第9話 それとこれとは


 醤油が宿にも回って来てるらしく大盛況である。まぁ、オカン…じゃなくて女将の料理はうまいからな。

 

 商業ギルドに行く。

 在庫はまだある様だからギルド長と世間話をしていると、家を持たないかと相談された。

「家?まだ早いかなぁと思うんだけど」

「いやぁ、私がここにいて欲しいから勧めているだけですよ」

「あはは、まだ旅に出ようとかは考えてないんだが」

「まぁ見るだけはただですから」

「じゃあ見るだけね」

「はい!」

 古臭い家だったら改築とかすれば…ってまだ買うとか決めてないっつーの!


「じゃあこれから、1LDKで平屋ですね」

「うーん、部屋数はあったほうがいいんじゃないか?」

「そうですか。まだ新しい方で綺麗なんですけどね」

「うーん。もし住むならだけどもうちょっと部屋数は欲しいかな?」

「らでは次が10LDKで大人数でも住めます」

「いや、大きすぎるだろ」

「今はもうないですがクランがそこを建てまして解散してしまったらしいんですよ」

「大が小かしかないのか?」

「あっ!でもここは」

「おっ5LDKで良い感じじゃん」

「ここでるんですよ!」

「なにが?」

「お化けが」

「あはは、アンデットだったらわかるけどお化けって!」

 この世界でお化けって言ったらアンデットになるんじゃないか?

「それが私も本当方思ってみに行ったら本当に出たんです」

「あれだろ?どうせ家鳴りとかそういうのだろ?」

 

「じゃ、じゃあ、見に行きます?本当に出るんですよ!」

「分かったって、じゃあ見に行こう!面白そうだし」

「分かりました!鍵とって来ますね」


 ちょっとした好奇心だった。


 俺たちは触れてはいけないものに触れてしまったようだ。


 そこは閑静な住宅街の一角、とても何かが起こるとは思えない。


 その家の前に来ると寒気がした。


 なぜだろう?かなり新そうな物件なんだが?


 あら?今二階に人影の様なものが見えた気がしたが?


「ここ誰か住んでるの?」


「いえ、誰も住んではいないはずです!私が鍵をもってますから!」


 じゃあなぜ、人がいる様な?


 まさか本当に幽霊?


「本当に幽霊?」

「だから言ってるじゃないですか!」

「でもさ、アンデットがいるんだよ?」

「アンデットは魔物じゃないですか?」

「いや一緒だろ?ゾンビとか」

「ま、まぁ、そうですけど」

「じゃあ、あれもそうなんじゃないか?」

「そ、それもそうですね?」

「魔物だったら退治すれば良いだろ?」

「そ、そそうですね」


 俺たちは鍵を開ける。


 “ギイィィィィ”


 いやいや、すごく外観は綺麗な物件だぞ?音は普通しないだろ?立て付けが悪いのか?

 クレ5-56の出番か?


 俺は潤滑スプレーをかけてドアの音を直す。


「よし!ギイィィィィなんて音はしなくなった!」

「これはやはり魔物の仕業?」

「いや、ただ単に錆びていただけだろう」

「え?」

「え?」

「今何か聞こえませんでした?」

「聞こえてませんが?」

「いや聞こえたでしょ」

「あーあー、私には何も聞こえてません」

「っざけんなよ」

「悪ふざけはよして下さい」

「んじゃ聞こえなかったってことでいいな!」

「はい」

「風の音が何かだろ」

「そうか、なら大丈夫ですね」

「よし、先に進もう」


 しかし中は相当汚れているな!

 これは拭き掃除が大変だぞ、いや?クリーンで綺麗にできるか!


「よし!クリーンを使うぞ!」

「え?クリーンですか?体を綺麗にする?」

「あぁ!全開すればこの家ごとできるだろう」


「では!クリーン全開!!」


“ピカアァァァァァァァァ”

『グギャアアァァァァァァァ』

「「ギャアァァァァァァァァァァ!!」」


 クリーンをかけた瞬間に白い顔のお化けが飛び出して俺たちの目の前で消えていった!!

 

「ふ、ふォォォォ」

「こ、腰が抜けた」

「な、な、なにが魔物だよ!あんなのいるなんて聞いてないぞ!」

「だからいったじゃないですか!」

 ふ、2人とも怖すぎて立ち上がれなくなっていた。


「あー怖かった」

「でしょ?」

「いやいや、怖さのレベルマックスだったからね?」

「いやぁ、あそこが売れる様になってよかった」

「俺のおかげだね」

「まあ、そうですね」

「これお金とってもいいよね」

「それとこれとは」

「あそこで祓ったんだから払え!」

「わかりましたよー」


「で買いませんか?」

「あそこ?」

「はい」

「どーせ売れなかったんだからくれよ」

「それとこれとは」

「いくら?」

「金貨1000枚」

「たかっ!高すぎるだろ!」

「そりゃ一等地でお化けなんか出ませんししかも綺麗になった」

「それ俺が全部やった!」

「それとこれとは」

「んじゃ、お祓い賃とハウスクリーニング代で金貨500枚ね」

「ええー!それは負けて下さいよ」

「それとこれとは」

「…」

「…」

「まぁ、まだ家は良いかな?」

「私もそろそろ仕事に戻らないと」

「あっ!お前はダメだよ!ちゃんと払うもん払えっての!」

「今いい感じで落ち着いたじゃないですか!」

「それとこれとは」

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