【第17回】ぽかぽか(テーマ:椅子)

「あ、おばあちゃんが好きなおまんじゅう、買ってくればよかった」

おばあちゃんが一人で住む家の手前まで来て思い出した。まあいいや、また次に来る時買ってこよう。次に来る日のことを考えながら、玄関の扉を開ける。

「おばあちゃん!来たよ〜」

いつもどおり、おばあちゃんが座る窓際のロッキングチェアがゆっくりと揺れている。

「おばあちゃん?」

返事がない。嫌な予感がする。

椅子の上で目を閉じるおばあちゃんは、本当に寝ているみたいだった。

猫のシロが、おばあちゃんの足元で遊んでいて、その拍子におばあちゃんもゆらゆらと揺れる。

「おまんじゅう、買ってくればよかった」

窓から差し込むあたたかい光が、おばあちゃんを包み込んでいる。


(了)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る