第4話:居場所
目が覚めると暗い部屋で寝ていた。
(俺は生きているのか?)
体は動くので、少なくとも五体満足ではあるようだ。
暗いが少しづつ目を慣らしていきながら周りを確認する。
部屋の広さはだいたい10m四方で俺の寝ていたベッド、机、椅子などが設置されており、全体的な雰囲気はゲームでよくある中世ファンタジー風なのがなんとなくわかった。
窓はないが、扉がありドアノブが付いているのこちらから開けられそうだ。
(しかし、うかつだったな。変な組織の人間を簡単に信じるなんて・・・。)
俺は自分の行動を恥じたが、してしまった事はしかたない。
ここから脱出するために、扉に静かに近づいて耳を当てて外の様子をうかがうが、何も聞こえない。
(外がどうなっているのか、わからないがここにいても事態は良くならないな。)
覚悟を決めて、ドアノブを静かに回し少しドアを開けて外の様子を確認する。
明るい光が差し込む。
そこは、今いる場所と同じような部屋だが、俺から見て左右の壁に扉があり、中央にある椅子には男が座って本を読んでいた。
(見張りか?本に夢中でまだこちらには気づいていない。)
見張りの男は、細見で小柄な男であまり強そうに見えない。
全体的に黒っぽいラフな服装で、武器は携帯していない。
ゴーグルのような物を付けているが、何の意味があるのだろうか?
(見張りにしては、あまり強そうには見えないな。武器も持っていないから奇襲したらなんとかなるか?)
まず自分の現状を確認する。
服装はTシャツ、トランクスの下着姿。
武器は持っていない。
部屋の中で武器になりそうな物もない。
とりあえずもう一度扉の隙間から見張りの動向を確認する。
見張りの男はまだ本を読んでいる。
「気が付いたならこっちへ来たらどうだい?」
「!」
突然の問いかけに何が起きているか理解出来なかった。
すると次は俺の方を見て話しかけてきた。
「大山君、早くこちらへ来て椅子に座りなさい。逃げ出そうなどと思わない方が良い。時間の無駄だ。」
(ばれてしまってはどうにもならない。それに下手に抵抗して逃げたとしても、行く当てもないし、そこまでして生きてもしかたないな。)
俺は観念して、扉のから出て行って彼と向かい合わせの椅子に座った。
「私の名前は「エリゴール」と言います。君の名前は大山君でしたね。」
「え・・ええ、俺の名前を知っているんですね。」
「君の事については前もって資料をもらっているから大抵の事は知っています。」
「そうですか・・・。それで俺に何をさせようというんですか?」
「そうですね・・・まずはこの世界での君の名前は「アガレス」なので、それを徹底してもらいます。」
「はあ・・・。」
「そして、これから君はここで私達と生活してもらいます。もちろん3食出るし、衣服もこちらから支給します。それ以外に必要なものがあれば出来る限りは配給しますので言って下さい。」
彼は新入社員への説明会のように、業務的に淡々と話してきた。
「それとこれを支給しておきます。」
そうやって渡されたのは、彼が付けている物と同じゴーグルのような物だった。
「これはなんですか?」
「ゴーグル型鑑定機具です。私のように付けてください。」
「鑑定器具?」
「これを付けると自分や相手のステータスや、武器や防具などの能力などを数値で可視化する事が出来ます。」
「そんな事が出来るなんてどんな構造なんですか?」
「今までの蓄積したデータを元に予想が表示されるだけですから、絶対的ではありません。とはいえかなり正確ですから、役に立ちます。」
「付けないといけませんか?」
「付けてください。そうしないと色々短縮出来ませんし、効率に支障が出ます。」
(断定されると拒否はできない。しかし付けた途端洗脳とかないよな・・・。どちらにせよ拒否権はないか。)
ただ、目を覆うゴーグル部分のみで、頭に付けるためのベルトがない。
とりあえず目の部分にあてがうと、吸い付くように顔に装備され、それ自体がなくなったように視界が開けた。
(これはどういう事だ。まるで何も付けていないかのような感覚だ。まさか消失した?)
目のあたりを触るとゴーグルの感触があり、消失していない事がわかった。
「違和感はないはずです。逆になさすぎて装備しているのかわからなくなるのが欠点ですね。自由に取り外しも出来ますよ。」
「たしかに出来ますね。しかし、外見がゴーグル付けた不審者姿になるんですか?ちょっとイメージ良くないですね・・・。」
「ああ、これは旧型なので透明化が出来ないんですよ。あなたの物は最新型ですから、外見はそのままです。私も最新型を装備すればいいのですが、弱視と理由を付けて外見をごまかしたので、ゴーグルがなくなると逆に怪しまれるから変更できないんですよ。」
「ああ、なるほど・・・しかし凄い技術ですね。」
「予定時間をオーバーしています。さっそくゴーグルの機能と使用方法についての説明に入ります。」
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