第3話:契約
「すみませんが、人形師について詳しく聞きたいのですが?」
「人形師?意外なものに興味があるんだね。」
「ああいや・・・他に比べて珍しいと思いまして。」
「ふむ、人形師というのはその名の通り人形を操る職業だね。」
「それはどんな人形ですか?」
「それは色々さ。小さいのから大きいのまで、男から女まで様々さ。」
「姿も自由にカスタマイズも可能ってことですか?」
「まあ・・・そうだね。」
「なるほど、どうするか・・・。」
俺は悩んでいるフリをしていたが、もう心は決まっていた。
なぜなら俺の唯一の趣味がフィギュア収集だからだ。
もちろん俺は人形ではなくアニメやゲームのフィギュアが好きな人間なので、もしカスタイマイズ出来なければ悩んでいただろう。
しかし、自分の好きなキャラにカスタマイズして連れて歩ける。
俺の心は決まっていた。
(だが、組織に入ると何をさせられるかわからない。その確認はしておかなければな。)
とりあえず他の職の詳細も一通り聞いたが、もう心が決まっている俺は上の空で、これからの事を確認するためのタイミングをはかっていた。
そして選ぶ前に形だけでも深く悩んでいると見せかけるために長考するポーズを見せた。
「随分と悩んでいるようだね。無理もない事だよ、ただ組織に入る事で絶対得をする。」
「指輪を選んだ時点で組織に入る事が決定するんですか?」
「そうだよ。指輪をはめると契約が成立する。」
「ちなみに組織に入った後、何をしなければいけないんですか?」
「ふむ・・・その答えによっては断るのかね?」
「いえ、死にたくはないので入りますよ。前もって聞いていた方が覚悟が決まると思いまして。」
すると彼は俺の目をまっすぐ見つめてきた。
「なんですか?」
「目を見たらその人間の気持ちや覚悟がわかるかもしれないと思ってね。」
「わかったんですか?」
「わからんね。よく、人の目を見たらわかる!とかほざく人間はいるがあれは嘘だな。ただ、何かやる気は出たようだね。」
「・・・。」
「そうだなあ、その職業とその人間の特色によって様々な仕事をしてもらう。もちろんその働きによっては給料も出すし、ホワイトな職場だよ。ただ、何もしないは許されない。」
「様々?たとえばどんな仕事ですか?」
「たとえば私の職業は召喚士だから、元の世界から同胞を召喚する事が仕事だな。もちろん、その後の説明や説得、手続きなどの事務手続きもその中に入っているな。それ以外は・・・召喚術を使用した研究もやっているね。」
「となると、もし戦士なら荒事とかになるんですか?」
「戦士を選ぶ人間ならそういう仕事を望むだろうからね。まあ、やってみて上手くいかなかったら別の仕事をしてもらうよ。」
「転職ということですか?」
「残念ながら、指輪の能力授与は一回のみだ。ただ、努力すれば他の職業でも頑張れるが・・・効率的ではないから組織としては嫌がるだろうな。」
「慎重に決めないと困るという事ですか?」
「そうだね。」
(俺は単純な事で人形師を選ぼうとしていたが、これは不味いのかもしれない。とはいえ戦う職業で戦争とかに駆り出されるよりはいい気がする。)
「では人形師だとどういう仕事になるんですか?」
「人形師は魔術師のゴーレム技術を追求した職業だから、基本的には魔術師みたいに術の研究か・・・過去の技術の発掘のために迷宮探索とかになるかなあ。」
「迷宮とかあるんですね?」
「悪魔は人類との戦いで倒されたけど、彼らが作った迷宮が残っている。悪魔が残した技術を発掘したいのだが、悪魔の下僕の魔物がいて探索しきれていないんだ。」
(ふむ、人形師って人形作って金儲けとかじゃないんだな。迷宮探索で魔物と戦うなんて危険すぎるからパスだが、研究とかなら何とかなるか?)
「わかりました。では人形師でお願いします。」
「素晴らしい。では指輪をはめてくれたまえ。どの指でもOKだよ。」
(指輪といったら左手の薬指かな?)
俺は適当な考えで指輪をはめてみる。
何か変わった様子はない。
「これで人形師になれたんでしょうか?」
「これからだよ。」
「これから?」
すると指輪を付けた指に痛みが走った。
何かに突き刺される痛みだ。
(なんだこれは?何か仕込まれていた?)
そう考えたのを最後に意識が途切れた。
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