異世界召喚でフィギュア好きだったので人形師を選んだら無能職でした

国米

第1話:異世界召喚

「おい何やってんだ!」

「いや・・・こいつ俺達をつけてたからしかたねえだろ。」

「あ~あ、こりゃ死んだわ・・・。もう処理するしかねえな。」

「俺達素人じゃ足がついちまう。あそこに頼むか。」


数人が話している足元に倒れ込んでいる男がいた。

頭から血が流れていて動く事すら出来ない。


(俺・・・死ぬのかなあ・・・。)


男はぼんやりと会話を聞きながら意識が遠のいていくのを感じた・・・。


◇・◇・◇


「君、起きてくれないかな?成功したから意識はもうあると思うけど?」


俺はその声と共に意識を取り戻し、目を開けた。

そしてゆっくりと声の主の方に目を向ける。

そこには金髪碧眼の美青年がファンタジーゲームの魔導士のコスプレ姿で立っていた。


「おめでとう!君は異世界召喚された。これからは第二の人生が待っている。」

彼は拍手しながら微笑んだ。


「ああ、それはありがとう・・・。」

「自分の名前と年齢、素性など言えるかね?」

「俺の名前は大山人志(おおやまひとし)、40歳、無職だ。」

「なるほど、意識はしっかりしているようだね」


(なんか勢いで答えちゃったけど、無職はよけいだったな・・・。異世界召喚されたって・・・本当なのか?)


俺は確認するために、立って周りを見渡してみる。

まず自分が立っている場所には怪しげな魔方陣が描かれている。

10m四方の窓一つない部屋で、出入口は彼の後ろの扉しかないようだ。

照明器具もないのになぜか明るい、壁自体が発光しているのだろうか?


「驚いただろう?無理もない。しかし悲観する事はない。君は新たな体となり新たな人生を歩むことが出来る。」


(新たな体?)

自分の姿を確認してみると、今までのたるんだ体と違い若く均整のとれた体になっていることがわかった。

そして彼と同じように魔導士風のコスプレをしていた。


「俺は死んだのか?」

「悲しい事だかそうなる。死ななければこの世界に召喚できない。」


不思議とショックはなかった。

元の世界ではいい思い出が何もないからだ。


「まず私の名を名乗ろう。私の名前はマクガフという。」

「それはどうも。」

「今、君は右も左もわからない状態だろう。そこで提案なのだが、私の組織『デモン』に入ってもらいたい。」


(なんだ・・・異世界召喚と言ったら勇者扱いされると思ったら、逆に討伐される組織側に召喚されてしまったのか・・・これは断るべきだよな。)


「もちろん君に拒否権はないよ。断ったら消さなければいけなくなる。」


(これは詰んだ・・・。異世界召喚いきなりハードモード!)


「アットホームな組織だから大丈夫だよ。三食で住むところも完備。もちろんタダ。」


(あきらかに怪しい文句。それにタダより高いものはない!)


「わかったらついてきてもらえるかな?それと、私を殺して逃げようとするのはやめたほうがいい・・・こう見えて強いからね。」


(しかし異世界召喚転生者である俺には何かしらの強力な力が宿っていたりするかも・・・このまま連行されたらどうなるかわからない。一か八か賭けてみるか?)


「そうそう、君には特殊な力なんてないよ。私も異世界召喚転生者だったけど、何もできなかった。ケガするだけだよ・・・経験したから。」


(ソウデスヨネー、漫画やゲームように上手くいかないよな・・・。)


少し異世界に来て頭がボケていたようだ。

異世界と言っても元の世界と変わらない現実世界。

夢の世界ではない・・・第二の人生とはいえ不安しかない始まりであった。





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