第2話:質問
「さて、逃げようとしないのは組織に入ってくれるという事でいいのかな?」
俺は召喚された部屋の隣の部屋で机を挟んで向かい合って座っていた。
(下手に刺激をすると危険だな。ここは慎重かつ丁寧にいかないと。)
「組織に入らないと殺される・・・という事であってますか?」
「似たような事にはなるね。」
「・・・組織に入る前に色々質問していいですか?」
「もちろんだよ。」
「まず、なぜ『デモン』と言う名前なのですか?明らかに悪の組織のイメージにしか思えないのですが?」
「なんでだろうね・・・それは設立した人にしかわからないな。確かにイメージは良くないが、カッコいいとでも思ったんじゃない?」
「そんな適当な・・・。」
(大丈夫なのかこの組織・・・それとも本当の理由を隠しているのか?)
「わかりました・・・まず、この組織『デモン』の目的とはなんですか?」
「私達転生者がこの世界で生きていける為にサポートする事が目的だよ。」
「それが目的なら転生者を召喚で増やす必要はないのでは?」
「人手が足りないので、少しでも増やしたいのさ。この世界の人間には私達の事は理解できないだろうからね。」
「そうやって最終的にはこの世界を支配する事が目的なのでは?」
「支配かあ・・・組織もそんな誇大妄想を考えてはいないと思うけど、影響力を伸ばす努力はしているよ、少しでも立場を良くしたいからね。」
「立場を良くするために非道な事をしたりはしていないですよね?」
「非道か・・・君が一番気になる事はそこだね?」
「世の中綺麗ごとだけではないですが、さすがに人殺しなどの非道な事はしたくないですから。」
「なるほど、なるほど、たしかにそうだね。大丈夫、私はここに来て1年だがそんな仕事はした事がない、至って平和だよ。」
(消すとか言う人間が言っても信憑性がない。)
「そうですか・・・というか、まだ1年?」
「そうそう、だからそこまで詳しくないんだよね。でも元の世界に比べたら良い職場だよ。」
「しかし、悪に手を貸すのは・・・。」
「やめないか?そういう考え。悪や正義はコロコロ変わるし、曖昧なものだよ。それに私は元の世界でルールを守って頑張ってきたのに、そうじゃない人間に理不尽に捨てられ殺された。君も覚えがあるんじゃないか?」
「それは・・・たしかに・・・。」
「私はその事について恨んではいないよ。だって今幸せだから。君もこの世界でやりたい事をしても許されると思うよ。」
「・・・。」
俺は答えが出せずに黙っていた。
すると彼は懐から何個か指輪を出して机に並べた。
「指輪?」
「この指輪を付けるだけで強力な力を得られる。」
「指輪を付けるだけで?ビームでも出るとか?」
すると彼は立ち上がり、芝居がかった口ぶりで話し始めた。
「この世界では大昔に悪魔が存在し、人類の平和は脅かされていた!」
「関係ある話なんですか?」
「その脅威に対抗するために、英雄達が立ち上がった!あらゆる武器を操る戦士や、破壊の力を操る魔術師達だ!彼らは悪魔達を異界の彼方へと追いやり世界に平和が戻った!」
「・・・。」
「そして悪魔達が倒された後も、その英雄達の技術は受け継がれている!」
「・・・それで?」
すると彼は座り、途端に冷静な口調になった。
「つまりは、この指輪を付けるだけでその英雄達の力を得られる・・・そういう事さ。」
「随分と都合がいい・・・まるでゲームですね。」
「今時、鍛錬や勉強で力を得るなど非効率極まりない・・という事で組織が開発した特殊装備さ。他にもこの世界の言語や情報を知ることが出来たり、あらゆる事を数値で比較もしてくれる機能付き。」
「組織に入ればこの指輪が貰えるという事ですか?」
「そうだね。ただ、一つだけだよ。残念ながら何個もつけても効果が重複しないどころか悪影響があるからね。」
とりあえず10個ほど並べられた指輪を見てみると、どの指輪にも謎の文字が刻まれているが何を書いているか当然理解出来ない。
「すみませんが、選ぼうにもどんな力が得られるかまったくわかりません。」
「ごめん、ごめん。この世界の言語で書かれてるからわからないよね。じゃあ説明させてもらうよ。」
彼は端から順にどの指輪がどの力が得られるか教えてくれた。
戦士、盗賊、魔術師、治癒師、鑑定師、闘士、狩人、騎士、召喚士、人形師の10種類らしい。
どれもファンタジーゲームの職業として有名なものばかりで、何となく得られる能力が想像できた。
しかしその中で個人的に興味がある指輪があり、聞いてみることにした。
「すみませんが、人形師について詳しく聞きたいのですが?」
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