第8話:ルサ

目を覚ますと、心配そうに見ている女性の顔があった。

見たことがない女性で、聞いた事がない言語で話しかけてきた。


「「アガレスさん気が付きましたか?」」


なぜか聞いた事がない言語のはずだが、その意味が理解できた。

装備しているゴーグルのおかげだろうか?


「「あなたは誰ですか?」」

「「よかった。気が付いたんですね。夫を読んできます。」」


彼女はそう言って部屋から足早に出て行った。


(結局、誰なんだ?それと・・・夫とか言ってたな。)


しばらく待つと、扉を開けて誰か入ってきた。

俺は体を起こして確認する。


「アガレス君、体調はどうですか?」

そこには見知った顔のエリゴールがいた。


「俺はどうなったんですか?」

「契約が終わった後倒れたんですよ。やはり魔力消費が思ったより多かったようですね。もし体に影響が大きいなら契約解除もやむなしかもしれません。」

「・・・休んだおかげか体調はいいですね。」

「確かにステータスのMPはほとんど減ってませんね。」


自分でもステータスを確認したが、MPは20程度しか減っていなかった。

脱力感もなく体を軽く動かしても異常は感じられない。


「大丈夫そうですね。それより先ほど知らない女性が様子を見に来てましたが、誰ですか?」


すると彼は、

「ああ、彼女はルサと言います。その・・・私の妻ですね。」

と少し照れながら言った。


(リア充かよ!)

俺は心の中で突っ込みながら、ある疑問が浮かんだ。


「ルサさんは聞いた事がない言語を話していましたが、どういう事ですか?」

「ああ、彼女は転生者ではないので、この世界の共通語を話していたんですよ。」

「この世界の共通語・・・その言葉を俺が理解できたのはなんでですかね?このゴーグルのおかげですか?」

「いや、違います。あなたが人形師になった時点で共通語もマスターしているのでゴーグルがなくても読み書きができますよ。」

「それは凄い!」


あまりにチート的な能力に俺は素直に感心した。


「転生者の存在は関係者以外知られていませんので、これからはこの世界の言葉で話すようにして下さい。妻は組織の人間で、知っていますから問題ありません。」

「わかりました。」

「では、妻にあなたの事を紹介します。こちらへ来てください。」


彼は俺の部屋を出て、前回地下へと続く扉と反対側の扉を開いて入るよう促した。

部屋に入ると今までより大きな部屋で、中央に大きな丸いテーブルがあり、テーブルに沿って4個の椅子が等間隔に置かれている。

そして、テーブル付近に立って待機していた女性が俺の姿を見て一礼した。


「アガレス君、彼女が先ほど紹介した私の妻のルサです。彼女にはすべての家事をお願いしています。」

「ルサさんよろしくお願いします。」

「アガレスさん、こちらこそよろしくお願いします。衣食住について、困ったことがあれば私に言ってください。」

「承知しました。」


ルサさんがこの世界の共通語で挨拶してきたので、それに合わせて共通語で返す。

挨拶しながら、彼女の姿を確認する。

身長は165cmぐらいで、茶髪で碧眼のにこやかな表情を崩さない女性。

肉付きがよく、むっちりしていてメイドのような服装をしており、包容力がありそうだ。


(そういえばステータス確認とかも出来るんだっけ。)

俺はさっそくゴーグルで確認してみる。


名前:ルサ  年齢:25  種族:魔人

レベル:0  職業:なし

HP:36 MP:87

力:12 知力:10 精神力:15 体力:12 素早さ:10 運命力:12


(魔人?それに職業なし?)

彼女の外見を見る限り、魔人という特殊な種族には見えない。

それに職業がないというのはどういう事なのだろうか。

俺はエリゴールの方をちらりと見た。

彼は視線を感じて理解したのか、小声で耳打ちしてきた。

「彼女のことで聞きたい事があるなら後でお願いします。」


彼は俺の疑問についてすでに理解しているようだ。


「二人でコソコソ何のお話ですか?」

彼女がニコニコしながら話しかけてきた。

魔人というのを知ると、崩さないにこやかな表情も怖く感じてくる。


「ああ、なんでもないよ。彼女の準備は出来たかい?」

「はい。連れてきますね。」

ルサさんは小走りで奥の扉に入っていった。


「彼女って誰の事ですか?他に女性がいるんですか?」

「ああ、会えばわかりますよ。それより今の間にあなたの疑問について答えておきます。」

























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