【第16回】将来の夢(テーマ:将来の夢)

今思えば、あれは授業参観ってやつだった。兄が小学校に上がって最初の行事。なぜだかは忘れてしまったけれど、僕も連れていってもらったのだ。その時の授業は、兄も含めて十人の児童が「将来の夢」をテーマに書いた作文を読み上げるというものだった。兄の将来の夢は医者だった。十人のうちの二人は「プロ野球選手」と言っていたが、あれはは本当だったのだろうか、と彼らより数倍の速さで老成している僕は思った。幼い頃に大病から救ってもらった医者に憧れている兄の方が、よっぽどかっこいいと思った。そんな僕は、物心ついた時から猫になることが夢だった。記憶の奥底の、産みの母親の声が頭に響く。

「いいかい、立派な番犬になるんだよ」


(了)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る