、1個は自分でドロップさせ、残りは1個10億ゴールドでかき集めた代物である。最終的に全鯖合計で300個ぐらいしかドロップしていない代物なのでかなり貴重。


……ユリクリウスの言った二刀流なんて特殊能力は聞いたことがないので、まあゲームが現実になった影響だと考えておこう。早速ユリクリウスが効果も見ずに使用して、現在の装備のスロット1を通常攻撃威力15%アップのものから二刀流に交換すると、武器装備スロットが1つ増えたと報告を受ける。どう見てもぶっ壊れスキルじゃねーか。本来1個しか装備出来ない武器を、スロット1つで2個に増やせるとか存在がバグってる。


これ、コイツが主人公で良いんじゃないかな?ということは自分は大いなる闇との戦いでサボれそうだし、ひたすら応援でもしておこうか。……いやでもそれ欲しかったなあ。自分がもう1個武器枠増えたら、更に耐久力が上がっていたのに。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る